得た情報、そして無力
今の所国章を信じるなら彼女は本当に国の人間ということになる。
ただ警邏というのが真実とはまだ断定出来ない。
あ、いや国の人間が少なくとも確定なら王国騎士団と警邏のどちらかになる。それで王国騎士団がわざわざ「自分は警邏だ」と言う必要もないのだから警邏で合っている訳か。
「ならお姉さんを信じる」
まだ疑いがある以上完全には信じられないが、とりあえず今は信じる。
その上でまだまだ聞き出さないといけないことがある。
「ただその前に俺の仲間たちは無事なのか? 彼女たちに何かあったら……」
首謀者を見つけ出して例え国を敵に回してでも復讐してやる。
今回も規模がデカい。他国の貴族が絡んでいたかと思えば、自国の警邏が絡んでいるかもしれない事案。
それでも皆に危害を加えさせられるなら相手してやる!
だから早く彼女から情報を、皆の情報を引き出さないと。
「……安心しろ、危害は加えていない。貴様が心配していることは起こさせない」
しかし意外にもありがたい返事をくれる。
怪しんでいる相手でも危害を加えていないと聞くと少し安心してしまうな。
ただ「起こさせない」とはどういうことだ? 見張っている者たちが勝手に危害を加えないという意味か?
「それってどういう──」
「首長! ブライアン様がお戻りになりました!」
彼女の妙な言葉について訊こうとしたが途中で遮られる。
別の看守が報せの報告をしに首長たちが来た方角から駆けて来る。
「そうか、すぐに行く。子供、また何か思い出したら定期的に巡回している彼らに言え」
「ちょっ! まだ訊きたいことが!」
俺の声なんて聞こえていないかのように首長は足早に去って行った。
マジか。ほとんど情報を得る前なのに。
しかも今回に至っては俺のせいではないので尚質が悪い。
せめて皆がどこにいるかだけでも訊き出して……いや、そっちは最悪『千里眼』で探せるか。
となるとやっぱり本当の目的を探りたかった。
巡回している人に訊いてもそんなに情報は手に入らないだろうから、チャンスを逃したのが痛い。
投獄されている以上こっちから動くことも出来ない。しかも脱獄はやるリスクの方が高い。
「マジでどうしよう……」
現状を打開出来ない無力な自分に悔しさと怒りが湧く。
そういう能力がないのが辛い。こう言ったらなんだが異世界なんだし助けてくれる能力、もしくはそういう相棒的な存在が欲しい。
「って、そんな都合の良いことが現実に起こる訳がないか」
自分ではどうにも出来ず、あり得ない願いに縋ろうとした自分に思わず自嘲する。
……とりあえず今はこの包帯をなんとかするか。しゃべり難い。
口は治っているのだから取ってくれても問題なかった思うけど。自決させないためなのかもしれないが、邪魔でしかない。
しかし腕も包帯でぐるぐる巻き。おまけに動かそうとすれば激痛。
本当に色々と思うように行かない。
異世界に来てある程度は自分一人でなんとか出来ると思っていたけど、こういう状況だと何も出来ないな。
リリーの時も皆やフェーネさんのお陰で助けられた。
でも今は頼る人がいない。
どうしよう……




