知らない、そして捜索
「ちょっと待ってくれ! まだ話がある!」
「……なんだ?」
歩みを止めて振り返った彼女は少し不機嫌そうに見える。
しかしそんなのはお構いなしでこちらは続ける。
「さっきのブライアンの話。看守部長がいたからはぐらかしたけど、俺はあんたたちを信じる。だから部長との取引とは別に何があったのかを色々と教えて欲しい」
彼女に向けて頭を下げる。拘束された状態のため座ったままだがそこは許容して欲しい。
あの襲撃者たちは首長たちが仕組んだ物ではない。と、考えるならそれの犯人も見つけ出さないといけない。
もしかしたら脱獄の主犯と同一人物という可能性も大いにある。
「…………本当になんの話だ? 信用することは構わんが、貴様が求めている情報の共有には限度がある。先程の取引でキリサキ捕縛には十分だ。それ以上を欲するな」
しかし首長に要求を一蹴される。彼女の態度は部長がいた時同様で困惑と怪訝な表情を浮かべている。
そんな彼女の様子に不安が積もる。
「(この様子は本当に知らないのか? だとしたらブライアンは約束を破ったってことか……?)」
キリたちが襲われてから体感で一時間半ほど。ブライアンがここに来て去った時間を合わせると四時間半。
二人共俺を追っているとはいえ、これだけ経っても連絡が行っていない物なのか?
それとも何か理由があって出来ていないとかか? でないと「信用して欲しい」と言っているのに自らそれを破綻させる意味が分からない。
「用はそれだけか? 後で資料を持ってこさせるから待っていろ」
「あ、ちょっ! 待ってくれ! まだ話が……!」
考え込んでいると首長は撤収を決めてしまう。
こちらの静止を無視して彼女はとっとと去って行ってしまった。
「……あれは本当に信用してくれているのか?」
態度や発言からしてどうも彼女からその様子が窺えない。やっぱり首長は本当に今回の話を知らないのか?
だとしたら探るべきはブライアンの方。『千里眼』で彼の様子を監視しておくか。
「ただ見ることしか出来ないからそこまで情報を手に入れられるとは思えないけど……」
書類でもあれば分かるのに、と思いながら眼に魔力を流し『千里眼』を使う。
そして堅牢署内を探すがブライアンの姿がどこにもない。
堅牢署の事務室の様な場所や首長の部屋、誰かと話をしている部長、報告書を書いている俺を取り調べした看守たちの所にもいない。
もう一度隅々まで探してみるが堅牢署のどこにもいない。
「(外に出ているのか? 四時間以上前に出たのだとしたら範囲内にいない可能性の方もある)」
行動からして何か手がかりを持っていそうなんだけど。
そんなことを考えているとこちらに近づいて来る足音がする。
その音に気がついてすぐに『千里眼』を解除する。




