信用、そして光る
警邏というのが本当だとしたら、まず脱獄はしない方が良い。
それと警邏が動いたということは前回のリリーの時のようにデマだけではないだろう。
そうなると今俺は身に憶えのない罪によって投獄されている。
これは冤罪ではあるが、じゃあ何故俺が協力者とされたのかが気になる。
思いつくのは「誰かが俺に罪をなすりつけた」だろうか。
そうなると一体誰が? となるが、それは彼女から探るしか今は方法がない。
そして警邏が本当ではないとしたら、彼女らは少なくとも後ろ盾がある大組織である可能性が高い。
でないとこれ程大きな動きを出来る訳がない。
そんな組織が俺を捕まえる。
なんのために? そっちも彼女から探るしかないが。どっちに転んでも面倒が待っている訳だ。
はは、最近ツイてないな。
皆の無事も気になるから、前者でないことを祈ろう。
彼女らが警邏でないのなら皆の無事を確保してから対処する。例えここが堅牢署だとしても脱獄して実行する。
あ、というか警邏だったら王様に頼めば助かるのか。腐っても国王な訳だし。
なら前者であることを祈ろう。
「本当に……警邏の人、なの?」
今の俺は子供だからそれっぽく訊いてみる。
怯えていて怖い大人に恐る恐る尋ねる。これなら怪しまれずに聞かれていると思うだろう。
しかしどういう訳か彼女の眉根が下がり、怪訝な表情を浮かべる。
「ああ、本当だ。安心して良い。君に危害を加える者はいない」
声音はさっきと変わらないが表情は元に戻らない。
何か変なことでも言ったか? まあ、良いや。この調子で訊き出す。
「でも嘘を吐いているかも……やっぱり信じられない」
「……この国章を着けれるのは国家の者だけ。これで良いな?」
自分が警邏だという証拠として首長は胸の国章の下を摘まんで、グイッと前に出して強調する。
確かにベガで国章を着けられるのは、王国騎士団と警邏だけ。
信用するならそれでこと足りる。
しかしそんな物で……
「信じられる訳ないって。国章くらいいくらでも偽装出来る。それだと信じられない」
日本でも警察のコスプレ衣装もあるし、警察手帳を作って偽警官が犯罪をした事件だってあった。
だから彼女の主張を信じることは出来ない。
ただそうなるとどう信じた物か……
「……ではどうしろと言うんだ? 貴様の言い分では私がどう言おうと認める気がないように見える」
彼女は少しイラついた調子で尋ねてくる。
彼女の言う通りではある。
しかしリリーを連れ去るためにやって来た偽の遣いのせいで疑り深くなっているので中々彼女の疑いを解消出来ない。
「国章は安易に偽造されないように特注品だ。それに階級にもよるが、我が国の国章には魔力を流すと微量に光る」
国章の説明をしながら首長が国章に触れると、薄っすらと光る。
おお、さすが異世界。刺繍にもそういう仕かけを施せるのか。
「これは昔のギルドの手法を取り入れているから賊が真似ることは出来ない。これで良いな?」
淡々と説明を終えた首長が睨みつけるようにして俺を見下ろす。
面倒を働いのは俺だが、そこまでうざがられるとは……




