再念話、そしてルート
時間が出来たので、もう一度神様に念話を送る。
『これはどういうことなんだ?』
この状況について尋ねる。
しかし少し待っても返事が来ない。
もしかして神様に何かあったのか?
……いや仮にあの変態に何かあっても自力で対処が出来そうだ。
一応は神様なのだから。
あるとしたら神様単体ではなく王城で何かあったという方が可能性として高い。
クーデターでも起こったのか? でもそんな動きがありそうなんてポールさんから聞いていないけど。
とりあえずクーデターがあるにせよ、ないにせよ、神様が今連絡出来る状況ではないのは確かなのだろう。
それはそれで一大事な気はするが、こっちもどうにかしなければならない状況なので助けに行くことは出来ない。
こっちは仲間の安全が最優先なのだから。
そういえばサナたちはどうなったんだ? もう出発したのか?
『千里眼』を家の方に向ける。
……いない。さすがにもう出たのか。
どこにいるのか探すために『天眼』で王都上部を見渡す。
「っ⁉︎」
は? なんで? なんでユキナたちは真っ直ぐ堅牢署に向かっているんだっ⁈
『天眼』で観えたのはユキナたちが乗る馬車が、俺の家から城下町を通って堅牢署に向かっている光景だった。
ルートが違う。なんのために? 別の目的? なんのために? 向かう? 危ない?
頭の中に疑問が湧き上がる。
しかし頭ではまだ疑問しか湧いていないのに身体は既に動き始めている。
口の中からゲートリングを吐き出そうとしている。
「大丈夫?」
「!」
吐き出そうとしていたタイミングで優しい方の女が近寄って来た。
その襲来に口を慌てて閉じ、出かけていた物をギリギリの所で阻止する。
あっぶねっ! 急に話しかけるなよ!
「吐きそうなら早く言え。ここで吐かれるのは叶わん」
荒い方の女も心配して声をかけて来る。
あ、なるほど。そういうことか。
衝撃映像に顔つきが険しくなり、さらに下を向いて口を開けだしたから嘔吐すると考えたのか。
「眠くてな。ただの欠伸だから気にするな」
適当な言い訳で誤魔化す。
今はこっちよりもユキナたちの方だ。
幸い声をかけられたことで焦る思考が止まった。
別のルートで連れて行かれたのには驚いたが、恐らく彼女らに危険はないだろう。
街中で何かを起こさないとも限らないがそれなら少なくとも俺を連れ出した時点で出来たはず。
あ、いや俺を俺と認識していない状態だから、どこにいるかも分からず、いつ襲って来るかも分からないのに屋敷で危害を加えるのは危険だから避けたのかもしれないな。
そうなると本当にユキナたちを襲うつもりなのか? それとも何か別な目的があるのか?
「トツゲキダ!」
どこからか合図がかかる。
それと同時に人の気配が、殺気に満ちた人の気配が増える。
しかしそんなことに対処している余裕はない。
合図が発せられたと同時に気絶するような衝撃に襲われたからだ。




