来訪、そしてお礼
「……」
疑問が尽きないのにその答えは出てこなくてなった。
さすがに自問自答で解決に導くのにも限界らしい。当然だけど。
となると手っ取り早いのはもう一度十階層に『天眼』を送ること。
ただ相手がもう一度干渉してくるかは分からない。それに今度は何か仕かけてくるかもしれない。
しかしそんなことを気にしていては何も分からないままだ。
もしかしたら声の主が今回の件について何か知っているかもしれないのだから探っておいても損はない。
探る内容はさっきので問題ないはず。
強いて言えばベストの部分に「今回の件について知っているか?」も追加するくらい。
「(そうと決まれば──……ん?)」
一気に十階層まで『千里眼』を伸ばそうとした所でこちらに向かって来る気配を感じた。
もしかして首長か?
『天眼』をそちらに向けるとそこにいたのはブライアンだった。
首長ではないのが少し残念だが、それでも彼はさっき首長に報告を行なっていた。
だからもしかしたら仲介役に立ってくれるかもしれにない。
「おーい」
能力についてはあとでも探れるだろうけど彼はいつまでここにいるか分からない。
……それこそ首長みたいに途中で抜けられるかもしれないから、むしろ強気で自分の無罪を訴えた方が良いかもしれないな。
「おーい! ブライアンさん!」
色々と期待を抱いて彼を呼び止める。
俺の呼びかけに気がついたブライアンが、牢の前で足を止める。
「よう、坊主。元気そうで何よりだ」
ブライアンは、落ち着いた声音でこちらを向く。
この様に対して元気そうは悪意があるようにも思える。
「おかげさまで」
「にしても災難やったなぁ。まさか道中で襲われるなんて。さすがの俺も予想外だ」
予想外……やっぱりあれは彼らが企てた行動ではなかったのかもしれない。
もちろんそういう作戦なのかもしれないが。
ただもし彼らが警邏であるならそんなことをする意味が分からない。
『天眼』で覗いた首長の部屋にあった書類からはそれらしい情報は得られなかった。
さすがに三十メートル以上も離れた所から自分が覗かれている、なんて考える人間はいないと思う。
だから書類が偽装されていた可能性は低い。
……首長は「自分は警邏」と言った。
信じてみるのもありだな。
ただ部下とはいえ、このブライアンという男の考えは知っておきたい。内通者かもしれないし。
「こっちも色々なことが突然起こるのは予想外だったよ」
「……はは、だろうな」
お前らの訪問もその内の一つだけど、この様子だとそれは理解してもらえてなさそうだな。
「ま、こんなことを言うのもあれだけどよ。ここに居りゃあ安全だろうから心配すんな。屋敷にいた嬢ちゃんたちも従者も全員無事だ」
「治療までしてもらったのには感謝してる。ありがとう」
家では対処出来なかったキリの傷が処置してもらえた。
その部分に感謝しているのは事実だ。
あけましておめでとうございます。
今年も頑張って行きますので、よろしくお願いします。




