仕組み、そして限界寸前
「……それは、キリサキを探すことも出来るんか?」
さらに表情を険しくして尋ねてくる。部長と同じ質問を。
そして何より焦りの様子が見て取れる。
「ああ。範囲内にいるなら」
その返答をどう捉えたのかは分からないけれど、ブライアンが覚悟を決めた顔になる。
そして「なら後で頼むわ」と言って下りる速度を上げる。
位置的にはそろそろ地下七階層に差しかかろうとしている。
「(このまま下りて行けば次に見張りがいるのは地下九階層。質問を答えさせるなら今だけだな)」
速度を上げられたせいでさっきよりも時間がない。
ブライアンがどの階を目指しているのかは知らないが、それまでに答えてもらう。
「こっちは答えたんだ。さっきの質問に答えてもらうぞ」
「あー……俺もそんなに詳しい訳やないんだけどな」
ブライアンはそう前置きをしてからこの堅牢署の罰について簡潔に語り始める。
階層が下へ行く毎により凶悪犯を収容しているが、収容出来る人数には限りがあるためその階層内でも奥側と手前側で罪状が違う。
当然奥の囚人程より罪が重く、罰則を受けるのが違うのもこれが関わっている。
「──てな具合らしい……これで良いんか?」
話を終えたブライアンは少しだけ不安な顔をしている。
その内容自体は理解した。ただ……
「なんでさっきかららしいって人伝みたいに言うんだ?」
「ああ、そりゃあ俺はここの署員じゃないからな。どういうことをやっているかは知っていても、詳しくまでは知らんねん」
「署員じゃっ、ごほっ……じゃないのに、俺らを捕まえにっ、来たのかのか?」
「要請で呼ばれとるんや。それより喉大丈夫か? さっきから咳もすごいし、喉もカスカスだぞ。布が息苦しーんか?」
「捕まった日からずっと飲まず食わずだから、声が枯れかけてるんだ」
「な!? それを早よ言わんかい! 今すぐ看守室から、ああでも今入って行くのはさすがにマズいか! でもなあー……」
囚人だからかそれとも子供だからか。はたまた人だからか。瀕死に近い状態だと知ったブライアンは立ち止まり、どうするか悩み始める。
彼の様子から薄々考えていた通り、俺を出したことを隠したいらしい。
目的の一つは俺の『千里眼』を使って桐崎を探させたいからだろう。
しかしそれなら牢の中で行った方がより確実だと思う。それをやらなかった理由は一体……
「正直……意識を保たせるのもやっとだ」
無理矢理意識を保ってはいるものの、気を抜けばすぐにでも意識が途切れてしまう程にギリギリだ。
そして処置を受けなければその気絶中で確実に死ぬ。
「…………分かった。もう少し辛抱せえ」
ブライアンは再び覚悟を決め、地下九階層の扉を潜った。




