奇行、そして質問
「しばらくそれを着けさせてもらう」
「承知しました……」
二人を無視して今のドライアドの行動について考える。
俺が精霊王の詳細を尋ねたが、ドライアドの説明を理解出来なかった。
それに対して謝罪をしたかと思えば、急に自傷……いや、自害をし始めた。
「(……言動から考えれば説明が上手く行かなかったから? だとしてもそれで自害まで行くか普通?)」
ドライアドたちの精霊に対する狂気じみた忠誠心。そして神様やその気配がする俺にもそれなりに敬いの念を向けてくれている。
しかしそれだけの人間に失態を晒したからと死ぬ選択をするのは変だ。
これも『催眠』か『呪い』の影響だったりするのか?
「(……訊いた方が早いか。答えない、もしくは答えられない場合は能力による強制って考えた方がしっくりくる)」
諦めて結果を急くことにする。
ゲートと氷の枷があるから『催眠』の心配をしなくて良くなった。
棚からぼた餅の結果だけど、そのお陰で能力に対しての制限時間が消えた。が、なくなったのは能力による期限不明の制限時間のみ。
刑法官たちが拘束した時に言っていた今日中の制限時間。
あれが嘘であれ本当であれ囚人が居なくなり、首長やブライアンなどの上司たちが何も言わずの居なくなれば騒ぎになる。
ここに転移したのは事故の様な物だけど原因は俺であり、彼らが探し求めているキリサキということも判明した。
そんな状況なのだから騒ぎが起こる前に戻った方が賢明だろう。
「それでなんであんな真似をした?」
もし、あのあり得ない行動が自己判断による物だった場合は……どうしよ……
「あれは……私が出しゃ張り、不確定な内容によってキリサキ様の顔に泥を塗ってしまったため、だと思われます……」
「……いや、そこは別に気にしてなかったからこれからも深く考えないでくれ。分からないから訊いた訳だし」
「寛大なお言葉、痛み入ります」
「というか、そんなことでいちいち自害をしないでくれ。特に今は自分の──っと」
普通の理由だったと判明し、安心する。
そのせいか油断してドライアドの状態を言おうとしたが、寸前の所で踏み止まる。
そんな俺の様子に少しだけ不思議そうな表情を示したかと思えばすぐにそれを引っ込め、硬い表情へと戻す。
「(危ない危ない。うっかり口を滑らせる所だった……ん? いや、伝えた方が良いか?)」
チラッと首長たちの方を見る。何も言わずに俺らの方を見ている。
首長たちが能力の話を聞いた場合、ドライアドを危険視して対処する可能性がある。
「(さすがに討伐とまでは行かないだろうけど)」
『催眠』はともかく『呪い』の方をなんとか出来ていない今、このことを伝えるのはやや危険な気がする。




