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異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します  作者: りゅうや
第18章 堅牢署からの脱獄者
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応酬、そして声

 

 精霊王から奪った水を伸ばしてコランドたちの顔にまとわりつく水に繋げる。

 するとこっちの水が触れた瞬間に何かに引っ張られるような感覚が伝わってきた。


「(──水の操作の利きが悪くなったな)」


 主導権が再び奪われそうになっている? 今後のことも考えれば奪われるのも気になるが、今はそうなると面倒になる。

 気持ちに栓をして一気に魔力を流し、喰おうとしてきた水から主導権を奪い取る。

 そうして彼らの顔の水を吸い寄せ、一つの水球として俺の元に戻す。


『……』


 その様子を終始黙って見ていた水の精霊王。それが徐に右手で水球を指差す。

 すると水球から再び何かに引っ張られる感覚に襲われる。それもさっきよりも断然強い力で。


「(ほぼノーモーションで奪おうとするなよっ!)」


 上位互換の能力に対して苛立ちを覚えつつ、主導権を完全に奪われる前に大量の魔力を流して抵抗する。


「っ!!」

『……』


 互いに主導権を得ようと能力の綱引きが繰り返される。

 たった二秒にも満たない時間で普段の七十九倍の魔力を消費させられた。

 これ以上やり合っても得がない。ヤケになったのは反省しつつ切り上げようとした時だった。

 不意に主導権がこっちの物に戻る。

 急に手を放されたことに困惑している俺に向けて水の精霊王が再び声を発する。


「良いね。(わっぱ)の割にはよく耐えたよ」


 先ほどの声と違い凛とした感じが消え、ただの少年の嬉しそうな声音になる。

 しかし落ち着いた雰囲気からどこか大人びているようにも感じる。

 そんな精霊王の、急にしゃべり出した謎の存在に警戒心を剥き出しで訝しんでいる首長たち。

 これが本来なら普通の反応なのだろう。だろうけど……


「(偉そうだなぁ……)」


 そんなソレの態度が少し微笑ましく感じる。

 見た目や声は子供なのに名前は水の精霊“王”だ。名に恥じないように大人ぶっているように見えて可愛らしい。

 しかし行動は増長した王の暴虐。独裁者向きの行動だった。そこだけは注意すべきだろう。


『──お、恐れながら水の精霊王様。は……発言をよろしい、でしょう、か……』

「何」

『ありがとうございます! その、殿下が使用されておりますの、は……その……四百年以上前に使用されていた言語、でして。で、です、ので……その少年には伝わらないのではないかと、存じます……』


 土下座したまま精霊王に進言するドライアドは、その声も身体も強く震わせている。

 ただ、そんなドライアドの声が凛として聞こえた。


「(伝わってるなんて言えないな。これは)」


 精霊王の言葉は能力によって理解出来ている。

 だからそんな状態でも奮ってくれたドライアドの進言に申し訳なさを抱く。

 さすがにここまでしてくれたドライアドの善意には甘えておいた方が良い。


「(分からないフリをしておくか)」


 とりあえず不思議そうな表情を浮かべておけばドライアドの言い分も通るだろう。



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