残量、そしてゲート
「(そもそも自分の血が混ざれば魔力を流しやすくなるっていうのも真偽不確かだしな……)」
少しばかり現実から目を逸らしてしまう。が、すぐにそれを頭の隅に追いやって意識を現実に──戻そうとしたけれど、不意にシュンポウ医師との戦闘の瞬間を思い返す。
「(あの時は血を色々と活用してた訳だけど、そもそもなんで水路から離れていたのに動かせてたんだ……?)」
今、囮として使った氷の蛇は細い水路を繋げているから変形が出来ている。
ただ、コランドに拾われた水球は凍らせた時に、居場所の特定を防ぐために水路を断ってしまった。
しかし変形が出来たということは水路が断たれていても能力は使える、と仮定出来る。
「(もし、血とか関係なくても能力が使えるのだとしたら……切り離した能力自体にまだ能力が残って……いや、能力を使うには魔力がいるから、どちらかと言うと能力と魔力の両方が残っていると考えた方が納得出来るか)」
だとしたらこの土壇場から脱出出来る。が、この考えは仮定に過ぎない。また何も試験していないのを実践するしかないことへ怯懦する。
と言ってもやるしか選択肢がない以上、実行あるのみだ!
「(氷球内の魔力をどう指輪に流すのかは分からないけど……!)」
とりあえずどちらもあると仮定して、能力を最大出力で発動する。
それと同時に逃げ場をイメージする。家は抑えられているだろうし、俺が滞在していた場所には人が配備されているはず。
「(だから思い浮かべるのは──)」
脱出先を考えていた時だった。
氷球が無茶苦茶な変形をし始めた。まるで意思を持った生き物の様に上下左右、前後含めた三百六十度で形を変えている。
それを手に持っていたせいでコランドの手と、その近くにいた刑法官の腕を鋭い氷柱が貫通してしまった。
彼らが痛みと急に変形した氷球に驚いているのも束の間。変形とほぼ同時に今までにないデカめのゲートが開く。
その大きさは馬車が二台は通れる程の広さなのだが、問題はそれが床全体に展開されてしまったことだ。
「なあぁっ?!」
他も突然の出来事に各々声を上げているが、見張りをしていた刑法官が周りよりも一際大きく驚愕の声を上げる。
そうして俺らはゲートの事故で強制的に移動となってしまった。




