判明している、そして条件
「……治療、か。やっぱりあいつの言ってた通りか」
ぼそりと呟いたつもりらしいが聞こえている。
彼の独り言はどうも聞き取れる。
あいつ……恐らく首長のことか? しかし彼女が言っていた通りとは一体なんだ?
言うタイミングとして先程二人で話していた時だろうけど……やっぱり読唇術を学んだ方が良さそうだ。
「坊主」
するとブライアンは真剣な表情を浮かべる。
親戚の叔父さんの様な感じで接していた態度が急に真面目な雰囲気に変わるとこっちまで背筋を正そうとしてしまう。
痛くて出来ないけど。
「俺たちはお前の味方だ。首長も怖ぇけど頼りになる。だから俺らを頼っちゃくれねえか?」
「……なんの話だ」
「坊主が眼の、それも遠くを見る能力なのは分かった」
「っ⁉︎」
なんで『千里眼』のことがバレたっ?
まさか能力が解る能力とかか? いや、だとしたら敵になるかもしれない俺にそう捉えられることを伝えるはずない。
子供だから侮った? それもないか。彼らは俺を「桐崎の所にいた謎の子供」と考えているはず。
ならそんな子に自分たちの情報は渡さないはず。
……違う、あえてか? あえて教えることで自分たちを信用させたいと考えている。
うん、それなら教える理由も分かる。
つまり言っていた通り自分たちを味方だと思わせたい──信じて欲しいのだろう。
「それで何を見たかは言わなくて良いし、咎める気もねぇ。こんな状況なんだから他が気になるのは分かる」
読みが当たっているらしく、こちらの気持ちを理解してくれている様子を見せる。
そこまで言うのなら……
「だからここが安全ってことだけは──」
「分かった。信じよう」
「分かってぇー……欲し……え? 今、何って……?」
「だから信じるって言ってるんだ」
乗ってやる。その考えに。
その返しが想定外だったらしく、ブライアンはしばらく固まる。
しかしそれもほんの一瞬のことですぐに我に帰る。
「あ、ああ……信じてくれるんか。そうか。そいつぁ、ありがたい」
肩透かしを喰らったためか少しぎこちない。
残念ながらすぐに信じる気はない。
「ただその前に一つ条件がある」
「……条件?」
ブライアンが怪訝な表情を浮かべる。
「首長と話がある」
今度こそ誤解を解きたい。
元々信用しても良いと考えていたが、どうせならこれを利用しよう。
彼の人柄ならこっちの要求も聞いてくれそうな気がするし。
「……分かった。なんとかする。ただ、あんま期待すんなよ。首長忙しそうだからな」
……信用して欲しいんだよな? そんな頼りのない返事で良いのか?
目の前の男がどうしたいのか分からず少し戸惑う。




