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異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します  作者: りゅうや
第7章 アンタレス王国〜ユキナ奪還〜
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テレポート、そして結界

 

 右肩から走る痛みに耐えながら東の視界に映り込んだのはこちらを心配そうに見つめている王様とトールの姿だった。


「んっ.....ぁっ.....」

「.....」

「....?」


 王様が無言で俺の額に右の人差し指を当てる。

 するとどうしたことか。先ほどまで激痛が走っていたはずの右肩からは痛みを感じなくなった。右肩を見ると袖が血で赤く染まっている。しかし、先ほどまで大量の血が垂れていたにも関わらず、それすら止まっていた。


「....?」

「私が血と痛みを一時的に止めたんだよ」


 俺がわけも分からずいるのを察したのか王様が教えてくれた。

 俺は少し安堵の息を漏らすがすぐにユキナを探す。ユキナは俺と王様との間で眠っていた。相変わらず魘されている。


「東!」

「⁉︎」


 背後から聞き覚えのある声が聞こえ、振り返るとそこにはアンタレス王国の下民エリアにいたはずのキリたちがこちらを驚きと心配そうな顔で見ていた。

 4(・・)は急いで東の元へと駆け寄り、東の右腕と魘されているユキナを見て、さらに驚く。

 しかしキリたちは俺の腕のことやユキナのことを聞きたいのをぐっと堪える。彼女らの瞳には「ユキナを助けてあげて」。俺にはそう語られているように思えた。

 そして彼女らも、否、ここにいる人全員が同じ気持ちであった。

 俺は立ち上がり王様、....いや、ここからは神様として頼ることにしよう。俺は神様の方を向く。


「王様。ユキナを助けたい。どうしたらいい?」

「....彼女の腕に装着させられている物が何かは知っているね?」

「だいたいのことなら」

「あれは装着者の魔力を使い他者が外せないよう結界が張られている。今のアズマくんにはあれを取り外すことは無理だね」

「.....(ギリッ)」


 神様の言葉に俺は不甲斐ない俺自身に怒りを抱いた。強く握り締めた拳からは血が垂れ始めた。


「だから私が道を作ろう。結界がある以上正面からの解除は無理だ。だから裏から外す」

「?詳しく教えてくれ」

「あの魔道具は精神を破壊する魔道具。しかし装着者が精神を維持することが出来ればあれは外れる」


 そして神様が一呼吸置いてから、


「つまりアズマくん。君が彼女の精神を彼女とリンクして戻してあげる。私はその道を作ろう」

「.....」


 えっと、神様の言ったことをまとめると

 ・今の俺ではこの結界は破れない

 ・しかしこの魔道具は装着者の精神が安定していると外れる

 ・それで今精神が崩壊しかけているユキナとリンク(多分俺の精神を神様がユキナに送ってくれる)してユキナの精神を元に戻す

 と、これで合っているのか。


「大丈夫。大体はそれで合っていますよ」

「そうですか」


 俺の疑問にはトールさんが答えてくれた。やっぱり慣れないな。


「....ただし、逆に失敗してしまうとアズマくんの精神もあの魔道具によって支配されてしまう」

「「「「⁉︎」」」」

「さらに悪ければ、アズマくんの精神がユキナくんの体内に閉じ込められ二度とアズマくんの体内へ戻すことが出来なくなるかもしれない。....それでも行くかい?」


 神様の言葉に全員が俺へと視線を向ける。俺は迷うしかなかった。しかしそう長く迷ってなどいられないのも分かっている。

 俺は決断を言うべく口を開く。


「...ああ。それでもユキナを助けたい」


 これが俺の初めから(・・・・)の答えだ。


「....分かった。すぐに準備をしよう」


 神様はそう言ってユキナに駆け寄りしゃがむ。神様にジェスチャーでしゃがむように言われたので俺もしゃがむ。

 そして先ほど俺にやったようにユキナの額に人差し指を当てる。続いて俺の額にも同じようにする。


「これで準備完了だ。後は、額同士を触れさせ合えば道は出来る」

「そうか....」


 俺は後ろを振り返る。後ろにはキリやサナ、ニーナに例の少年が俺たちを見守っていた。


「行ってくる」


 そうみんなに伝え、またユキナの方を向く。そして一呼吸を置き、目を閉じ、ゆっくりと身体を倒して俺の額とユキナの額を重ねる。

 ユキナ。今、助けるからな。

 額と額が重なった刹那、東の意識は途絶えた。

 東が目を開けるとそこは、薄暗い空間。そして周りには床や壁もなくぷよぷよと浮かぶ変な物体だけである。


「ここがユキナの中....」


 周りを見回してみるが、このシャボン玉のような、しかし透明ではなく中で白い霧のような物がパンパンに入っている物体以外は何もない。

 このシャボン玉のような物に触ってみようとも思ったが、変に行動をしてユキナが余計に苦しむかも知れないので我慢した。


『アズマくん。聞こえるかい?』


 頭の中から神様の声が聞こえる。どうやら念話は使えるようだ。


『問題なく聞こえる』

『周りにシャボン玉のような物があると思うけど触ってないよね?』

『ああ。これって一体何なんだ?』

『それはこの子の記憶』

『記憶?こんなのが?』

『気にしないでくれ。私の思い付きだから』

『あっそ...』


 この人(神様)は、こんな時でもこれだよ。


『言っておくが、そのシャボン玉に触るとこの子の記憶を覗くことが出来るがやってみるかい?』


 危ねー。さっき危うく触るところだった。


『何なら記憶をいじることも出来るぞ?そうするとその後の記憶が少し変わるけど』

『はぁ...俺は人の記憶を覗いて都合良く変えるような卑劣なことはしたくないんでね』

『...そうかい』


 神様は今の東の言葉に口角を少し上げた。


『そんなことはいいから、早くどうしたらいいのか教えてくれ』

『ああ、すまない。じゃあとりあえず下を見てくれるかい?』


 下はさっきも見たが暗過ぎて全く見えなかった。

 神様に言われた通りに下を向くがやはり暗くて全く先が見えない。


『何も見ないけど』

『まあ、とりあえず下へ行けば分かるから』


 俺は神様の言葉を信じて下へと向かう。行き方は泳ぐ?になるのかな。

 別に水があるとかではないのだが何故か俺は浮いていて下へ行くには泳ぐしか進めなかった。これも神様の思い付きってことだよな。多分。

 下へ行くに連れ暗闇が増していき、3、40メートルくらいからはもう自分が下へと泳いでいるのかすら分からない。


「...あ!そうか」


 俺は途中であることを思い出した。この世界に来てからだいぶお世話になっている固有能力。魔眼である。

 ここに入ってから魔眼が閉じられていたので忘れていた。

 俺は魔眼を発動させるために目に魔力を流す。しかしいくら目に魔力を流そうとしても、なぜか魔力が流れる感じがしない。

 いつもならすんなりと目に魔力を流すことが出来るし、流れている感じも微量ながらだが感じられていた。しかし今はそれを感じない。


「何で.....ああ、今の俺って精神だけの状態だったな」


 魔力は身体の方にあるので精神状態、況してやユキナの中にいるのだから俺の魔力がここまで来るはずがない。

 そう思うと目が覚めた時に魔眼が閉じられていたのも納得出来る。

 俺は納得したところですぐに下へと泳ぐ。


「...ん?」


 さらに20メートルくらい行ったところで急に明るくなり始めた。明るくなったと言ってもそんなに明るくはない。ほんの少し、薄っすらと5メートルほど奥の方まで明かるくなっている。


「...んぐっ⁉︎」


 さらに奥へと進もうとしたところで頭に何かが当たり身体中に激痛が駆け巡った。


「いってー....何だ?」


 左手を伸ばしてみると何か硬い物に触れた感触が伝わる。さらに手の届く範囲を触ってみるがどこも同じ感触だ。


「これは...もしかして壁か」


 もう一度触ってみたり軽く叩いてみるがやはり壁である。透明の壁が目の前にあるのだ。

 この壁がどこまであるのか確かめるために手を壁に付けながら壁に沿って下へ行ことうとする。しかしかなり大きい壁らしく、全然曲がらない。ただ真っ直ぐに伸びる廊下を触っているような感じがする。

 次は中を覗いてみる。多少の厚さの壁なら壊せるような気がするからだ。俺は壁とほぼキスをするのではないかと言わんばかりの近さまで近づいて中の様子を覗く。

 すると奥の方で何かが見える。

 俺は目を凝らしてそれが何なのかを確認しようとする。


「....な⁉︎」


 目を細めてようやく見えたそれに俺は驚きの声を上げる。

 透明な壁の奥。目を凝らして見えたもの。

 脚を抱えて(うずくま)っているユキナの姿が見えたのだ。


「ユキナ!おいっ!ユキナ!」


 壁越しに大声で叫ぶがユキナは全く動かない。この壁のせいで聞こえないのか?


「くっ...この!」


 ゴッ

 壁を壊そうと拳に力を込めて殴るが鈍い音がするだけで傷一つ入らない。それでも何度も殴り続けるが全く傷が入らない。

 拳に痛みすら感じないので殴り続ける。


「クソ!...何で壊れねーんだよっ!」


 息切れや痛み、拳からは血も流れない。


「このっ!ぐっ⁉︎」


 さらに殴り続けようと拳を振り上げるが突然身体が動かなくなる。


『落ち着きなさい、アズマくん』

『止めんな!ユキナがこの奥にいるんだぞ⁈こんな壁くらい、今すぐ壊してユキナを助ける!だからこの動けなくしてるのを解いてくれ!』

『....それは私の話を聞いてからだね。その壁は』

『話はいいから早く解いてくれって⁈その後でいくらでも聞いてやるから!』

『...@%#^(ボソ)』


 神様が小声で何かを言ったようだが今の俺の耳には届かなかった。


『っ....⁉︎』


 早く解いてくれっと言おうとしたところで声が出なかった。念話は心の中での会話だったはずなのだが、それでも声が出てこなかった。それしか言いようがないからだ。


『...その壁はこの子の心を閉じ込めている結界だ。今のアズマくんにはそれを壊すどころか傷すら刻めないだろう』

『⁉︎』

『当然と言えば当然さ。あくまで今のアズマくんはアズマくんの精神でこの子の中にいるのであって、この子の精神とは違う。アズマくんがいた世界で言うと3次元の者が2次元の者に触ることが出来ないように、アズマくんはその結界の先へは侵入出来ないんだよ...』


 東はただただ、神様に告げられたことに悲しみを、怒りを抱く。


『話はここで終わりじゃないけどね』

「...は?今の説明を聞いて、どうやってユキナを助けるんだよ⁈なあ。教えてくれよ...神様」


 それは念話を使うのも忘れるほど、心の底から思ったことだった。

 しかしそれがどうやって神様に届いたかは分からないが、神様は再び念話を送ってきた。


『だから君をこの子と同じ状態にするのさ』

「?」

『今は次元の違う状態だけど、私が同じ次元にすることは可能だ』

『⁉︎なら早く頼む!』

『....ただ』


 神様は少々ためらった後に、言葉を続ける。


『ただ、アズマくんがこの子と同じ次元になるということは、君もその結界に閉じ込められる可能性も大いにある。そして閉じ込められれば君は...もう自分の身体へは戻ることは出来ない。それでもや...』

『ああ、やってやる。ユキナを助けられるならやってやろうじゃぁ、ねぇかっ!』

『分かった。無事を祈るとしよう』

『ああ』


 祈るって誰にとも思ったがそんなことはどうでもいい。


「待ってろよ、ユキナ。今すぐ助けてやるからな」


 聞こえるはずのないユキナに語りかけ、『やってくれ、神様』そう頼むとほぼ同時に身体がまるでテレビの砂嵐のようになり始めた。若干の恐怖はある。

 そのまま恐る恐る壁に触れる。するとまるで掃除機のように俺の身体を吸い込み始めた。

 俺は抵抗する間もなく中へと吸い込まれる。そして...


「ぐっ⁉︎あぁっ....あ...たま....が。あた.....ま....がわ....れそ....うだ...」


 酷い頭痛が押し寄せてきた。本当に頭が割れているのではないかというほど激痛が走る。

 そして、頭の中に何かが流れ込んでくる。


「な....ん....だよ...こ.....れ....」


 頭の中に入ってきたのは記憶?というよりは黒くて(おぞ)ましい「何か」だった。

「何か」は小さな豆粒くらいのぶよぶよとしているような感じだ。そしてその「何か」が俺の記憶を喰い始めた。


「や...め.....ろ....」


 その「何か」は俺の言ったことを無視するかのようにして記憶を食べ続ける。そして「何か」は次第に大きくなり始めたことに気が付いたのは記憶を半分ほど喰われたくらいからだ。

 俺の記憶は神様が思いつきで作ったシャボン玉のような形をしている。それをむしゃむしゃと食べ続ける「何か」。

 そして1つの記憶を食べ終えたところでその「何か」は2つに増殖した。

 そして2つの「何か」は違う記憶を喰い始めた。食べる速さは先ほどよりも少し速く、また1つ記憶を喰い終わるとまた増殖し、また喰い始め、また増殖してを繰り返す。


「....ぁぁっ......」


 嫌だ!やめてくれ!動き回るな!喰うな!俺の大事な記憶を喰うな!

 記憶を食べられることの表現が思いつかない。頭の中のイメージがまるで俺の目の前で起こっているかのようだ。

 これが今ユキナを苦しめているのか?なら早く助けてやらないと。

 そう思いユキナに近付こうとして身体が止まる。


「....あ、れ?ゆきな....って誰だ?」


 ユキナの記憶が頭の中から消えた。


「ここはどこだ?早く家に帰って夕食を作らないと母さんが....母さんが...って、誰だ?」


 遂には母さんの記憶までもが喰いつくされ、頭の中が真っ白なのか真っ黒なのか分からないが、東の意識は薄れていった。



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