視点、そして理解
注意:視点変更
ゲートを潜り家の玄関へと出る。
周りには誰もいないので、『魔眼』を使い皆がいるであろう場所へ向かう。
その間にゲートでズボンを取り寄せる。服は……今は後回しだな。とりあえず自分の下着を紐で固定する。
それにしても小さいと普段見ている家の中ですら別の場所に見えるな。
辺りを見渡してみると、どこもかしこも大きい。それに違和感を覚える。
そんな感覚を抱きながら霧を辿って行けば医務室に全員の霧が漂っている。
うーん、微妙に届かない。扉に身を預けて背伸びをしても指があと少しで届かない。
仕方がないので新しい水儒核の欠片を宝物庫から取り出して、水をドアノブに絡め凍らせる。
それを引いてドアノブを下げる。
中に入ればリリーとキリ、サナがベッドに横たわっている。
幸いな事にニーナとユキナは彼女らほど大きな負傷は負っていないのと先に戻っていたため既に傷は治癒核で治されている。
そして傷が治った二人はメルマンさんの手伝いをしていたらしく、手にはタオルや包帯、薬などを持っている。
そこへ俺が入ってきたため彼女らの視線がこっちに向く。
「えっと……ボク、どこの子ですか? ここは今、お怪我をした人がいるから入っちゃいけない場所なんです」
そしてニーナが困惑の表情をやや隠しながら笑顔で止めてくる。
「ニーナ、俺だ。東だ」
そんな彼女に俺であることを伝える。
しかしそれをまともに受け入れてくれるはずもなく、さらに苦笑いを浮かべる。
「ええっと……」
「ニーナ。こんがらがるのも分かるけど、その子が言っていることは本当よ」
どうしたものか悩んでいるニーナに、一部始終を見ていて事情を知っているサナが助け舟を出してくれる。
しかしそれを受けてもなお理解が追いついていないニーナとユキナ。
反応がない所を見るにリリーとキリは眠っているらしい。
とりあえず分かりやすいだろうから『ウォーミル』を見せる。
ついでに『水流操作』で戦闘中に見せていた氷の剣も作ってみせる。
しかしそれを見た二人は、まだ納得の行っていない様子。
そもそも固有能力は同じタイプの能力がいくつかある。だからたまたま似た能力の少年が現れたと考えることも出来る訳だ。
うーむ、他に信じてもらう方法は……
身分証とかあれば良いのに。
「戦闘中にどういう訳か幼くなって今はあの姿だけど、彼はアズマで間違いないわ」
再び悩んでいるとサナが状況をつけ加える。
「えっと……アズマさん、で良いんですよね?」
そんな彼女の説得と一応の能力からとりあえず理解はしてくれたらしく、戸惑いながらも受け入れてくれた。
今一度の確認の際に僅かにニーナの鼻がひくついた。
「ああ。俺もどうしてこうなったのかは分からないが、今はそれよりもリリーの状態について知りたい。メルマンさんはどこに?」
部屋の中にメルマンさんはいない。
霧で追うよりは彼女らに訊いた方が早い。




