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異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します  作者: りゅうや
第11章 迷惑な王国騎士
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報告、そして久々

 

 料理対決を終えたがテリオスの一件で会場はグチャグチャになってしまった。怪我人が出なかったのが幸いと言ったところだろう。

 リリーも気絶させられただけだったし。

 とは言え、心配だったのでミルフィーさんに適当な挨拶をしてから帰ることにした。


「すぐに迎えを寄越す」


 と言われたが俺が呼んだのが既に来ていると言って断った。

 無論嘘だ。ミルフィーさんには悪いが馬車で何日もかけていられないのだ。

 家に着いてから医者のところへ行こうとポールさんに訊いたが王都に医者はいるにはいるがそれほど腕が立つわけではないそうだ。


「私が診ましょうか?」


 と言われたので診てもらうことにした。


「脈拍や身体に目立った傷なども無いようです。旦那様の話し通り気絶しているようです」

「よかった」

「ですが私に分かるのはここまでですので、もし翌日になっても目が覚めないようでしたら医師に診せて下さい。至らなくて申し訳ございません」

「いやいや、助かった。ありがとな」

「勿体ない御言葉です。有難うございます」


 そう言ってポールさんは仕事に戻ると出て行った。俺にもこれ以上は何も出来ないのでキリたちに事情を話して後を託した。

 翌日、リリーは無事目覚めたとニーナから聞き、急いで部屋へ行った。

 部屋に入るとリリーはベッドの上で上半身だけ起こしていた。


「俺が代役なんて頼んだばっかりに、悪かった。ごめん」


 部屋に入って第一声で頭を下げて謝った。


「そんな、ボクが油断してただけだよ。だからアズマは悪くないんだから頭を上げてくれ」

「でも俺のせいで...本当にごめんな」

「もういいよ。それにボクの意図を汲み取ってくれてありがと」

「ああ、おかげで何とかなった。ありがとな」

「どういたしまして」


 そう言ってにっと笑ってくれた。俺はそれを見て優しいリリーに感謝と申し訳なさが思えたがつられて俺も笑うことにした。


 ______________


 数日後、神様から先日のことで話があると呼ばれたのでゲートを開いて王宮へ向かった。


「今回呼んだのは先日の料理対決での事でね、テリオス子爵は前回言った通り爵位の剥奪。その後彼の家から出て来た犯罪などを考慮して財産没収と家族諸共永久国外追放の刑になったよ」


 そう笑顔で言う神様。


「そこまでするか?」

「前にも言ったけどどの国も奴隷を所有するのは固く禁止されている。例外の国はあるけど、基本は重い罪の一つだね。それに彼の場合量が量だったからね」

「結局何人だったんだ?」

「一七人」

「結構多いな」

「しかも殆どがミルフィー婦人が雇った料理人だったよ」

「そうか....シルスさんはあの後どうなった?」

「ちゃんと返したよ、テリオス元子爵から没収した資金から慰謝料などを含めてね」

「ならよかった」


 シルスさんとは今回のテリオスの奴隷所持を証言してくれたミルフィーさんに雇われた料理人でテリオスに奴隷にさせられていた人だ。

 奴隷にするのに必要なのが、所有者、奴隷になる人、そして隷印だそうだ。

 隷印とは対象を奴隷にさせる焼印型の魔道具だそうだ。それを焼印と同じように身体に押し当て跡を付ける、これで隷印された対象は所有者の奴隷となるそうだ。

 しかしこの魔道具はこの国には輸入品として輸入していないので、他国から奴隷を買うか、裏で隷印を買うしか方法はない。所持しているだけでも罪になるそうだ。

 その刻印は刻印の所有者の魔力を使い奴隷の所有者の命令を強制的に聞かせる。魔力は脳にも通っているため逆らうことすら出来ないそうだ。

 そんな刻印をされていてもシルスさんは俺に協力してくれた。まあ神様から聞いたやり方を実行して成功したので協力出来たのだが。

 隷印は刻印の所有者の魔力を使って命令を聞かせているのならその魔力の流れを変えてしまえばいい。そうすれば刻印の所有者は命令を聞かなくていいのだから。

 つまり俺がドレインで隷印に魔力を送るということだ。ただこれでは刻印の所有者(以後被害者と記載)の魔力が一方的に増えるだけなのでドレインを行なっていない方の手でドレインを行い魔力を吸う。これで隷印の効果は被害者には及ばない。

 隷印は効果がなければ火傷と同じなので被害者に治癒核を渡して火傷を消してもらえば晴れて奴隷から解放されるというのが神様が出したアイデアだ。

 だが言うのは簡単だが実行は難しい。魔力を吸う量を失敗すれば被害者が倒れる。しかし少ないと俺の魔力が体内に流れて結果は変わらない。

 かなり時間はかかったが何とか成功させることが出来た。

 それで協力してもらえたのだ。


「でも、結局神様に助けてもらったな」

「ふふふっ、まあ神だからね」

「釈然としない気分だ」

「酷いなぁー、まあ楽しかったからそれでも良いかな」

「人が苦しんでるのがか?」

「いや、アズマくんが頑張っていたところや魔力調整で四苦八苦しているところとかを観ているのがだよ」

「変態か!」

「冗談だよ、半分くらいわね」


 つまり半分は本気ってことだったんだろうけど突っ込むとまた調子乗りそうだからやめておくことにした。

 あれ?そう言えば...


「なあ、あの作戦って何で成功したんだ?」

「どういう事?」


 ニヤケながら訊いて来る神様。多分質問内容を把握しているのだろう。


「だってあの作戦だと、俺が隷印の効果を受けるんじゃないのか?」


 神様はその質問を待っていましたと言わんばかりに顔がニヤケた。

 神様が手招きをするので近寄る。


「今からアズマくんの固有能力の『麻痺』を私が使っえば分かると思うよ」

「は?」


 神様の言ったかと思えば既に神様は俺に触れていた。

 しかし身体に異常はない。普通に身体は動く。


「分かったかい?」

「いや...分かったと聞かれても、身体は普通に動くし...失敗したのか?」

「グラ様...」

「あはは、まあだろうね」


 紅茶を持って来てくれた後神様の近くにいたトールさんが呆れた感じで神様の名を呼んだ。


「私から説明した方が良さそうですね」


 トールさんが呆れた顔のままそう言った。

 確かにこのまま神様が続けているといつものように俺で遊ぶかもしれないから、今はトールさんに任せた方がいいだろうと思う。

 神様は笑顔のままなので別に構わないのだろうし。


「では、アズマさんの疑問ですがそれは神の、グラ様の加護をアズマさんが受けているからです」

「.....はい?」

「グラ様は貴方がこの世界に転生なさる際に『神の加護』を与えました。その加護により貴方には状態異常無効(・・・・・・)が備わりました」

「....待って、今頭の中を整理するから」


 トールさんの説明に困惑し始めたので待ったをかける。

 えっと俺にはこの世界に来てから状態異常が無効になるようになっていた。つまり神様のおかげで俺は隷印の効果を受けなかった...と。

 それなら理解は出来ている。問題なのはそこではなく前だ。

 俺はリリーの固有能力でバフを付与されている。あれも言ってみれば状態異常だ。

 しかしそれが神様の加護で無効化されていたのならエルダースノウマンや黒装束の時はなぜ上手く行った?もしかしてバフは状態異常から除外されるのか?


「いいえ、彼女の固有能力も『神の加護』により無効化されていました」


 考えている途中でトールさんが俺の疑問に答えてくれた。

 つまりどちらの時もバフの効果を受けていなかったのに成功したと。そんなことあり得るのか?


「アズマさんがそれを可能にさせたのです。人間問わず生物は思い込みなどで功を成す事はざらにありますので」

「そんなことで⁉︎」

「そんな事でです」


 トールさんは淡々と答える。

 つまり俺はリリーの固有能力で力や速さが上がったと思い込んで行動したっと...


「もっと早く教えてくれよ!仲間危険にさらすとこだったじゃねえか!」

「ごめん、ごめん。私も言おうとは思っていたんだけどね。ついね」


 この神様(ひと)の場合信用が出来ない。多分ワザと言わなかったのだろう。楽しむために。


「ちなみに『神の加護』はアズマくんだけに与えている訳じゃないからね」

「つまり他にも転生者がいるってことか?」

「いや、この世界にいる転生者はアズマくんだけだよ」

「じゃあ一体誰に与えてんだ?」

「全生命体かな」

「はい?」


 思わず変な声が出てしまった。


「どういう...」

「アズマくんが居た世界にも居たでしょ?歌や踊り、スポーツが上手い人、勉強や恋愛、出世が上手く行ったりする人など。それら全ては何らかの『神の加護』を受けて生きているんだよ」

「え⁉︎」


 驚いて思わず声が出た。


「動物や虫、草木までも全てに『神の加護』が与えられる」

「神は八百万居るけど気紛れで一つに大量の加護を与える事もあるよ」

「つまり完璧人間のことか?」

「そう」


 完璧人間。つまり容姿端麗、スポーツ万能、成績優秀な人のこと。


「アズマくんが転生する時に私が気を利かせて(・・・・・・)『神の加護』を与えたんだよ?」

「ああ、そりゃどうも」

「冷たいなぁー」


 当然だ。その加護が邪魔であの時リリーを助けられなかったらと思うとこういう態度にもなる。

 まあ力不足だった俺が一番悪いから、そこまで冷たくする気はない。それに考えてみればかなりありがたい加護なのだから感謝している。

 だが、言葉にはしない。したら調子乗りそうだからである。

 その後は適当な話しをしてゲートで家へと帰った。

 神様からテリオス元子爵の処分報告を受けてから数日後、俺たちは久々?にギルドへ来ていた。

 今回は全員暇だったので全員参加である。

 早速クエストを受けようと思ったがリリーはギルドに登録をしていなかったので先にそっちを済ませに行った。

 分からないことはないとは思うけど一応ニーナにも追ててもらうことになった。


「へへへ、兄ちゃん可愛い子達と一緒にいるじゃねえか」

「ちょっと俺らにも貸してくれよ」


 そして毎度のことながら変なのに絡まれる。

 今回はゴツい体格のスキンヘッドと金髪、いや黄色に近いモヒカン。

 この展開は結構あったのでだいたい慣れたのだが、最近なぜかギルドや街中で周りの人たちがニヤニヤしながらこっちを観ている気がする。


「おい、訊いてんのか?怖くなって動けなくなっちゃったのかな?はっはっはっ!」

「くくくく」


 毎度のことなので呆れている俺がビビって動けなくなったと勘違いしているようで大笑いする二人。

 周りも二人の笑いに釣られるようにそこらかしこから笑い声が漏れている。

 ちょっとー、背後の婚約者さんたちー。攻撃しようしてるでしょ。やめなさーい。みんなシャレにならない強さなんだから....


「はあー....おっさんたちの相手してる暇ないからとっとと帰れ。そしたらこっちも手は出さないから」


 半ば背後で構えている人たちを止める言い方でその場を脱しようとする。


「ああ!んだとこの餓鬼!」

「こっちが優しくしてれば図に乗りやがって!お前終わったからな?泣いて謝っても許さねえからな!」


 が、世間はそんなに甘くなかった。

 言い方が悪かったのは自負しているが、今モヒカンが言ったようにこちらが優しくしても図に乗られてしまうので仕方なくだったのだが....


「分かった分かった。じゃあ他の人に迷惑かからない場所で」

「んな事知るか!死ねぇっ!」


 そうダガーを抜いて斬りかかって来るスキンヘッド。それを刃が当たらないギリギリで避ける。

 次にモヒカンもカトラスで追い討ちをかけて来たがこれもギリギリで避ける。

 遅い。

 それからは二人の連続攻撃をただただ避けるだけとなった。フェイントもなければ何かしらの技を使うわけでもない。

 素人の俺が一丁前にそんなことを言うのも可笑しいのは分かっているが、それだけ彼らの攻撃が単純なのだ。


「はあ、はあ、はあ....何で一撃も当たらねえんだ...はあ、はあ...」

「化け物か、こいつ....はあ、はあ、はあ....」


 失礼な!人間だわ!


「疲れたんだろ?ならとっとと...」

「うるせえ!その減らず口を叩き斬ってやる!」

「それにだ!逃げてばかりでは俺らボアアガロンを倒せると思うなよ!」


 息を切らしながらそう叫ぶスキンヘッドとモヒカン。

 ボアアガロン?どこかで聞いたような、いないような.....忘れた。


「はあ...じゃあしばらく動くな」

「ぎっ⁉︎」

「うあっん⁉︎」


 トンっと二人の肩に手を置くと短い悲鳴をあげてその場に崩れ落ちた。モヒカンから変な声が聞こえた気がしたが気のせいだろう。


「「「「「「しゃあぁぁぁぁぁっ!!」」」」」」


 スキンヘッドとモヒカンが倒れたとほぼ同時にさっきまでこちらを観て笑っていた人たちが立ち上がって喜びの声を上げた。


「ざまあみろ、ボアアガロンの奴ら。こっちにはあの小僧がいるんだ!」

「いつもスカッとさせてくれるけど今回のは相手が相手だけあってさらにスカッとする!」

「酒が進むぅ!」


 などと叫んでいる。

 状況がいまいち把握出来ないので近くで酒を飲んでいるおっさんに話を訊いた。

 俺が倒したこの男たちはボアアガロンという集団の一味らしい。そのボアアガロンは前にも暴れていたけどどこかの子どもがそいつらを倒したそうだ。

 それから数ヶ月は大人しかったのだが、次第にまたやりたい放題暴れ出したそうだ。

 んで、その一味のやつらがギルドに来て冒険者から金を巻き上げて帰ろうとしたところで俺たちが来たとのこと。

 ここで毎回絡んできた人を返り討ちにしていたため俺のことを知っていた人たちはニヤついたりしていたそうだ。


「終わったよぉ」

「怪我とかしてないですか?」

「ああ、何ともないよ」


 リリーとニーナが戻って来た。


「さ、気を取直してクエスト行くか」

「はい」

「ええ」

「ん」

「ええ」

「うん」


 クエストを受けに受け付けへ行く。


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