対処、そして思案
「(──なんて能力かけてんだよっ!!)」
それをギリギリで堪え、肉眼でドライアドを見る。
見た目は怪我を負っていること以外普通の状態で、呪いや催眠がかかっている風には見えない。
見えないだけかもしれないが、それが魔道具による物だったら少しだけ対処が楽だったのに。
「(嘆いていても何も始まらないっ。とりあえず今はコカトリスを止めないと!)」
思考を打開に切り替えて、今の状況下で使える手立てを考える。
「──……っ、ブライアン! 俺の声でコカトリスが北西から向かって来てる! 数は一! 対処、可能なら討伐をお願いしたい!」
「は……? なんや急に」
「経緯は後で話す!」
「……分かった。終わったら必ず全部言うてもらうからな」
「ああ。約束する」
ブライアンは深く詮索せずに了承してくれた。そしてコカトリスが向かって来る方角へと駆ける。
「待て、アッ……ブライアン!」
そんな彼を止めようと首長が声を上げるが、その声が完全に届く前にブライアンは森の中へと消えて行った。
止めることが出来なかった首長は、小さく溜め息を吐いてこちらを見る。
「……状況を説明しろ」
「魔獣の群れが集まって来てる。残りは俺が対処するから指輪を返してくれっ」
「指輪が必要な理由は?」
「俺が満足に動けないから」
「……」
無理を押し通すために嘘を吐く。
睨むような怪訝の目を向けている彼女の返答を待っている間に『天眼』の高さを上げる。
「(今の明確な位置を知りたい。その後は何度か見かけている大き目の湖にゲートを使えれば、それが恐らく最適解!)」
それとこの案がダメな場合の保険として、近場の最低でも川。可能なら湖を見つけたい。
大量の水を使えれば動けない状態でも少なからず戦える、と思う……
「(問題はドライアドが使ってたあの能力)」
ユキナたちと来た時に会ったドライアドが使っていた森内を移動する能力。
あれを目の前のドライアドも使えるとしたら、呪いの範囲は森中と言っても過言じゃなくなる!
「(あの時能力について訊いておくべ……いや、教えてくれるか?)」
悩んでいても始まらないと分かっていても悔やんでしまう。
『天眼』の一部でブライアンがコカトリスと接敵したのが確認出来た。
これで数分の猶予が生まれただろうけど、解決には向かっていない。
「(思い出せっ……ドライアドは何を言ってたかを……!)」
ドライアドたちの能力を想定するために必死に記憶を遡る。
初めて能力を使われた時。ドライアドと会った時。話した内容などを一つでも多くの情報を掘り出すために。




