苛立ち、そして認知
「信仰……?」
「おいっ!!」
そんな奇怪な言葉に困惑していると、横から刑法官が大声を出し、こちらに向かって来る。
その険しい表情から明らかに怒っているのが窺える。
「お前ら、今なんと言った?」
「……合掌と信仰がエルフの里への入りか──」
刑法官は、初めて会った時同様の鼻につく物言いで聞いてきた。
それの意図は分からないが素直に答えてみれば、話しの途中で平手が飛んでくる。
それを避けようと身を後ろへ引こうとした所で、それより先に地面から木の根が飛び出して彼のその手を絡め止めた。
「キリサキ様に何をなさるおつもりですか?」
「お前こそなんのつもりだ? ドライアド風情が国の規則に逆らおうとするな」
「人の法を私たちに強いるのが規則に反しているかと」
互いに睨み合いながら主張を述べる。
そんな一触即発な雰囲気の二人。彼らの会話の内容を上手く処理出来ていないため、助けを求めるのも含めてブライアンの方を向く。
そんな俺の視線からか状況からか察してくれたブライアンと首長が止めに入ってくれる。
「待て待て! 坊主が困っとる」
「庶民上がりが私に触れるな!!」
刑法官がこれ以上手を出さないようにブライアンが制してくれたが、それが不快だったらしく今度はブライアンに噛みつく。
それに眉根を寄せたのは首長の方だった。
「……ドライアド殿。この子供がアズマ・キリサキというのは本当でしょうか?」
しかし彼に何を言うでもなく、表情を切り替えてドライアドの方を向く。
「はい。私も先程ご教示いただいた身ですが、この方はキリサキ様で間違いございません」
そう彼女が首肯する。
それとほぼ同時にもう一人の刑法官が動いた。
首長の部屋を探していた彼の殺気にドライアドが再び反応し妨害しようとするが、その木の根による攻撃を剣で切り払う。
突撃して来る彼を迎え討とうしたが、身体が言うこと効かない。
「(こんな時に──)」
痛みだけなら辛うじて耐えれていたが、身体自体が限界を迎えたらしく動こうにも力が入らない。
結果、左腕を無理矢理背中に回され、足払いと共に地に伏せさせられ、剣の刃を俺の首に当ててくる。
しかし地面に押しつけられる前に木の葉が集まってクッションが作られた。
それでも腕や背中に乗る重さなどによって激痛が押し寄せてくる。
「動くな、しゃべるな腐れ犯罪者」
酷いあだ名と共に言動を規制するよう命令される。
「(怪我をしている相手に容赦がない)」
身体からミシミシと骨の悲鳴が聞こえてきそうな程の力で押さえつけられている。
「手を離しなさいっ!! 不敬です!!」
「森の番人とまで呼ばれるドライアドがこの様か……」
「こんな罪人を庇い立てるとは、キサマも捕えてやろうか?」
新たに地面から木の根が出、それらが一つにまとまった分厚く鋭い一本の根となる。それを刑法官たちに向け、威嚇する。
しかしその程度では手を離す所か、力を緩めようともしない。




