下る、そして刑罰
そうしてこっちの了承を待たないままブライアンに牢から無理矢理連れ出される。
「……なあ、せめてこの体勢はどうにかならないか?」
牢が並ぶ通路を走るブライアン。そんな彼は俺を現在脇に抱えている。荷物運び状態だ。
しかも上から布を被せられている。
怪我をしていることもありおんぶで連れて行かれるのかと思ったのだが、この持ち方とほのかに香るお日様の匂いの布団に近い大きさの布。
さすがに色々と訊きたいことがあるため言及する。
「なんや不満か? 坊主軽いからこっちの方が楽なんだよ」
「不満だよ。俺は物か」
「まあ、すぐ着くからそれまで辛抱してや。あとしばらく黙っとってくれると助かる」
こちらの気持ちを放置してブライアンは階段を降りて行く。
荷物持ちのせいで振動が強く伝わってくる。
「あ! ブライアンさん! どうも」
階段を降り続けていると通路を見守っている看守の内の一人がブライアンに声をかける。
「先日は稽古を着けていただいてありがとうございました!」
二十代後半くらいの彼は綺麗な最敬礼でお辞儀をする。
顔を上げた彼は期待と羨望の眼差しを宿している。
「また今度、時間がありましたら稽古を着けてください!」
「おう。それまで自主稽古を怠るなや」
「はい!」
二人はそれだけ交わして別れる。
看守はそのまま見守りを続け、ブライアンはさらに階段を下りて行く。
彼らが守っているのは現在の地下六階層の階段扉前。ポールさんたちが収容されている階層だ。
「(そういえばポールさんたちを見つけた時、いやどちらかと言うとその後で見かけた下の階の囚人たちか。彼ら、かなり疲れてたな)」
地下中を探していた時のことを思い返す。
サナたちを見つけた地下七階では何かがあったらしく、衣服が焦げている者や濡れていた者だらけだった。
「ここに収容されている囚人は何か受けさせられるのか? 疲れているやつらの服が焦げていたりしてたが」
しばらく黙っていろと言われたので、看守から少し離れた辺りで尋ねる。
一応小声で訊いてみる。
「罰則だ。階毎に課せられる内容が違うてて、下の階の囚人ほどキッツい罰を受けさせられるらしい。坊主のお仲間が受けたんは、多分水刑と宙吊り刑のどっちかだと思うわ」
「……名前からおおよその検討はつぐ、んんっ! つくが、同じ階でも別の刑を課されていた囚人もいたぞ? それはなんでなんだ?」
「……やっぱ坊主、遠視系の能力持ちか」
不穏な言葉を並べられたが、それよりもそれをどういう基準で割り振っているのかの方が気になる。
だからまずはそっちについて答えてもらおうとしたのに急に話を変えられる。
少しだけ眉が下がった彼の顔。その顔と発言からは部長が浮かべた驚きは感じられない。首長と同じで知っていた様な口振りだ。
「ああ。見た相手なっ、ら多少距離があっても見れる。限界はあるけどな」
少し声が出難くなりつつも首長たちに伝えた通りの説明を行う。
なぜ把握されていたのかは気になるけど、今は皆に何をされたのかを知っておきたい。




