判断、そして手助け
首長たちの言う指定外外部。緊急時の、そして特例措置を実施している最中に他へ連絡する魔道具。
初めはゲートと同じで、物質の転移が出来る魔道具だと考えていたが、どうやらイメージとしては電話か手紙を送れる様な魔道具らしい。
それで外部と連絡していたのだとしたら以前の報告書の説明もつく。
「(ただ、首長の言うようにそんな連絡の出来る魔道具で、なんで連絡を外部にしたのかは気になる)」
彼らの話しに耳を傾けながらドライアドに視線を送る。
気がついてもらえれば良いが……
「それは我々も凖・逮捕権を有しているからだろう。間違った判断ではない」
「わざわざ指定外外部にする必要はない」
「それもお前の所の署員の判断だ。署内にある外部連絡用の魔道具の履歴でも調べればすぐ判ることだ」
彼女の問いに対して依然彼は強気で言い返す。
表情も平然としているせいで虚勢を張っているのかを見極めるのが難しい。
「その必要はない」
しかし首長もまた、悠然とした態度で続ける。
「既に記録は確認してある」
「「…………は?」」
彼女の言葉によって平然としていた刑法官の表情がようやく崩れた。
それは俺を押さえつけている方の刑法官も同様であり、僅かに力に緩みが入る。
「──キリサキ様っ!」
そしてそれと同時にドライアドが葉っぱと土などを何層にも重ねて出来た大きな桶を木の根で持ち上げていた。
その中には大量の水が入っており、それが俺に向けて傾けられる。
「な、なんだ……っ?!」
突然押し寄せた大量の水に戸惑いを見せる刑法官。
その隙に水に触れ、『水流操作』と『ウォーミル』を使用する。
水を二つの手の形に変形させ、凍らせる。そうして上に乗っていた刑法官を氷の手で挟んで押さえつける。
「ぬあ?! は、離せっ!!」
流れてきた水が自分を拘束するとは考えていなかったらしく、あっさり捕らえることが出来た。
「(というかドライアドの動きにも対応出来ていなかった)」
彼女と対峙した時も動けてはいたけれど、動きが基礎的な部分に力任せが入っている。
それは俺が剣を握り始めてからしばらくの間同じだったのでほぼ間違いないと思う。
ただ、実戦慣れをしている感じがない。
それは門番をしていた刑法官にも言えるのだが、彼は上に乗っていた刑法官よりは動きがしっかりしているし、ドライアドの動きにもそれなりに反応していた。
二人の実力は、少し甘めに見積もってギルドランクの黄色くらいか。
それも魔獣相手なら茶色に落ちるだろうけど。
「(魔獣よりも対人慣れしている動きだったし、刑法官はそういう訓練を受けているって所かな)」
氷の手から抜け出そうと藻掻いている彼と、俺という人質がいなくなったことでドライアドが自由になった。
そんな彼女が蔓や木の根、効能を持つ花を咲かせるなど多彩な手を用いて、もう一人の刑法官も捕らえられる。
※備考
ギルドランク
黒色、茶色、黄色、緑色、青色、赤色、銀色、金色、ゴールド




