心理戦、そして向いている
「そんなに訊かれても。こっちだって死にかけたんだ。だいたい能力者なんて知っても意味ないだろ」
最初に能力について説明して従順なフリをする。
これで話してくれるかは怪しいが、あと一個は能力について話して良いからそれで粘るしかない。
最悪の場合でもう一個出すか? いや、そうすると残り一個で後がなくなる。
だから是が非でもここで訊き出す。
「意味ならある。だから早く次を言え」
首長は俺の意見を無視して、変わらずに次を催促してくる。
「ないだろ。相手の容姿ならまだしも、能力だけ知ってどうする気だよ」
「……能力を知っておくことで次への対策が練られる。そして改善が出来る。例え次の襲撃があったとしても安全に移送出来なくては意味がないからな。これで良いか、理由は」
「ならなんであんな少人数で移送させた! あれさえなければ俺らはこんなことにはならなかった!」
こういう心理戦は苦手だから話をどう持って行けば良いのか分からない。
従順なフリで訊き出そうとしたが、この方法では少し手間取りそうだ。特に彼女相手では。
なので少し趣向を変えて「連行されたことに怒りをぶつける」方にしてみるか。
多少思っていることではあるし、何よりそっちの方が俺がここに連れて来られた理由も探れるかもしれない。
首長が家に来た時に言っていた罪状が「収監されているボアアガロンのボスの脱獄に協力」というもの。
いつ起こったのかも知らない内容で濡れ衣を着せられるのはごめんだ。
「確かに少人数だ。しかし実力は十分の者たちばかりだった。彼らの失態ではない……だから憶えていることは全て教えろ、子供。そうすれば必ず襲撃者たちを捕えると約束する」
「……」
悔しさと怒りで顔を歪ませる首長。
本気で怒っている様にも見えるけど、演技の様にも見える。
「あんたらにそれが出来るって言うのか?」
あの襲撃者は能力が厄介だった。初見でもだが、例え初めから能力について分かっていても対処をするのは難しい。
もし最初に喰らった能力をもう一度撃たれていたら死んでいた。
それだけの威力だった。
「してみせる」
言い切られてしまった。
あの時の背景を理解していない彼女だから言い切れるか。
「人の家を襲って来た無法な人間に相手出来る程簡単な相手じゃない。それにそんな相手は警邏がなんとかするだろ」
「……そうだ。だから私たちがなんとかするんだ。市民を守るのが私たちの仕事だ」
「は? なんでそうなる? お前らが来たからこんな目に遭ったんだぞ! そんなやつらに何が出来る!」
こっちの方が向いているな。言葉がスラスラ出てくる。
思っている分もあるからだろうけど話し合いより煽りの方が向いているな。
嫌だなぁ……
「……私たちは罪人から君たち国民を守るためにいる。それが私たち警邏だ」
「(かかった!)」
向いていたお陰か知りたかった内の一つをしゃべらせた。
ここからが大事だ。




