九階、そして危険
さらに視点を下に移す。
九階層は一つの構造は八階と同じく独房だが、今度は三人分程の余裕がある。
ただ床と天井までが離れており、今までは四メートル程だったのに対してここは八メートルも離れている。
そして離れた分だけ囚人と床までが遠い。
囚人のいる位置は床から四メートル離れた位置の足場のみ。
足場は八階と同じ広さしかなく、真ん中以外をくり抜かれたようにそれ以外の部分がない。ドーナツの逆版だ。
そこで首の枷は天井に、両の手の枷は左右の壁にそれぞれ繋がっている。
「(これ、一歩でも踏み外せば宙吊りだぞ……本当にここは刑務所なのか……?)」
今までとはまた別の造り、その異質さに恐怖を感じる。
構造はダンジョンの様に下へ伸びており、囚人の扱いは下へ行く程酷くなっている。
一体どんな罪を犯したからこんな場所に入れられるんだ?
囚人たちの罪状は分からないが、こんな所に入れられるということはサナたちに被せられている罪より重いのだろう。
殺人、でこの仕打ちは妥当なのだろうか? やり過ぎな気もするが……まあ、罪人への処罰なんて国によって様々か。
目の前の光景に適当な理由で片づけ、辺りの散策を始める。
九階は上階よりも一つの牢の面積が広く取られている。当然牢の数は上より少ない。
しかも収容されている数はさらに少なく二十人程。
上の八分の一だ。
しかしそれでもメルマンさんは見つからなかった。
「(ま、まだ下にいる……ってことか?)」
いや、いくら何でも下に置き過ぎだろ! たかが脱獄の協力者ってだけの、それの従者だぞ⁈
しかも同じ従者であるポールさんたちや婚約者であるサナたちよりもずっと下って!
どこをどうしたらそんな下に置く必要があるんだ⁈
こんな危険な所に置く必要が、どこにあるんだっ⁈
「……」
さすがに看過出来ない場所まで来ているため怒りが爆発する。
メルマンさんが、目の前の場所よりさらに危険であろう階下にいるかもしれないと思ったら抑えられなくなった。
この数時間の間に色々なことが起こり過ぎて情緒が不安定だ……
落ち着かないと。皆を助けないといけないんだから……
「(とりあえず次の階だ。次の階へ行こう)」
気持ちを落ち着けながら視点を下の階へと落とす。
「(……少し長いな)」
九階層から十階層に下りるまでの長さが二十メートルと今まで三倍もある。
この階の牢は上階とほとんど同じ造りだ。
しかしその面積はまさかの五倍。横だけで十メートルもある部屋。
縦はなんと十五メートルもあり、またしても下がない。
そして下には一匹の魔獣がいる。
かなりの期間投稿が空いてしまい申し訳ございませんでした。
リアルの方が大分落ち着いてきましたので、もう少ししましたら今まで通りの投稿頻度に戻ります。
お待たせして申し訳ございません。




