地震、そして襲来者
しかし氷が地面を進行するに連れて小さいが地面が揺れ始めてしまう。
「ん?! まさか地揺れっ?!」
その変化にいち早く気がついたコランドが驚愕の表情で地面を見下ろした。
そして彼に連動するように刑法官たちも騒ぎ始める。
対して首長はその場で身を低くして事態の収束を窺っている。
「(震度三か四くらいだけど……あー、地震が頻発しない国の人だとこれくらいでも騒ぐってテレビで言ってたな)」
それに今居るのは森の中。ドームがあるので新たな魔獣は来ないけど、本来なら魔獣が暴れ出したり倒木が起こったりしないとも限らない。
「(魔獣に加えて、空に氷のドーム。それに地震が起こればなおのこと不安にもなるか。申し訳ないことをした)」
反省をしつつも、しかし氷の進行は止めない。
一、二分程で地面内も氷で封鎖が完了する。全体像は不恰好になってしまったが、どうせ地面の中を見られることもないので気にしないでおこう。
「(念のために自分用の水も用意しておくか)」
天井から浴槽一杯分の海水を俺の周りに下ろす。
その異様な水の動きに、地震が止んで安堵と不安の表情を浮かべていた大人たちの目が釘づけになる。
「……キリサキ。それは、なんだ……?」
首長がその水の塊を指差しながら尋ねてくる。
そんな彼女の表情が引きつっているのが気がかりだ。
「転移の魔道具で海から持ってきた海水。それと同じなのが上にある氷だ」
「…………言いたいことは色々あるが、それより先に答えろ。その影はなんだ?」
彼女の言っていることが分からない。
とりあえず皆の視線の、首長が指差す先を確認する。そこには人の形を模した澄み切った青色のナニカが海水の中であぐらをかいている。
咄嗟に『魔眼』へ魔力を流す。
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水の精霊王(魔)
Lv.???
特殊:水の支配者
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ソレから表示された内容に困惑する。
「(は……? 水の、精霊王? というかいつから海水の中に居た? 言われるまで気づけなかったぞ。しかもなんだよこのレベル表記は……)」
状況を処理し切れていない中、ソレは動く。
『……頭が高いね』
少年の様な、しかし凛とした大人の声質が鳴ったかと思えば、突如視界が揺らぎ、息が苦しくなる。
『天眼』によってそれがどこから共なく現れた水が顔にまとわりついているからだと分かった。
しかもそれは俺だけではなく、首長たち含めた大人全員。
しかしドライアドだけは攻撃を受けていない。ドライアドはソレ、水の精霊王が声を発した瞬間に土下座したから避けられたのか?
「(とりあえずこの水を退けないとっ……!!)」
『水流操作』を使って水に触れる。
そして顔から水を退けようとするが、何故か水は動かない。
「(なんでっ?!)」
慌てて『水流操作』に流す魔力の量を一気に増やす。
すると魔力が何かに吸われる様な、弾かれている様な感覚から、いつもの力が広がって行く感覚。
火照った身体で冷たい容器を触った時の熱が吸われ、ジンワリと伝わって行く様な感覚が起こる。
その感覚の後に水を『水流操作』で操れた。




