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異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します  作者: りゅうや
第17章 リリーの真偽
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副作用、そして後悔

 

 メルマンさんの言葉を待つ。


「それを聞いて安心しました」

「……え?」


 想定していたこととは真逆の言葉が返ってきたため、思わず顔を上げてしまった。

 そこには本当に安心したと感じ取れる程顔をほころばせているメルマンさんの顔がある。

 しかしこっちは何故彼がそんな顔を浮かべているのか分かっていない。


「え、あ、安心ってど、どういう……」


 困惑しているせいで言葉がたどたどしくなってしまう。

 そんな俺の意図を汲んでくれたのかメルマンさんはホッとした表情から、普段浮かべている優しい笑みを浮かべる。

 そして一瞬だけサナの方をチラリと視線だけで様子を確認してから話始める。


「旦那様は血液交換を行うと人体がどの様になるかご存じですか?」

「いや、知らない……」


 メルマンさんの質問に少し躊躇いつつ答える。

 その答えを聞いて軽く頷いた後に彼は続ける。


「血液交換、私たち医者はそれを血漿けっしょう交換と呼んでおります。血漿とは、血液の細胞以外の成分で、言うなれば血の赤くない部分とでも言いましょうか」


 血漿。聞いたことのない単語だ。

 血の赤くない部分というのは薄黄色の汁の部分などだろうか?

 そもそも血が赤いのは赤血球が多いからだったか?


「その血漿の部分に毒の有害物質があるので、それを交換するので血漿交換です。しかしこれを行うと当然人体に影響が及びます」


 その言葉に再び身体が強張る。

 やっぱり俺のせいか……


「血漿交換は薬では対処出来ない場合に苦肉の策として行うのですが、様々な副作用や合併症が起こります。症状の例としては頭痛や嘔吐、発熱、呼吸困難に感染症などです」


 呼吸困難や感染症なんて最悪死ぬような症状まで出るのか。

 ただでさえ毒で苦しんでいる彼女にそんな症状は追いうちにも程が──


「つまり今リリー様を襲っている症状はクロシオモ草の毒ではなく、恐らく血漿交換による副作用によるものかと思われます」


 毒だけなら薬でどうにかなったのに、面倒をかけてしまった。


「俺のせいで本当に申し訳ない!」


 もう一度頭を下げる。

 血漿交換によって感染症を起こせば、恐らく助けるのは困難になる。

 確かに血漿交換という別称は知らなかったし、どういう症状が出るのかも知らなかった。

 それにここまで医療が発展していることも。

 感染症にかかった場合、さっきのダンジョンの秘薬を取りに行く。

 いや、いっそ今から取りに行くか?


「あ、いえ。確かにそんな副作用や合併症はありますが、少なくとも原因が掴めたのですから対処は可能です! だから頭を上げてください!」


 メルマンさんはそう言ってくれるが、しばらくの間は彼にかなりの苦労をかける。

 やっぱり予定を変更してダンジョンに行くか? でもそうなるとキリが後回しになってしまう。

 ダンジョンが先かエルフの里が先か……あー! どっちだ‼ どっちを先にする方が良いんだっ⁉


「アズマ」


 どちらを優先するか、頭を悩ませていると今まで黙って様子を窺っていたサナに呼ばれる。

 普段より低い声音。そこからでも怒っているのが容易に分かる。


「あなた、もう少し冷静になりなさい」


 彼女の叱責は正しい。俺がもう少し冷静に判断出来ていればこんな結果にはならなかった。


「ああ……俺の詰めの甘さと判断の誤りが原因だ。冷静に対処していれば、違う結果になったのに……すまない!」


 今度はサナに向けてすぐ様頭を下げる。

 いつも出来ると思って、なんとかなると思って行動していたが、その結果上手くいったことの方が少ない。

 リリーと初めて会った時、ユキナが連れ去られた時。

 最善の選択が出来ていれば、公判なんて起こらなかったし皆も怪我せずに済んだ。

 エルフの里に全員で向かっていればサキュバスに接触せずに済んだ。

 いや、それも公判が起こらなければ行かなかったかもしれない。そうなっていたら、危険な目に遭うことはなかった。

 全部、俺が間違えたから……


「最悪だ……」


 掠れるような声で呟く。

 目尻が熱い。悔しさを堪えたいのか、奥歯を強く食いしばる。



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