根拠のない言い訳、そして悪足掻き
「桐崎の冤罪を晴らしたい。それの協力をして欲しい」
ここまで来たのだ。ややこしい駆け引きなんてせずに直入で行く。
部長もいないので、むしろちょうど良いタイミングだろう。
「冤罪……何故そう考える? 理由を言ってみろ」
子供を目の前にしても高圧的な態度を崩さない首長。
しかし今は先程までよりも眉間にシワを寄せ、目つきは鋭く座っている。明らかにすごみが増した。
それは部屋を出ようとしていたブライアンも同様で、その歩を止めてこちらの様子を伺っている。
彼は首長より表情は柔らかいが、目は座っている。
重たい空気に気圧されそうになる。
「悪いが具体的な根拠はない。事件が起こった時も特に言い訳が出来る場所にいたことも言えない」
「……それでは冤罪とは言えない。すまないが、その願いには答えられない」
「……そうだよな」
そんな空気の中切り出せたのは「証拠はないけどやってません!」では、誰だって納得してくれる訳がない。
ましてや首長の仕事の手を止め、ブライアンが危険を犯してまで……
「(いや、ブライアンのに関してはあいつが勝手にやったことだわ)」
申し訳なさに苛まれていたが、ブライアンに対しては少しだけその気持ちが止まる。
首長と話がしたいとは言ったものの、牢から連れ出されるとは予想していない。
しかし彼らがそこまでしてくれたのは単に「キリサキを捕まえたい」という想いからだというのは理解している。
が、その想いを無視させてもらう。
「俺の家から出てきたっていう書類とか、この近くで目撃証言があったって言うけど、そもそもそれが本当なのかすら怪しい情報なんだが?」
「……何故そう思う?」
「俺からしたらそんな書類とかも必要ない物だからだよ。移動出来るんだから」
「移動……? どういうことだ?」
「ゲートって言う見た所限定だが、距離、人数、大きさを気にせずに転移が出来る魔道具? を持ってるからな」
「「っ!?」」
転移の魔道具と聞いて二人が驚きの表情へと崩れる。その反応からして転移の魔道具は実在するらしい。
ブライアンは完全にこちらを向き、真剣な面持ちで次の言葉を待っている。
首長は「ふぅー」と深く一息を着いてから生暖かい目を向けてくる。
「そんな魔道具を所持しているという情報はない。そもそもそれだけのことが出来る魔道具の存在自体が確認されていない」
「…………ダンジョンの中で手に入れた物だ。それだけのことが出来ても不思議じゃないだろ?」
「ダンジョン……ブライアン。あり得るか?」
存在の有無を問われかけたけれど、ギリギリの所でダンジョンという単語を思い浮かべることが出来、逃げ切れた。
それによって首長はブライアンに確認を飛ばす。




