助けてくれた、そして意識
手の痛みに耐えながら男を倒れ込ませ、ようやく彼の下敷きから脱出出来る。
左手を見るとパンパンに腫れている。
おまけに皮膚が少し捲れている部分もあり、注視すると薄っすらと煙も出ている。
瓶の破片での傷は薬品によってさらに悪化している。
薬品がかかった場所はどこも同じ状態になっている。
正直見れた物ではない。
「(どんな激薬だったのかしら)」
これだけの症状が短時間で現れるなら体内に含めば大変な事になっていた。
ただその激薬のお陰で脱出する隙が出来たのだけど……
結局自分一人の力では脱出出来なかった。
「でも一体誰が……」
瓶が飛んで来た方を見る。
そこには青い顔をし、大量の汗をかいた年配の男が立っている。
彼は首から血を流しており、立っているのもやっとな様子。
失礼ながら彼の姿を見て少し落胆してしまった。
「があぁっ、目があぁっ! 目があーっ!!」
「!」
すると若い方の男が絶叫する。
視線を戻せば、彼の顔の左半分が私の手と同じ状態になっている。
「(もし直感で顔を覆わなかったら私も……ん?)」
想像するだけでゾッとする。
しかしその想像に違和感を覚える。
「ああー……いえ、確かにそうだけど私が瓶を割らなければ顔にかかる事も起こらなかったわね」
すぐに違和感の正体が判明する。
それにしても自分の行動も加味しての表示は初めてね。
ウェンベルの時も分かったのは「そっち側から何か危険が襲って来る」って感じだった。
身体が間に合っても、彼の威力に耐えれなかった。
今回の事といい、私はまだまだ力をつけないとダメね。
「ああーっ……ぐぅ! お、お前ぇ! なぢで生でる!!」
若い男は顔を服で覆いながら恨めしそうに瀕死の男を睨む。
傷を放置しておけば腐って使えなくなるし、私も布で手を覆っておいた方が良いかもしれない。
今は目の前の若い男をなんとかしないといけない。
「(あの状態なら左目が使えないと考えて良いはず!)」
これ以上彼に動かれたらダメ。意識はフラつくけど耐えれる! 殺す勢いで行くしかない!!
今度は殺意を持って、彼の死角を突くべく一歩を踏み出す。
「──っ!?」
しかしその歩みに全く力を込める事が出来ずに前のめりに倒れる。
「なん……」
受け身は間に合うが、すぐに起き上がろうとしても身体に力が入らない。
また彼の能力? でも条件は満たしていないはず……!
脱出する時も今突撃する時も呼吸はしっかりしていた。
ならこの脱力感は何?
「(……! そうだ魔力。魔力がもうないから!)」
原因が判明する。
『直感』で魔力がもう空に近かったのに、さらに『迅速』を使って男を投げた。
それにより許容量を超えてしまったからだ。
酩酊するくらいで止めるべきだった? でも『迅速』を使っていなかったら多分脱出は出来ていない。
あと少し。魔力があと少しだけ持ってくれれば……!
「ない物はない。今は目の前の相手をどうにかする」
自分に言い聞かせるも、意識が朦朧とするせいかほとんど声が出ない。




