天罰、そして崖際
『他の者を盗み見る不届き者よ。汝に罰を与える』
しばらく待っていると返事が頭の中に響く。
ようやくまともに用件を聞けた。
しかし罰を与える、か。盗み見るっていうのは『千里眼』を使っての行為を咎めているのは間違いない。
そこは良い。実際その通りなのだから。
天罰なら受ける。他人のプライバシーを侵害する行為なのだから犯罪だし、今度死んだらそれでしょっ引かれるだろう。
ただそれを“今は”されたくないというのが問題だ。
どんなことをされるかはまだ分からないが、このゲーテルという神様がこの世界の神であり神様と同じことが出来るのだとしたら。
下手をしたら転生したことをなかったことにされかねない。
元々は予定になかった死だったから特別にと言われて、もう一度与えられた生。
そしてそのお陰で皆に出会えたし、自分に出来る内で冒険者として活躍出来た。
この人生は楽しめた。それは皆がいたからだ。
だからせめて今回の件だけでも終わらせてから天罰を受けたい。
もちろん罪人が何を言っているんだって言われるだろうが、これは俺が悪いのであって皆は関係ない。
だから彼らだけは見逃して欲しい!
『申し訳ありません、ゲーテル様! ただどうか今回の冤罪の件を解決するまで待ってはいただけないでしょうか! 必ず十日以内に解決してみせますので、何卒お慈悲をお願いします!!』
ダメ元で懇願する。
天罰の先延ばしなんて聞いたことのない頼みを神様は受け入れてくれるだろうか……
『が、機会を与えよう。まずはその場の罪人を殺せ』
これは交換条件、か? しかし神が人を殺せとは穏やかではない。
ただ神話などでは神が人を殺す話もあるのでない訳ではない。
それに自分が直面するとは……
──その場にいる者?
神の言葉に違和感を感じる。
俺のいる場所。つまり牢内にいる者をってことか?
それともまさかこの階層にいる犯罪者を全員⁈
さすがにそれは無理だ。それにそんなことをすれば今度こそ言い逃れ出来ずに終わる。
というかこの状況がかなりマズくないか?
皆を救うためにはまず首長と話をして誤解を解かなくてはならない。
だというのにその交渉をしてくれるはずのブライアンは俺のいる牢の前で眠っている。
これは冤罪だと証明する必要があるから本当の犯罪を犯す訳にはいかない。
いや、まあ、プライバシーの侵害はしちゃったけど、それは首長たちにはバレていないので今は考えない物とする。
しかし神様にはバレており、それにより天罰を受けそうになっている。
それを許してもらうにはこの場にいる犯罪者を全員殺さないといけない。
……どうしようもない状況だな!




