回避、そして倒れる
「……」
ドライアドに通訳してもらった帰還の願いを聞いて、何かを考えているのか精霊王が黙ってしまった。
俺の方を向いているのか視線を感じる。
しかし精霊王の見た目は、人の形をした水に写った影だけ。そのためどこを見ているのかも分からない。
「ふーん……なら怪我を治してから海へ来て。遊んで上げるから」
「ああ、ありがとう」
しばらくして精霊王が諦めの言葉を放ち、戦闘の継続が避けれた。
そしてそれを言い終えると精霊王の影が水から消え、まるで吸い込まれるようにしてゲートを潜って海へと帰って行った。
「(それにしてもすんなり引いてくれたな。ありがたいけど、少しだけ肩透かしを喰らった気分だ)」
あまりにも素直過ぎる態度に引っかかりを覚えつつも胸を撫で下ろす。
「(駄々を捏ねられたり粘られたら面倒だったから助かったぁ……)」
障害が一つ消えて身体から力が抜ける。
「──おい、坊主?!」
「キリサキ様!!」
「っ?!」
そのせいで前に倒れそうになったが、地面にぶつかる寸前でドライアドが木の根を伸ばして支えてくれる。
そしてそれが到着したとほぼ同時にドライアドが俺の元まで移動した。
『天眼』では一瞬にして移動した、まさに転移の様だった。
ただ『魔眼』で見ることでおおよそ理解出来た。ドライアドがいた所から今居る所までの間に霧がある。
ということは、ドライアドが使った能力は転移ではなく、移動する能力だったらしい。
肉眼で見れば転移した様にしか見えない程の高速での移動。『魔眼』がなかったら分からないままだった。
「(てことはドームで囲ったのは大正解だったのか。ラッキー)」
支えてもらいながら選択の正解に喜ぶ。
問題があるとすればそれはまた身体に力が入らないことだろう。目も霞んでいるし、身体が重く気怠い。あと頭も痛い。
その辛さに引っ張られ、これと同じ経験を思い出す。
エルフの里で目を覚ました時と同じ──
「(多分魔力を使い過ぎたな)……」
ムキになって『水流操作』で主導権の争奪戦をしたのもあるが、その直前にドームを建てたのも効いているのだろう。
『ドレイン』で回復したい所だが、魔獣の侵入を封鎖してしまったため手頃なアテがない。
「ああ。ただ少しだけ魔力を使い過ぎた」
「なんや魔力切れか。脅かすなよ」
ドライアドに遅れて心配して駆け寄ってくれたブライアンと首長。彼らに理由をちゃんと説明する。
それを聞いて三者は安心した表情を浮かべる。
「あんなどデカい物を作ったら、当たり前だが魔力切れ起こすぞ」
「それも結構魔力持っていかれたけど、原因は精霊王のせいだ」
「……なあ、坊主。そのせいれいおう? ってのはなんなんだ? 精霊とは何か違うんか?」
「さあ? 精霊の王なんだろ。名前的に」
ブライアンの問いに上手く返答出来ずに終える。
だが、『魔眼』にそう表示されたからそう呼んでいるし、実際ドライアドも精霊王と呼んでいた。
あ、正確には“水の精霊王”か。
「キリサキ様。無礼を承知で申し上げますが、彼お方は皆様の考える王とは別のものでございます」
そんな俺たちの会話にドライアドが恐る恐る挙手をしながら否定する。




