賭け、そして残念
「......なあ、ウェンベル殿」
「......なんでしょうか」
「先程汝は私を殺さず、捕らえると言っていたが、それは本当なのか?」
「......ええ、本当です。しかしだからと言って変な気は起こさないで下さい。必ずしも生かしておかなくても良いと仰せつかっていますので」
「ふん、汝を前に変な気など起こす気にもなれん。なんせこの国で、一番恐ろしい者に睨まれているのだからな」
「......そうですか。それを聞いて安心しました」
「そこでだ。生かしておいてもらえるのであれば、少しばかり私の願いを訊いてはくれぬか?」
「......考慮に値しない場合は、捨てさせて頂きます」
「ありがたい。私はあの小僧が殺される所がみたい。だからその瞬間までは、ここで観させてはくれんか? あの小僧の最期がどうしても見たいのだ」
「......今は時間がありますので、そのくらいであれば構いません」
「感謝する」
もう一度賭けに出てみて正解だった。
先程のモリアという男は任務を聞いていなかったがために危うく殺されたかけた。
しかしそこへ面倒ではあるが話の分かるウェンベルが現れた。
どちらも小僧を狙っている様子から見て、イケるとは思っていたが本当に通るとは。
それにしてもミドリとかいう女は小僧と手を組んだのではなかったのか?
それともそれは小僧を殺すための罠......
確かに公判中であれば奴らから武器を奪える。
しかしもし情報が正しければ、小僧には収納系の能力がある。
奴らがきた際に武器は所持していなかった。恐らく能力に入れているのだろう。
それをあの女が知らないはずない。そうなると本当に狙いはなんだ?
「......ただし先の願いを聞き届けるには、条件があります」
「条件......?」
「今現在、貴殿の兵が私達の邪魔をしています。然程問題はありませんが、少なからず支障が生じていますので、残兵を引かせて下さい。そちらもこれ以上兵を失いたいくはないでしょう」
「......そう、であるな。承知した。兵は引かせよう」
言い方に棘を感じるが、此処は素直に従う。
煮湯は後で返せば良い。今は堪える時だ。
「部隊長、若しくは副部隊長に兵を引き上げるよう伝えたい。よろしいか?」
「......構いませんが、少しでも妙な動きをした場合は即拘束、若しくは処刑させて頂きます」
「あの状態の部隊長では、汝をどうする事も出来ん」
小僧との決着がつき、巨漢の部隊長同様、地面に伏している女騎士。
アレらが動かなければ、副部隊長を探す......いや、適当に周りにいる騎士達に撤退と言って回る様に伝えれば良いか?
基本的にテヲロを連れているから私が言えば勝手にやってくれるので、この場合どうするべきなのかもう忘れてしまった。
良い加減テヲロから離れんといかんな。




