再来、そして話し合い
とりあえず治癒核で治療だ。
……そうだった。今、治癒核はないんだった。
「身体痛い」
この痛みから解放されたいのに。
そもそも身体を動かせないからどうしようも出来ない。治癒核も水儒核も取り出せない。
状況の悪さに頭を悩ませていると僅かに足音が聴こえる。
その足音は徐々にこちらに近づいて来る。
誰か来るな。
『千里眼』をその音のする方に向ける。
今いる檻のついた部屋と同じ物が左右に並ぶ廊下を頭以外の全身を革装備で身を包んでいる。
ただ胸にはベガの国章である翼を広げた白鳥の前に手持ち琴が左胸に刺繍されている。
そんな格好をした男が二人、長槍を手に彼らの背後にいる人物を先導している。
先導されているのは今朝俺の家に来た桃色の髪を後ろで結った、二十代ほどのタイトなスーツに似た格好をしたあの女だ。
確か首長って呼ばれていたな。
彼女がいて、檻のある部屋……独房。もしかしてここは彼女が出て行く前に言っていた「堅牢署」って場所か?
なら下手に出ると脱出ではなく脱獄になるな。
貴族相手でも面倒だったのに、国から追われるのはさすがに避けたい。
彼女がなんの首長かは知らないが、今度こそ誤解を解けば帰してもらえるだろう。
「おーい! 首長さん!」
こちらに気がついてもらうために彼女を呼ぶ。
「おーい」
何度か声を上げたことが功を成したのか、彼女らは俺のいる檻の前で止まる。
先導していた二人は横にズレ、首長が檻に一歩近づく。
「目覚めていたのか。気分はどうだ?」
こちらの様子を尋ねてくる。
「全身が痛くて最悪だ」
彼女の質問にちゃんと答える。
今朝はいきなりだったから反発してしまったが、今回は絶対に穏便に話を進めていく。
彼女がいるなら甲冑の連中に訊かなくても皆の居場所を訊けるかもしれない。
ただ俺が桐崎だと伝えても信じてくれなかったし、そこをどうするかだな。
「……そうか。随分としゃべり難そうだな」
「包帯が邪魔だからな」
「……残念ながらそれを外す気はない。その状態でもしゃべることは出来るだろう。答えてもらう。何があった?」
意外な質問に肩透かしを喰らう。
しかしなんのためにそれを訊く? 何か見られてはいけないものを見られたと考えている?
でなければ何があったかなんて訊く意味がない。
だってあれは彼女が襲わせたんじゃないのか?
彼女の質問の意図が読めず、二人の間に少しの沈黙が訪れる。
「何があったって言われても……襲われたとしか……」
どう答えるべきなのか分からず、結局ありのまま返すしかない。
申し訳ございませんが、多少の修正を加えますので二週間から最悪一か月ほど休載いたします。
また、それにより序盤の話が若干の変更になります事ご了承ください。




