見覚えのある男、そして冗談
数分程で戻って来たブライアン。
しかしブライアン一人ではなく、知らない男性も一緒に連れいる。
「失礼します、ララン首長」
男は年齢よりもやや渋めの声音と共に軽く頭を下げる。
歳はブライアンとそう変わらない四十代だろうか? ただ、白毛混じりのヤギ髭によって五歳くらいはブライアンより老けて見える。
しかし身体つきは歳相応といえば失礼だが、細身だ。
「(……というか、どこかで見た憶えのある顔なんだよなぁ)」
彼の顔を見た時に生まれたモヤだが、どうにも思い出せない。
それ故にもどかしい。
その横で首長が謝罪の言葉と共に口を開く。
「こんな夜更けにすまないな。コランド」
「いえ、そちらは気にせず。それよりもブライアン殿が押収品を寄越すように言われているのですが、本当ですかな?」
「ああ。私が持って来るよう彼に言った」
「左様ですか。しかしいくらララン首長の要請であっても、おいそれとお渡しは出来ません」
「だろうな。手順を無視してポイと渡して良い物でもないからな」
「ご理解いただけて幸いです。それでは」
コランドはそれだけ言って踵を返し、本当に立ち去ろうとする。
「(え?! それの確認のためにわざわざ、いやそれよりも無理ですって帰られたらこれからやろうとしていることが出来ないんだけどっ?!)」
そんな彼の行動に驚愕し、慌てて引き止めようと声を上げる。
「待っ──」
「待て、コランド」
しかし俺の言葉を遮って、首長が彼を呼び止める。
呼び止められた、コランドはゆっくりと振り返る。その表情はどこか怒っているように見える。
そんな生真面目な彼に向けて首長は口を開く。
「すまないが、お前の小芝居につき合っている時間はない」
「……何のことです?」
「渡せないと伝えるためにお前が来る必要もない。それなのにわざわざ出向いて来たということは、何かあるということだろう。早く話せ」
首長がピシャリと告げる。
するとコランドは肩を小さく震わせてゆっくりと振り返る。
そこには先程まであった睨む様な生真面目な顔ではなく、必死に笑いを堪えて緩んだ顔があった。
「ぐっ……っ、ははっ……なんだ、バレてましたか。残念、です」
こちらに顔を向けたコランドは三人の視線が集まる中、吹き出し高笑いを上げる。
特に俺の方に視線を向けている。
そんな彼の様子に呆気に取られていると、首長は小さくため息を吐いてから再び告げる。
「早く話せ」
「──失礼しました」
その言葉でようやく彼の笑いが止まる。
今度はブライアンの方を見ると、こちらの視線に気がついたのか困った、というか呆れた表情を返される。
どうやらこれも日常的らしい。二人の慣れた感じがそれを物語っている。




