表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します  作者: りゅうや
第18章 堅牢署からの脱獄者
424/517

投擲、そして血の魔力

 

 狙いは左目か。加えて投擲をした男はその軌道の横に入り、死角を突こうとして来る。

 しかし『天眼』で上から全体も見ているためその行動は意味を成さない。

 避けはしない。というか出来ない。

 これを避けると背後で寝ているキリに当たってしまう。

 痛みに耐えながら腕を上げ、ナイフの柄を掴む。投擲さえ防げればナイフはいらないので、手を離す。

 若い医師が死角から中指を少しだけ隆起させ、喉元を潰しにくる。

 が、その直前で拳が止まる。


「ゔぁっ?!」


 俺と拳との間に氷の柱が伸び、男の一撃を止めた。渾身だったのかは不明だが、氷に少しだけヒビが入る。


「邪魔すなっ、ごのグソ魔獣んがぁーっ!!」


 それだけでは終わらず、彼は怒声と共にさらに拳に力を注いでいるらしくヒビが広がって行く。


「(このまま行くと破られるな。ただそっちにばかり意識が向いているのは、ありがたい!)」


 柱の中間に穴が空くようにし、そこから男の脇腹を殴りに行く。


「あっ!?」

「!」


 しかし今の自分の姿ではこの程度の距離でも届かないんだった。狙いから拳一つ半分も足りない。

 肉弾戦自体が少ないせいで間合いが慣れてない!

 このミスを好機と捉えたらしく殴るのを止めて、その腕を肘と膝で挟み込もうとする。

『ウォーミル』で上部の氷を一気に溶かし、再度液状に融解する。

 そして形状を柱から肘からの攻撃を防ぐ壁にする。

 が、何故か壁として作った氷が割れる。

 さっきは保ったはずの氷の硬度が(もろ)くなっている?! 慌てて『ウォーミル』に流す魔力が少なかったかっ?


「まずん左手ぇ!!」


 鬼気迫る表情だったが不気味な程口の端が吊り上がった表情へと変わる。


「ぐあぁあっ!!?」

「な、硬っ?!」


 怪我で立っているだけでも鈍痛が続いていたのに、それ以上の激痛で一時的に肉眼の視界が歪む。

 肘と膝に挟まれるだけでも骨に影響が出る威力なのに、それに加えて昨日の襲撃での傷がある。

 初撃で内部までダメージを喰らったせいで数倍の痛みに襲われる。

 しかし『天眼』で周囲の様子は見えている。左手を潰した若い医師が何かに驚いているのが見える。

 左手の痛みに耐えながら血を操る。

 柱の残り下半分を細長く鋭利な柱に変えて男の脚のある場所を狙う。


「ぐああっ!!?」


 右目だけの視界情報と片足状態では避けることさえ出来ず、最初に氷の蛇で貫いた脚に再度柱が届く。


「(傷を抉られる痛みが分かったか!)」

「ごほぉっ!?」


 痛みで挟む力が僅かに緩む。

 その隙に手を抜き、お返しも含めてやつの腹を勢い良く蹴る。


「うおーっ?!」


 吹っ飛んだ若い医師の先に運悪く老医師がいたが、叫びながら地面を這って寸前の所でそれを回避する。


「ぐ、グンゾ……ガキん子がぁー……!!」

「(聴力も視覚も戻った。もう良いか)」


 壁にぶつかり頭から血を流しながら起き上がり、こっちを射殺す様に睨んで来る。

 しかしもう起き上がらせるつもりはない。

 彼が起き上がる前に血の蛇を這わせ、男の首を上から地面と繋げる。そして凍らせて起き上がれないようにする。


「なっ、こんのグゾ魔獣んがっ! 離せえぇ!!」


 さっきの氷が割れた原因が魔力不足と考えるなら、『ウォーミル』の硬度には魔力とは別の何かが必要なのか?

 ……いや、もしかして能力を使う度に魔力が減っている?

 その予測が正しかったのか、首を捕まえていた氷が手で壊される。


「んだ? (ずん)ぶ脆い魔獣だな」


 さっきは手こずった氷が簡単に壊せたことに驚きつつも嬉々としている。

 その態度に少しムカつくが今はそんな場合ではない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ