一階層、そして三階層
やっぱりこの事件に関して無実を証明する必要がある。
そうなるとさっきみたいに去られても困るから時間をしっかりと設けてもらわないといけない。
しかし首長がまたいつここへ来てくれるかも分からない。
いつか来るのを待つ、なんて時間はない。
自分から行くしかないのだが、結局脱獄になる。
「(はは。対処のしようがないな……)」
特に有力な情報を得ることは出来ず、リリーが助からないという悪いニュースだけが手に入った。
そして自分がこれ以上どうしようもないという現実も。
その悲惨な現実に落胆しつつ、『天眼』を一階層に下げる。
三階層と違いここは大きめの牢に複数の囚人が投獄されているらしく、そのせいで喧嘩をしている牢もある。
大体一つの牢に七〜十人いるが部屋の大きさは六人が定員だろう。
七人部屋はまだ余裕そうだが、十人部屋は窮屈そうで脚を伸ばせているのも二、三人だけだ。
明らかに囚人の量と部屋の大きさが合っていない。
三階は三人は入れる大きさだけど二人、もしくはちょうど三人しか収容されていない。
この差は階毎で何か決まった規則があるのかもしれないが、それにしても一階は収容量が合っていない。
「(しかも俺に関しては何故か一人だけだ。まあ、それはあとから追加するつもりなのかもしれないが)」
一階層全体を見回してみても、そのほとんどの牢が収容量を超えている。
そしてそんな一階層の広さは全長三百八十二メートル。
これだけの範囲で地下牢を作るのにどれだけの人員を割いたのだろう。
数十年、いや固有能力や魔道具もあるし数年で終わった可能性も十分にある。
ただ三階の広さも考えると一階層だけでも一年以上はかかると思うから、やっぱり三年はかかっていると思う。
二階層に視点を落とす。
ここも一階層と同様で定員六人に対して七〜九人と溢れている。
何か規則性があるのかと思っていたが、どうやら間違いだったらしい。
一、二階と三階で違いが大きいから規則性なんてないことが分かった。
全長は三百二十九メートル。
これだけ広い階なのに医療監房らしき場所は見当たらなかった。
そうなると残りは俺のいる三階層だけだが、ここに皆がいるなら首長を追っている時に気がつくはずだけど……
不思議に思いつつも三階層に視点を落とす。
この階で見ていないのは、階段のある場所から見て右奥。
しかし二百二十八メートル内になかった物があるとは思えない。ましてや医療監房がそこまで小さいとは思えない。
二階と三階の差は約百メートル。
……そう考えるとありそうだな。
数値的にはあり得そうに感じ始める。とにも角にもそこしかもうなさそうなので、そちらの方に眼を向ける。
しかし階段から六十メートルもしない所で壁に当たる。
「(え……行き止まり……? え?)」
想定外の出来事に困惑する。




