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異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します  作者: りゅうや
第8章 アトラス州の巨獣
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作戦、そして集隊

 

「おらっ!」

「ごぉっ!」

「ちっ、待てっ」


 エルダースノウマンに横から切りかかったが剣を振る前に俺に気づき地面を蹴って避けられた。剣を振るのをやめ、俺も地面を蹴って追いかける。


「ぎゅうぅ?」

「ふんっ!...っと」


 追いかけた先にスノウマンがいたので計4回切る。左肩から右太もも、次に右肩から左肘、首、最後に剣を上に上げて勢いよくスノウマンの頭に振り下ろした。

 切り終えるとスノウマンは雪へと姿を変えた。核の位置が分からなかったので勘で切ったのだが、どうやら当たってくれたようだ。

 すぐさまエルダースノウマンを探すとヒューズさんとファフスさんが交戦していた。

 行くなら今だな。

 俺はそう思い2人にエルダースノウマンを(勝手に)任せてキリのいるところへ走る。

 キリはユキナと協力してスノウマンを倒している。大人数だから良かったが、これがもし1人か2人でここに来ていたら確実に取り囲まれてリンチされてしまう。と言ってもお互いの場所が分からないのだから取り囲めるかは定かではないのだが...

 そんなことはさて置き、キリたちの近くに5体ほどいる。キリたちが今相手にしているやつを合わせたら7体だ。他の5体の動きからしてキリたちが近くにいることは気づいていないだろう。

 だから気づかれる前に、


「片づけないとっな!」


 そう言って出会した通常モードのスノウマンの首を左から切断する。次に心臓部分を右から左へ突っ切る。最後に正中線に沿って頭から下へと振り下ろす。スノウマンは全てこの倒し方になる。

 スノウマンは雪へと姿を変えて崩れ落ちた。

 俺はさらに進みキリたちの前に出た。


「東、どうしたの。っん!」


 俺に気づいたキリが近づいて来ていたスノウマンの爪攻撃を後ろに飛んで避ける。


「このっ!」


 そして着地してそのまま体重移動し、切りかかった。そして剣をスノウマンの開いている口の真ん中部分に刺して剣を下げた。

 スノウマンは雪へと姿が変わった。核が転がっていないところを見ると切ったのだろう。


「気をつけて東。この魔獣さっき首を切り落としたのにまた動き出したから」

「ああ。でもこいつはもう動かないから安心しろ」

「...倒せたってこと?」

「そう。こいつらを倒すには身体のどこかにある核を見つけて壊さないとダメなんだ。でないと時間が経てばまた身体を作って襲って来るからな」

「そうだったの」

「ああ...ふんっ!」


 背後から爪で攻撃しようとして来たスノウマンの腕と首を振り返って切る。スノウマンの姿が雪へと変わる。核が出てきたので踏んで粉々にする。


「それで何で東は来たの?もしかしてエルダースノウマンを」

「いやまだ倒してない。でも倒すためにキリの力が必要なんだ」

「分かったわ。それで私は何をしたらいいの?」


 話が早くて助かる。


「俺とヒューズさんであいつの注意を引きつけるから隙を突いて『迅速』であいつの胸辺りにある赤い石を壊して欲しい。多分あれがあいつの核だ」

「キリそっ、ちはどおぉ、ってアズマ。どうし、たの?」

「ユキナ。そっちの魔獣はどうなった?」

「大じょ、う夫。もう動か、なくなった」

「そうか」


 俺はキリに伝えたことをユキナにも説明する。もちろん核のことなどもだ。


「そうだ、ったん、だ」

「それでキリ、大丈夫そうか?」

「ええ。その作戦で行きましょ」

「ああ、頼む」


 俺はキリを連れてエルダースノウマンの方へ向かおうとする。

 しかしその前にユキナに周りのことを教えておく。スノウマンがいる方向とだいたいの場所、そして数。それを伝えてから今度こそエルダースノウマン目掛けて走り出す。

 エルダースノウマンはヒューズさんとファフスさんが抑えていてくれたので助かった。後は伝えるだけだ。

 先にヒューズさんからだ。その際に抜けるヒューズさんの担当を俺がやる。伝える担当はキリだ。少しでも体力と魔力の温存をしてもらいたいからだ。

 キリにその旨を伝え、俺はヒューズさんの元へ行く。


「っ!ここはいい。他へ行けっ!」

「ヒューズさん、俺に作戦がある。一旦後ろへ下がって、キリから訊いてくれ。っと」

「...やられるなよ」

「たり前、だっ!」

「ごおっ⁉︎」


 ヒューズさんは納得して後ろへと下がった。

 その際にエルダースノウマンが手のひらでこちらを押し潰そうとして来たのであえて飛び、避け側に奴の右人差し指の第一関節部分を切り落とした。

 ここいらで挑発でもしとけば俺に集中するかな?


「おいっ!ウスノロの猿公(エテコウ)!こっち見やがれ!」

「ごおっ‼︎」

「うおっと!」

「ごおぉぉぉっ!」


 漫画で読んだ台詞を思い出したので言ってみたが成功したようだ。ていうか通じるんだ。大声で作戦言わなくてよかったぁ。

 拳を振り上げて攻撃して来た。それを難なく避ける。

 その後はエルダースノウマンのひたすらのラッシュが続いた。俺がいるところに拳を落としての繰り返しなので地面が(雪だけど)あいつの拳の形をした穴だらけになった。

 怒った最初は攻撃が単調になるので避けやすい。そこは人間も動物も変わらない。


「はあぁっ!」

「ごおっ⁉︎」


 ラッシュで隙だらけになった背をファフスさんが槍で突きをしたようだ。


「ごおぉっ!」

「っと、危ねぇ」

「ファフス、次はおまえだ!代われ」

「あいよ」


 そう言ってヒューズさんがファフスさんの背後から出てきた。それと同時にファフスさんが後ろに飛んだ。


「ふっ」

「ごおぉっ⁉︎」


 ヒューズさんが代わりに入ったと同時に拳を突き出した。するとエルダースノウマンが数歩下がった。

 どうやらあれを使ったらしい。しかし石壁を壊すほどのパワーがあるのに後退りするだけとは、やはり高ランクの魔獣だけはある。


「ごおぉっ!」

「っと」

「ごぉぉぉ...ごぉっ!」

「またかよっと」


 エルダースノウマンが視界に入った俺に拳で攻撃して来たがそれ軽く飛んで後ろに避ける。

 少し貯めたかと思えば再び同じ攻撃を繰り出して来たので同じように避ける。


「なっ⁉︎」


 拳の攻撃は避けた。しかし拳が地面に着いた際に俺の方目掛けて雪が飛ばされた。俺は顔を腕で、胴体を片脚を上げてガードする。

 ジャンプしたので雪の威力に押され、3メートルは飛ばされた。

 痛ぇ。雪だけだったのに当たったところがジンジン痛む。

 東は気がつかなかったが僅かに拳を突く際の角度が先ほどからの攻撃とは変わっていたことをヒューズは雪に映る影だけで理解出来た。


「ごおぉぉぉっ!」

「....⁉︎」


 俺を見失ったらしくエルダースノウマンは辺りをキョロキョロしている。時折平手で雪をひっくり返してもいる。その時、エルダースノウマンのあるところを見て俺は驚いた。

 あいつの切り落としたはずの右の人差し指が元に戻っていること。そして、今まで与えていた傷跡も全てが消えていることに。多分背中の傷跡も同じだろう。

 どうやら核を砕かないといくらでも回復されてしまうようだ。


「ヒューズさんは右を、俺は左を」

「...ヘマするなよ」

「当然っ」


 そう言って互いに反対の方に走り出す。

 まずは両側に回っての撹乱(かくらん)でどちらに攻撃を繰り出して来るのかを見る。


「ごおぉっ!」

「んっ」

「はあぁ!」

「ごおっ⁉︎」


 俺が攻撃の対象になったので横に避ける。ただこの雪ではエルダースノウマンも俺を見失う可能性が高いので、振った拳が当たらず、あいつの蹴りや死角に入らないところに勘で見極めて内側に入って避けた。

 そして攻撃を俺に向けたことで隙が出来たので背後からヒューズさんがうなじ辺り。頸椎(けいつい)と呼ばれる骨に強い衝撃を与えると目眩(めまい)や吐き気、手指の痺れなどが起こる。

 エルダースノウマンを見ると身体がフラついている。どうやら効いたようだ。


「キリっ!今だっ!」


 俺はそう大声で叫びながら懐から雷光核を取り出し、魔力を多めに流してエルダースノウマンの核目掛けて投げる。

 火炎核を使ってもよかったのだが、万が一エルダースノウマンに引火してしまうと最悪の場合水蒸気爆発が起こってしまう可能性があったのでやめた。

 

「っん!」

「ごぉっ⁉︎」


 エルダースノウマンの短い悲鳴が聞こえたかと思うと隣から雪煙が舞ったので視線をそちらに向けるとキリが剣を構え直した。


「ごおっ...ごおぉぉぉ....ごおぉおぉぉおぉ...!」


 エルダースノウマンが叫び出したので思わず視線を向けると胸の紅い核の近くを抑えながら叫んでいる。

 よく見ると核の真ん中くらいに割れた跡がある。どうやらキリがやってくれたようだ。

 割れた跡に亀裂が走り始めた。


「ごおぉぉおぉおぉぉ...ごおぉ...おぉぉ...ごおぉぉぉぉぉ!!!!」

「「「⁉︎」」」


 パキンッとガラスの割れた音が響いたかと思うと核が飛び散った。そしてその核が雪の上に落ちると地面へと潜る。

 すると徐々に雪が盛り上がり始め、それはやがて知っている形になった。今も他のみんなが戦っている魔獣。スノウマンだった。

 それが何体も何体にも増える。


「これが...集隊...」


 ティアさんから聞いていたエルダースノウマンの固有能力が頭を()ぎった。


「ごおぉぉっ!」

「きゅう...きぎゅう....ぎゅうぅ!」

「「「「「「ぎゅうっ!」」」」」」


 スノウマンたちが例の凶暴化の姿に変わりあちらこちらへと駆けて行った。もちろんこっちにも。


「くっ」


 5体のスノウマンが俺とキリ目掛けて走って来た。

 俺も剣を構える。

 大半は俺が倒さないとな。キリは迅速を使ったばかりだし。


「ぎゅうっ」

「...まず1っ。次っ....」


 飛んで爪攻撃をして来たスノウマンの爪を切り落とし、そのまま剣を押し切って上半身と下半身を別れさせる。そして頭から股へ、次に首から左脇腹(少しズレたけど)、最後に鼻あたりを真一文字で切って1体目を終わらせる。

 休む暇なく次のスノウマンを倒しに行く。


「ごおぉっ!」

「ぐふっ⁉︎」

「ぎゅうぅっ!」

「ぎゅうっ!」

「くっ⁉︎ぐっ、邪魔だ!」

「ぎゅぅっ⁉︎」

「えっ!」


 5体目のスノウマンを倒したかと思えばまだまだ襲いかかって来たスノウマンたちに集中していたため後ろからの攻撃に反応出来ず、もろに喰らってしまった。

 数メートル吹っ飛ばされたがなんとか立ち上がれた。しかし呼吸を整える間もなく近くにいたスノウマンの爪攻撃を喰らいそうになったがそれを腕で受ける。

 しかし2体いたようで背中を切られてしまった。痛みに耐えながら前にいたスノウマンに横蹴りをお見舞いした。蹴ったスノウマンはかなりの距離まで飛んで行った。

 さらに腰を振って後ろにいたスノウマンを左脚から右目を超えて真っ二つにする。

 雪へと姿を変えたスノウマンから出てきた核を踏んで粉々にする。


「はあ、はあ...いってぇ....」


 そう言いながら治癒核を取り出して傷を癒す。やはり一番痛むのはエルダースノウマンに殴られた方だ。今もまだ痛みが走る。


 周りを見回してみるが、やはり他のところにもスノウマンが数体、ニーナとサナ、リリーの3人のところには戦っているやつと近くで俺らを探しているやつ合わせて十数体はいる。

 ヒューズさんもスノウマンを倒しながらエルダースノウマンと戦っている。

 近くにいたスノウマンを殴り飛ばしたかと思うと上からエルダースノウマンが拳を振り下ろした。


「ヒューズさん!」


 しかしヒューズさんは後ろに飛んで拳を避けた。

 エルダースノウマンが拳を退けるとヒューズさん目掛けて攻撃して来ていたスノウマンが雪へと変わるのが見えた。

 まるで見えていたかのような動きだ。

 他のみんなも苦戦はしているが倒せていない訳でもなければ大怪我などを負っている人もいなさそうだ。

 俺はそれに安心しつつも、胸の核を砕いたにも関わらずピンピンしているエルダースノウマンについて考える。

 魔眼には核の数は書かれていなかったが、複数あればステンチスライムの時のように表示されると思う。つまりやはり核は一つということ...


「ならどうして倒せなかったんだ?」


 俺は訳が分からず髪を()(むし)る。


「ぎゅうぅっ!」

「ふんっ...ん」


 横から切りかかって来たスノウマンの首を跳ね、雪の姿になり転がり出てきた核を踏んで粉々にする。

 とりあえず今分かっていることをまとめよう。

 核は一つ。しかしその核を壊したがエルダースノウマンは倒せず、むしろこちらが不利になった。


「.....待てよ、もしかして」


 俺はそう思い少し魔眼の魔力を減らして遠くにいるエルダースノウマンを見る。遠いので少し見難いが、俺が思った通りだった。

 最初から魔眼にも書いてあったのだ。「塊の中に核がある」っと。つまり俺らが壊そうとしていたのは核だったがエルダースノウマンの核ではなかったと言うことだ。

 そうと分かればかなり大変だが勝ち筋は見えた。早速ヒューズさんとキリに伝えないとな。



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