罪人キリサキ、そして増える
「だぁから待てって! 坊主は……キリサキ、なんやな……? 本当に」
「ああ」
俺の返答にブライアンは少しばかり黙ったかと思えば、大きく溜め息を吐く。
その顔はスッキリとはしていないが、かと言って完全に納得していないという顔でもない。むしろ困っている様にも見える。
「(それにしても首長に続きブライアンも、か……)」
信じないと判断して言わないでいたのに、ドライアドが認めた途端に全員が認知した。
「(先日会ったばかりでドライアドについて全く知らないが、魔眼に表示されたということはそういうことなんだろうな)」
彼女たちについては後々調べるとして、今は別の方に思考を切り替える。
半信半疑のブライアンはともかくとして、全員が俺を「罪人キリサキ」と認識しただろう。
当初は首長かブライアン、もしくはその両名と協力関係になってから明かすつもりだった。まあ、恐らく信じないとは思うけど……
そのステップがだいぶ早まったが、今はこれを活かすしかない。
「あんたらが家宅捜査に来た前日に、誰かの固有能力か魔道具で子供にされた」
「ブライアン。そんな能力者、または魔道具の存在は?」
「……思い至りません」
事実口上だったのに、言い訳と捉えられたのか信じてもらえていない様子。
「他者からの干渉であろうがなんであろうが、キサマがキリサキであるなら話は簡単! 極刑だ!」
「そういうことだ。これ以上罪人を庇うならドライアドだろうと連行する」
刑法官たちが敵意を増して告げてくる。
「その罪って言うのは脱獄の幇助なんだろ?」
「そうだ! それと移送時の襲撃容疑、脱獄と医官への暴行、並びに殺人! これだけ罪を犯したキサマは言い逃れ出来ない罪人だ!!」
「はあぁっ?! 憶えはあるけど襲撃も殺人も、というかほぼ全部俺じゃない!!」
「黙れ! 言い逃れ出来んと言っただろっ!」
勝手な物言いに抗議を叫ぶも、押さえつける腕の力を強め、首に当てている剣をさらにグッと押しつけてくる。
背中を強く押されたせいで息と共に少しだけ声が漏れ出る。
「(弁明の前にこの体勢をどうにかしないと……無理矢理にでも黙らせようとしてきそうだ)」
怪我のせいで力負けが起こっているし、水も先程のゲートリングを奪取しようとした時に使い果たした。
一応コランドが手にしていた氷球はあるけれど、いくら能力を使おうとしても反応を示さない。
ゲートが使用出来たことと今使えないことから魔力と能力が残量していたのは間違いない。
そしてそのどちらかがもう失くなっている。
恐らく魔力の方だと思うけど……
「──何故、脱獄や医官の件を知っている」
脱出方法を考えていると、首長が溢す。




