邪魔、そして水球
「魔獣……脱獄の実行犯かっ?!」
切り割いた刑法官が蛇の魔獣から思い至った犯人を叫ぶ。
それと同時に声で察知したのかこちらへと向かって来ていた刑法官が、蛇から再びコランドの方へと顔を向ける。
そして訝しんだ刑法官がこちらへと飛び込んで来る。
「(くそっ!)」
ゲートリングを奪われれば打つ手が大きく失くなる。そうなれば完全に詰みかねない!
それを避けるために水の経路を全てキャンセルし、氷壁を作り出す。
しかし回していた水の量が少ないせいで氷壁も大きく、厚くすることが出来なかった。
「チッ!」
事実まるで紙でも切るかのようにあっさりと壊されてしまった。
一秒と保たなかった障壁。だが、この僅かな時間が稼げたので問題はない。
「(予定にはなかったから、当たったらごめんよ……!!)」
囮として使ったが秒で切られた氷の蛇。その下部部分を『ウォーミル』で溶かし、『水流操作』で細めの氷柱を伸ばす。
「後ろだ!!」
「分かってますっ」
背後からの攻撃に仲間の刑法官が危機を教えてくれるが、それにキレ気味に返事をしつつ振り返って氷柱を叩き割る刑法官。
しかしこれでようやく注意が逸れた。
「今のうちに──」
そうゲートリングを回収しようとすると、コランドが水路から解放され、床に落ちた指輪に手を伸ばしていた。
「(回収しようとしている……? させるか!)」
彼の目的を阻止するためについさっき刑法官に切られた氷壁を溶かし、小さな水の球に作り変える。
見た目は少しスライムに似ているそれで指輪を包み込む。
しかしコランドは気にすることなく水球を手に取る。
「(普通に触るのかよっ)」
予想外の行動に焦るが、指輪を取られる前に表面を凍らせるのが間に合う。
「ぬぅ! 小賢しいな」
「(そう思うなら取ろうとしないで放っておいてくれっ)」
苦言を呈され、悪態を吐いてしまう。
急な事態に水路ではなく氷の球にしたことで、逆にコランドから逃す方法を失わせてしまった。
「(手に持たれてしまったせいでこれ以上動かせない。手元にない以上ゲートは作れない……どうするっ……)」
しかし事態はさらに加速する。
「キサマ! 何を持っている!」
氷壁が消え、おまけにコランドが動いたこともあって、壁からの急襲を対処した刑法官がコランドを捕える。
彼の腕を掴み、剣の切先を首元に突きつける。
刑法官の距離が縮まったため氷球を鋭利な氷柱に変えて攻撃することは出来る。が、それをやった所でこの機を脱することは無理だろう。
「(せめてナルミトルの血があれば……!!)」
ナルミトルの血を水路に混ぜれば、魔力を流す路が出来た。そうすれば距離があってもゲートを作れただろう。
しかしそんな都合の良い物など用意していない。
もしこれが、自分の血でも混ぜれば魔力を流せるのであれば迷わず血を流し込む。




