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異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します  作者: りゅうや
第18章 堅牢署からの脱獄者
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急襲、そして瀕死

 

 一度だけ地震の震度体験で味わった震度五強の揺れ。それが唐突に起こる。

 それなのに全身に巡る衝撃は勢いよく壁にぶつかった時の様な強さ。それを前面、左右、頭上、背後という並びで強さを感じる。

 その衝撃のせいなのか熱中症でダウンした時の様に気分も悪くなる。おまけに浮遊感まである。

 気持ちが悪いっ。意識が、飛びそうだ……

 荒ぶる『天眼』には何かが動く姿は観えるが、何かまでは分からない。

 それが何か不明でいると視界に何かが映ったかと思えばさらに胸に衝撃を受ける。


「ヴォアッ⁉︎」


 その衝撃により口から何かが出た。

 なんだ……何が、起きた……んだ……

 口からは鉄の味とイガイガとした感覚、それと苦みがする。

 すると胸から何かを抜けたように身体が目の前に引かれる。

 バランスが……マズい……体勢を、整えな、いと……

 しかし上手く身体に力が入らず、それ所か脚すら動かせない。

 必然、身体は勢いと重力に従って地面へと持って行かれる。

 馬車の床にぶつかるはずが、何故か地面とキスをすることになる。

 身体の前面に地面に打ちつけた衝撃が走る。


「ぶぅっ‼︎」


 情けない声を漏らす。

 痛みは……鈍いな。軽傷かな……?

 いや、全身が痛すぎて全く痛みを感じていないだけか。


「(あー、この感じ少しだけ憶えがある。あの子を助けた……異世界こっちに来る要因になった時と同じだ……)」


 少年を助け、ダンプカーに轢かれた時の衝撃と痛み。地面に打ちつけられ、立ち上がろうにも身体には力が入らない全身の脱力感。

 そして意識が薄れていく感覚。

 全てに憶えがあった。


「(死ぬ……の、か?)」


 身体に寒さを感じ始める。


「(また……死ぬのか?)」


 見えていた世界の色が消え、視界が黒に覆われて行く。

 それと同時に夢のように流れる地球あっちでの日々。


「(また、蘇れるかな?)」


 決して裕福とは呼べない家庭で、早くに父を亡くし母や家計のためにバイトの毎日。

 そして母を亡くし親戚に預けられたがやや余裕はあれど変わらずのバイトの毎日。

 友人と遊ぶ時間を取る事は出来ず、学校で話す程度。

 そんな自他共に幸せとは呼べない人生を見せられる。

 強い睡魔に意識が吸い込まれていく。


「(置いて……逝く…………皆を……)」


 しかし辛うじて残った意識が現実を見せてくる。

 否、脳が、身体が、本能が、魂が見せてくる。

 異世界こっちに来てから歩み始めた新たな人生を。

 東に親切にしてくれたエネリアの街の住人たち。ダンジョンでの戦闘。

 王様が神様と知って帰るとグラルドルフとの戦闘。

 彼からの依頼を受けアルタイルへ行き、髪飾りを見つけて、ステンチスライムの激臭に悩まされて、水浴びをしていた所を覗いてしまい殴られたこと。

 王様から家をもらったこと。

 頼まれてアンタレス王国へ行ったら男に追われていて、追いかけていたら誘拐されて、貴族の家に一人で乗り込んだら腕が爆発したこと。

 今度はギルドマスターから頼まれて巨獣のエルダースノウマンとの戦闘。

 アルタイルで行われた大会に出場して負けたこと。

 発情期を知らなくて大変な目に遭ったこと。

 何故か金髪の美少女に命を狙われ殺されかけて、指名手配されて、サキュバスと戦闘になって、アンタレス王国へ行ってデタラメな魔具に大変な目に遭った。

 毒矢で倒れて、治らない魔具の攻撃を受けて、ダンジョンへ向かうはずが変な連中が来て──


「…………」


 そこにはおらず、聴こえないはずの声が聞こえる。


「東」


 優しく。


「アズ、マ」


 弱く。


「アズマ!」


 力強く。


「アズマさん」


 静かに。


「アズマ」


 はっきりと。

 彼の名を呼ぶ大切な者たちかのじょらの声。


「(──ダメに)」


 重たい瞼を上げ、力が入らなかった身体に無理矢理にでも力を入れる。


ダメに決(ずぁうぇにぎ)まって(うぁっで)()(ぶぁ)(ぼぉ!」


 重く、痛む身体を起こす。



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