自信、そして時間
「どした、そんなに慌てて?」
ようやく目を醒ましたブライアンが急に騒ぎ出した俺の様子について尋ねる。
「首長と話がしたい! 悪いけど至急出来るかどうか確認して欲しい!」
しかし説明するのが難しいので、用件のみしか言えない。
頼む! 要求を飲んでくれ!
「……すまんが、あいつも色々とやることがある。特に今は刑法官の相手をしてるはずだから、なおのこと無理だ」
残念ながら却下される。
その返事に落胆し、退路が塞がれた状況からどうするかを考え始める。
「──が、なんとかなるかもしれん」
「! 本当かっ⁈」
するとブライアンから予期しない言葉が投げかけられる。
「多少時間はかかるが今からでも連れて来れる……かもしれん」
最後の方が弱気になる。
保険を入れているが、それでも可能性があるのなら構わない。
「それでも頼む!」
千載一遇のチャンスだ。それを逃す訳にはいかない。
彼は俺の言葉を聞き終えると立ち上がる。
「あんまり期待すんなよ」
彼はそれだけ言い残して立ち去って行く。
最後まで自信なさ気だな……
それでも誤解を解けるチャンスがもう一度来た。三度目だが、恐らく最後になるであろうチャンスだ。
絶対に成功させないといけない。
まだ話せるかも確定していないが、期待せずにはいられない。
しかし首長が来るとしてもブライアンの物言いからしてまだ一、二時間以上はかかるだろう。
だとしたらそれまで暇な訳だが──
「(……とりあえず首長が来るまでに何かやっておくか)」
今は何かしていないと落ち着かない。
サナたちは見つかった。ある程度の探索とその道中での声の主も分かった。
首長がいないのなら彼女の部屋を物色しても特に情報は得られないだろう。
家の状況を知ろうにも『千里眼』では届かない。
「(本当に何をしよう)」
いざ何かしようにも思いつかない。
「困ったな」
声を漏らしてしまう。
ドンドンッ!
すると隣の牢から壁を叩かれる。
反射的に『天眼』を隣の牢の中に向ける。
そこには赤色パイナップルヘアの筋肉質な男がベッドに横になっている。
しかし顔は険しい表情を浮かべている。
敵意はなさそうだ。
「(堅牢署内を探索してどれ程時間が経ったのかは分からないが、さすがに騒ぎ過ぎたか)」
牢内とはいえ騒音による隣人トラブルもあるのだろう。捕まったの初めてだから知らないけど。
でも彼のお陰で焦っていた気持ちが少しだけ落ち着けた。
静かに何かをしないとな。動かず音が出ない何かを。
「(……あ、そうだ)」
一つのやるべきことを思いつく。
「(いつでも動けるように怪我をなんとかするか)」
首長と話をするのにも普通にしゃべれた方が相手も聞きやすいだろう。
首長もブライアンも毎回聞き取ってから何を言ったのかを理解するためか返事が遅かったからな。




