記憶、そして認める
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目の前に汚物を見る様な目で見下ろす男。
彼の手には細身の剣が握られている。
「何度言ったら分かる。女が剣を握るな!」
低く暗く。負の感情しか孕んでいない言葉をぶつけてくる。
少女はただ、それに怯えて泣くのを堪える事しか出来ずにいた。
──兄様……? でも幼い。昔のままの様……
「貴様がいくら努力しようが、なんの意味もないと何故分からん? 女はそこまで脳がないのか?」
兄は剣先を少女の額に向けて問う。
「しゃべる口もないのかっ?」
「ひっ……」
怒声を上げるが少女は怯え続ける。
兄はその態度が気に喰わなかったらしく大きく舌打ちをする。
それにまた肩を震わせる少女。
兄が少し視線を上げた。
その先にいたのは母だった。
──母様っ!
彼女は汚れる事も厭わずに地面に頭を深く着け、石像の如くジッとしている。
「しっかりと見張っておけ」
「……はい」
兄は土下座をしている母に命令すると踵を返し家の方へと歩みを進める。
彼の姿が角に消え、しばらくした所で母は身を起こす。
パラパラと髪や額、掌、着物から土が落ちる。それでもまだ土は着いている。
彼女は手の土を払う。
「おいで」
母が少女を呼ぶ。
彼女が言葉を発した瞬間、少女は肩を震わせ身を強張らせた。
そんな彼女に母はもう一度「おいで」と言う。
少女は躊躇いを見せながらも母の元へ行く。
「かあ、さま……」
怯え、震える声で母を呼ぶ。
そんな彼女に母は手を伸ばす。
少女が思わず目を瞑る。
「大丈夫」
しかし少女が想像していた事は起こらず、彼女の身体を柔らかな布が包み込む。
目を開ければ、母が少女を抱きしめていた。
柔らかく温かい。そして母の匂いに少女は安心する。
「かあさま……」
少女は母の胸の中で泣き始めてしまう。
「貴女には剣の才能があります。生まれ持った力があります。生きて行く中でそれらを振るう機会を得るでしょう」
母は続ける。
「大丈夫です。貴女はとても強い子です」
彼女の頭を優しく撫でる母。
「貴女は自分の好きな様に生きなさい。私が認めます」
「かあさま……っ」
──母様……っ。
母の言葉に少女は嗚咽を混じりながら母を呼ぶ。
「ほら、泣かないで。目を開けて──」
その言葉に意識が揺れる。
詳しくはしばらく先になります。




