片づけ、そして長い階段
黒パンを一枚と半分ほど食べ終えた所で胃がもう入れるなと言ってくる。
しかし腹はまだ膨れていない。
「全然足りない……」
食べやすいのもあってスルスル食べられるのだが、噛む必要もないため余計に腹が膨れない。
正直食べ始めた時は箱にあった黒パンを全部食べるつもりだった。
しかし胃が保たない。
「ごちそうさまでした」
仕方がないため軽く水で口の中を正してから食事を終える。
そして後片づけを始めるが、果実酒の樽の中はパンくずや入れたまま放置していた干し肉が浮いており、黒パンは切っているとは言え食べかけのまま。
少し考えてから干し肉と酒は『ウォーミル』を使って水分とアルコールを飛ばす。
次に『水流操作』で浮いている沈殿物を端に追いやり、果実水を飲み干す。
結局、看守たちの食料の半分は食べてしまった。
「(無事に出られたら弁償しないとな……)」
次のことを考えながら皮袋と水分を飛ばした干し肉を手にブライアンの方を見る。
「悪い、待たせた」
「腹は膨れたか?」
「ああ。助かったよ、ありがとう」
「おう」
そうして看守たちの休憩室を出る。
地下にいるためどれくらい時間が過ぎたのかは分からないが、さっきの看守たちはまだ気を失っている。
好都合ではあるが、あまり長いとどれだけ強く殴られたのかと心配になる。
「なら、行くぞ」
「……」
そしてそんな彼らを気絶させた当人様は俺を荷物持ちで担ぐ。
「(やっぱりこの移動方法なのか……)」
この方法に不満を抱きつつも、まだ満足に動くことが出来ないので文句は言えない。
それにあの時俺の状態を対処しようとして予定変更に踏み切った様に見えた。
なら、当初の目的地と思われる地下十階層で交渉、または脅迫が行われるのか。それともまた別の何かを行使してくるのか。
どれにしろ今の俺の状況では下手に拒絶することも出来ない。よって今はされるがままで階下に運ばれるのを待つしかない。
今までの階段の倍程はある。そのために階段を下り始めて十数分で地下十階層に着く。
「(千里眼越しだったから分からなかったけど、かなり長い階段だったんだな)」
「着いたぞ」
自分の能力の便利さと不便さを階段から感じているとブライアンに降ろされる。
座らせようとしてきたが、一応何か起こっても動けるように立っておく。ただ、それだけでも痛みに苦しめられる。
「それで? なんで俺はここに連れて来られたんだ?」
痛みを誤魔化すために聞きたいことをとっとと質問する。
「取り引きのためだ」
「(やっぱりか……)」
想定通りの回答に少しだけ落胆する。
先ほど彼がなんの条件の提示をすることもなく食料を渡してくれたため、取り引きなんて助けてくれるかもと淡い期待をしていた。
しかしそれも今の発言で消え失せた。




