手だて、そして時間切れ
新しく手に入れた『水流操作』とずっと使い続けている『ウォーミル』。
どっちも相性は良いし能力もシンプルだから大丈夫だと思っていたが、まさかちゃんと理解出来ていなかったとは……
しかしさっき入り口で殺されていた人たちの血は操れていた。となると理由は別にある?
『水流操作』は実戦以外で使用していないとはいえ……いや、これも後で考えることだな。
それよりも今はキリの治療とかを優先するべきだ。
それにこれだけ騒いだのだからそろそろ人が来るだろうし、これ以上暴れられたらリリーにまで被害が及びかねない。
「(ただどうするかだよな。ゲートも宝物庫もないともう手がない……)」
血をこれ以上使う訳にはいかないし、さっきので能力の不明な部分の予測は立ったがそれも不確定だ。
あれだけ脆いとこれ以上氷で戦うことは難しいか? 身体の痛みを我慢すれば肉弾戦も出来るけど。
「(能力で済ませられれば痛みを最小限で済ませられると思っていたけど、中々上手く行かないな)」
嘆いていても仕方がない。
幸い相手もダメージが大きいから動きが悪い。ならこの肉体でも多少は相手をすることが出来るだろうか?
「グソガキん子……! 絶対に殺っでやる!!」
殺気の籠った血走った右目でこちらを睨んでいる。口元からは涎が垂れており、それを気に留めることなく彼は近づいて来る。
が、その足がピタリと止まる。そして一瞬だけ出入り口の方を見る。
その視線も相まって、彼が足を止めた理由が判明する。出入り口の方からこちらに向かって来ている足音や声がする。
『天眼』をそっちに向けると武装した人が大量に治療監房の狭い通路を通ている。
「──チッ。んだが、時間切れんです。こんれ以上はやり合えんです」
さっきまでの殺気を納め、しかしその目から殺意が消えることはない。
逃げる気か? でも外には看守がいる。いや、何も策を練らずにこんな所に潜入なんてしないだろうし、暴れればこうなると予想も出来る。
だから逃げ出す方法があるのは確実。
それはこっちとしても困る。困るが……彼を捕まえられる程動けるだろうか?
「ガキん子、最後に名を言いんなざいです」
「……アズマ キリサキ」
「──……あっ?」
男の隙を伺っていると変な命令を受ける。素直に答えるとさらに顔を歪ませた。
「んだっけないでしょうに! 嘘っこ言うんも良え加減にするんです! ガキん子がキリサキんだけあるか!!」
俺のことを知っている? しかしこんな男に会った憶えがない。
それにしてもアンタレスでといい、首長たちといい、目の前の男といい。会ったことのない奴らにこっちの情報が知られているのは普通に怖い。
どこでそんな情報が売られているんだ……




