黒服、そして刑法官
「……だから俺もその魔道具があればどうとでもな──」
が、その途中で『天眼』に映った人物に意識を取られて言葉が止まってしまう。
看守たちと服装が違う男二人。そして彼らから少し遅れて走って追いかけている看守。
男たちは黒を基調とした海上自衛隊の様なデザインの服を身にまとっており、どちらも胸に一円玉程の大きさの勲章をつけている。
真ん中は黄色く、それ中心に周りは白色の花弁が円状に花開く様な形の勲章は、日本の勲章を彷彿とさせる。
「(確か日本は花をモチーフに型取られていたはず)」
「少年? どうしました?」
早足でこちらに向かって来ている彼らについて考えていると、そんな俺の様子を不思議に感じたのかコランドが尋ねてくる。
「左から誰かが向かって来てる」
「ララン首長。どなたか来訪の予定が御座いますか?」
「いや、今日はもうない」
「黒服で胸に白い勲章をつけた男たちだ」
「黒に白の勲章……とりあえずこの少年を隠しましょう」
「そうだな」
俺の言葉を疑うことなく会話を進めて行くコランドと首長。
それ所か服装を聞いた三人が眉根を寄せ、すぐさま結論を出した。そして二人の言葉を受けてブライアンが動く。
「(隠すって、場所ないだろ……)」
そんなことを考えているとブライアンが俺を担ぎ上げる。再び荷物持ちである。
そのまま首長の方へと連れて行かれる。
「痛いやろうけど、我慢して首長の足元に隠れといてくれ」
「え、ちょっ?!」
本当に荷物かのように首長の机の脚を入れる部分に押し込められる。
ただでさえ身体が痛いというのに、無理矢理身体を畳んで狭い場所に入れられているのでさらに怪我に響く。
それを理解しながらも謝罪を述べたブライアンはそのまま首長の後ろに立つ。
それと同時に扉がノックされ、間を空けることなく勢いよく開け放たれた。
「動くな!」
夜中に似つかわしくない怒号を上げる黒服。
手には既に鞘から抜かれた刃が光っている。
「これは刑法官の方々。こんな時間にそんなに慌てるとは何かあったのか?」
「白々しい。お前たちがキリサキの仲間をこの部屋に呼んでいると報告があった! なんの密会だ?!」
「さて、なんのことだろうか?」
声を荒げる刑法官と呼ばれた男に対して首長は至って冷静に話をしている。
図星を突かれたにも関わらず、それを面に出さない三人の大人たち。そのポーカーフェイスぶりに感心する。
しかしそんなことよりも今気になることが男から告げられた。
「(キリサキの仲間を部屋に呼んでいると報告があった、ねえぇ……)」
その言葉からいくつかの予想は立てられる。
まず一つは、地下十階層にいた看守が目を覚まし、ブライアンが囚人を脱獄させたと報告が上がった。
次に、すれ違った看守が怪しんで報告した。
あとは……遠視系の能力か魔道具の使用。もしくは獣人による盗聴。
しかしそれらの予想はどれも可能性があまり高くない……
最初のは今見に行ってみたが、彼らはまだ気絶している。その次も怪しんでもキリサキの仲間、までは分からないだろう。
なので一番可能性が高いのは能力か魔道具によるものだろうか?
次点で、獣人による盗聴。と言っても、彼らの聴力が壁を何枚も隔てた先の音を聞き分けられるのかは分からない。
少なくとも首長の部屋から次の部屋までそれなりに距離があるので、そこに獣人がいても少し難しいだろう。
「惚けるな!! 今からこの部屋を調査する! 動いた場合は反抗の意思ありとして即実力行使へと移らせてもらう!」
軍服の男が剣の切先を首長に向けながら命令する。




