念話、そして無視
とりあえずしばらくはこのまま待ってみよう。
これがこいつの能力なら、待っていれば何か別の接触を図ってくるだろう。
それとどうして観ているだけの俺を二回も探知出来たのかを知りたい。
「……」
体感十五分程経ったが彼は特に何もしてこない。
予想が外れたな。
相手が何かしてくれないと情報を得られないからどういう能力なのか想定出来ない。
こうなるとこっちからアクションを起こすしかないのだが、何分距離が離れ過ぎているので何も出来ない。
『水流操作』で水を送ろうにも直通は無理だし、『千里眼』や『魔眼』は観ていることしか出来ない。
相手がどういう存在なのか分からない以上ゲートも使いたくない。
「(うーん…………あ! 念話に近いなら念話と同じ様に返せたりしないだろうか?)」
もしそれが可能であれば彼の目的が判るかもしれない。
それに出来なかったとしてもそれで神様の方が反応してくれれば得だ。
なんで応答で来たのかと問われれば「なんとなく」とでも答えて誤魔化す。
『お前は誰だ』
念話を使用する。
どうなる……?
「……」
数分程待つが反応はない。
「(やっぱりダメか……)」
目の前の男はもちろん、神様からの反応もない。
少し期待していただけに残念である。
『──我はゲーテル。神である』
「っ!!」
諦めかけた時だった。再び頭の中に声が響く。
成功した!
念話と同じ要領で語りかけることが出来た。
しかし……
「(神だって? 目の前の男じゃなかったのか)」
またしても予想外の事態が起こる。
彼の能力だと考えて、この世界の神からという選択肢は外したんだけど。
まさかそっちが正解だったとは……
しかしこの世界の神がなんでこのタイミングで声をかけてきたのかは謎だ。
『神、ゲーテル様。私に何か用でしょうか?』
さすがに神様と分かったのだから敬意を欠く訳にはいかない。あの神様の方は敬意を払う必要がないが。
「…………?」
しかししばらくしても返事が返ってこない。
あれ? もしかして回線悪い?
などとボケつつももう一度尋ねてみる。
『ゲーテル様。私に何か用でしょうか?』
念話で返事を送るが、やはり返事が返ってこない。
なんでだ?
『我はゲーテル。神である』
と思っていたら再度声が頭に響く。
さっき聞いたよ。念話状態だと聞き漏らし難しいから二回も言われなくても大丈夫だ。
『はい。それでゲーテル様が私になんのご用でしょうか?』
さすがに三度の質問となると少々イラついて雑に返してしまった。
『我はゲーテル。神である』
「っ」
しかし相手はこちらの質問を無視して自己紹介を続ける。
その返しに限界を迎える。
『だから分かりましたって! そのゲーテル様が俺になんの用かって聞いているんです‼︎』
だから思わず叫ぶように尋ねてしまった。
敬意なんてあった物ではない態度だが、こっちも会話が成立しないことにイラ立っているのだ。
文句があるなら会話をして欲しい。
それくらいあの神様ですら出来るのだから。




