宿屋、そしてギルド申請
店長さんから教えてもらったように店を出て左へ向かう。
「あ、あった!」
質屋を出てから数分程歩いた所に「宿屋 甘味」と書かれた看板が視界に入る。
一階建てが多い周りの家々に挟まれる形で二階建ての宿屋甘味は建っている。
当然ながら横にも広い。質屋と同じくらいか、それより少し広い。
古くはないが新しい訳でもない。ただ外観だけ飾っておいて、中は酷いなんてこともあり得るだろう。
教えてもらった宿だからそういった点は大丈夫だと願いたい。
カランカラン!
扉を開けると鐘が鳴る。
「いらっしゃい!」
受付のような所の向こうにいる女性が作業の手を止め、こちらに顔を上げて大声で出迎えてくれる。
茶髪のショートヘア、赤色の服、水色のスカートの上にエプロンを着けている。
結構若い人だな。こういう所は夫婦で経営していると想像をしていたので、自分よりやや年上くらいの人が出てきたことに驚く。
宿屋の中は居酒屋のような造りになっている。卓は全て木のテーブルであり、丸太の椅子や切り株椅子が交互に同数で置かれている。
そんな卓が六組並んでいる。
入口の先に奥行きがあり、そこにいくつかのドアが見える。あっちが部屋かな。
店内を一望しつつ受付台まで行く。
「お泊りですか?」
「はい。えっと……とりあえず一ヶ月泊りたいです」
「はーい。それじゃあ三十日分で、小金貨三枚になります」
「ではこれで」
「はい、小金貨三枚。丁度いただきます!」
小金貨三枚……金貨に銀貨、小銀貨なんてのもあったな。
この服が銀貨八枚と小銀貨五枚。並びからして小銀貨の方が銀貨より貨幣価値が下。
その理屈で考えると金貨一枚で小金貨九枚がお釣りとして返ってきたから、小+〇〇が〇〇より下なのだろう。
そして小金貨の後に銀貨だった。
ただ何枚集めれば貨幣価値が一つ上がるのかが分からない。
この宿屋の一日で算術出来るかな?
「すいませんが、ここって一泊いくらですか?」
「え、銀貨一枚だけど?」
少し驚きと不思議な顔をされた。
ということは銀貨三十枚で小金貨三枚。つまり十枚で変化する訳か。
「えっと……これに名前をお願いね?」
「あ、はい」
店員さんから紙を渡される。多分名簿帳なのだろう。
俺は空欄の部分にスラスラと名前を書いて、店員さんに渡す。
「ではこれで」
「はい、ん……? 悪いんだけど、これは何て書いてあるんだい?」
「え?」
店員さんが困った表情で先程俺が書いた部分を指さして訊いてくる。
あ、しまった! つい癖で日本語で書いてしまった。
最初に見たような文字で書かないといけないよな。
「あ、すいません! つい癖で! えっと、あの代筆をお願いしても良いですか?」
「ん? 別に構わないよ」
良かった。
あっさりと了承されたことに胸をなで下ろす。
「桐崎 東で、お願いします」
「キリサキ アズマっと。これで受け付けは完了。それとアズマくんって呼ばせてもらうね? 私はこの甘味の亭主の娘でカナ・ベルグランドよ。よろしく!」
代筆終了と共に店員さん、カナさんは溌溂と自己紹介をする。
あの神様には下の名前で呼ばれると馴れ馴れしい感じがしたが、目の前の女性、カナさんにはあまりそんな感じはしない。
この差は一体……
「は、はい……よろしくお願いします」
しかしさっきまでと違うテンションに少しばかり狼狽えてしまう。
「早速だけアズマくんは、夕食はどうするの?」
「まだ決めてないですね。この街にはさっき着いたばかりなので、適当に済ませようかなって考えてます」
「じゃあ、うちで夕食にするかい? うちは泊まってくれている人には朝から晩までいつでもご飯を作るよ!」
「本当ですか! では、夕食をお願いします!」
初めての異世界飯!
食材や完成品は並ぶ露店でチラッと見た程度なので、実際に食べれる機会の到来にテンションが上がる。
外食も適当なタイミングで試したいけど、しばらくは節約だ。
「ええ、任せて! それじゃあ、夕食が出来るまでに部屋へどうぞ。アズマくんの部屋は二階の突き当たりから二番目ね」
「分かりました」
鍵は……なし、か。
カナさんは部屋の場所を伝えると厨房らしき裏へと消えて行く。
部屋の場所を聞いたので階段を上がる。
二階は全部が部屋になっているが、下の奥行にあったドアより数が少ない。
「えーっと、突き当たって二番目の部屋っと」
自分の部屋の前までやってくる。
木製のドアのドアノブを回して開ける。そう言えばこの世界ってドアノブはあるんだ。発展しているんだかいないんだか……
あ、でも明治の後期辺りには今のタイプがあったみたいだし、あっても不思議じゃないのか?
そう思いながら部屋へ入る。
「おお!」
思わず声を漏らしてしまう。
部屋は四畳半くらいの部屋で、左端の方に畳一枚分くらいのベット。そのすぐ側に二メートルくらいのタンスが置いてある。
最後にドアの対面に大きめの窓が取り付けられている。
一人暮らしってしたことがなかったから、ちょっと気分上がるな!
「そういえば荷物なんてお金くらいしか持っていないな。明日色々調達しないとな」
コンコン!
明日の予定を立てようとした所でドアが叩かれる。
「アズマくん! 出来たよ!」
「あ、はい」
早いなっ⁉ 部屋行かずに下で待ってた方が良かったんじゃないか?
内心ツッコミつつ部屋から出て階段を下りる。
とりあえず階段の近くの席を選んで座る。四人分の席を一人で使えるとは何と言う贅沢。
「はい。今日はカリ肉定食よ」
そう言ってカナさんは俺の目の前に料理の乗ったお盆を置いてくれる。
お盆には白米と味噌汁、いや肉とかも入っているから違うのか。近さでいえば豚汁とかか。
まあ、そんな汁物とどう見ても唐揚げにしか見えない料理が皿一杯に盛られている。
「おおぉ! い、いただきます!」
「いただきます?」
「(ん? もしかしてこの世界って食前の合掌とかないのか? まあ良いや! それよりも、唐揚げ、唐揚げ!)}
俺は箸……ではなく木で出来たフォークで久々の唐揚げを刺して口の中へと運ぶ。
サクッ! ジュワァァァ!
口に入れ噛み締めた瞬間サクサクの衣が破れ、中の肉の肉汁が溢れる。
もう一噛みすると、肉から再び肉汁が溢れてくる。サクサク、ザクザクの衣と噛めば噛むほど肉汁が口の中に広がる。それを何度も楽しむ。
喉の奥を細かくなった衣と肉が一緒に空っぽの胃袋へと落ちて行く。
次に白米だ。この世界にも白米があったのはありがたい。何せ白米と唐揚げは最高の組み合わせなのだから。
白米を口の中へと運び、噛み締める。もっちりとした柔らかな白米は噛むにつれて甘みを増して行き、さらに美味しさが増す!
次にこれだ。
器を持ち上げ汁を啜る。
「⁉︎」
ちょっと苦いけど鰹のような上品な味が舌を伝って脳を刺激する。さらに具材の味わいも混ざっている。
良い出汁だ!
肉や野菜はしっかり煮込まれていて、柔らかくなっておりそこに出汁が染みていてとても美味しい。
そして食してみて分かったけど、これ豚汁ってよりはすまし汁に近い気がする。
「はあー、腹減った! カナちゃん、今日の献立は?」
「今日はカリ肉定食よ!」
「「「「しゃぁぁーっ‼︎」」」」
一階の奥から体格の良い、筋肉の発達した男達がゾロゾロ出て来た。
そんな彼らがカナさんに今日の献立が唐揚げ、じゃないカリ肉だと知らされはしゃぎ出した。
「(まぁ、こんだけ美味しいんだし無理もないか)」
俺はその男達を無視して食ことを続ける。
うん、美味い!
…………
「ふぅ、ごちそうさま」
手を合わせて合唱をする。
辺りを見回すと先程よりも多くの人が集まって飲み食いしながら騒いでいる。まるで酒屋みたいだ。
「カナさん! ここに置いておくよ?」
「うん! ありがとう!」
俺は食器を受け付け台の上に置き、そのまま二階へ行く。
あ、お風呂どうしよう……って、そうだ。替えの下着とかもないや。
うぅ、昼過ぎまでずっと山下りしていたから服はともかく下着は汗で汚れているけど、仕方ない明日にするか。
今から出かけるってのもありだけど、疲労と食後で眠い。
よって寝よう。
そんな訳で部屋に着くなりベットに倒れるように寝ると、柔らかく沈んだ。
多少硬いけどベッドってこういう物でしょ。多分。
「あぁー……このベット、凄く、寝やす……い」
俺の意識は闇へと落ちていった。
______________
目を覚ませば、部屋の中が明るい。朝か……
朝⁉︎
「やば、バイト! 遅刻だ‼」
身体を起こせば見慣れない狭い部屋の中。
…………ああ、そうだ。死んで異世界に転生したんだった。まだその感覚が薄いから、地球での習慣が抜けない。
朝は新聞配達のバイトを二年半していたからすっかり習慣になっている。
ベッドから降り、少しシワのついた服を着替える。しかし脱ぎかけた所でその手を止める。
そうだ、着替えようにも替えの服がないんだった。
そうなると新品の服を着たまま寝たのが悔やまれる。
さて、どうしたものか……あ!
「そう言えばカナさん、朝食も作ってくれるって言ってたな」
よし、服のことは後回しにしてまず一階へ向かおう。
部屋を出て階段を下り、一階へ着くと十三人くらいが既に食ことをしていた。
気になるのは、半分以上の人達が防具着て食事している。え、なんで?
「はーい、アズマくん。今日の朝食はカスミドパンだよー」
「あ、どうも」
カナさんが運んで来てくれたカスミドパンとはまぁ、パンケーキのようなパンにハチミツのような物がかかっていて、見た目まんまパンケーキだわ。
「……ねえ、カナさん」
「ん? 何だい?」
「なんであの人達は防具を着けてるの?」
ついでに近くに武器もある。
剣や斧、槍。物騒だな。
「ああ、あれは皆ギルドで仕事をしている人達よ。冒険者」
「ギルド?」
ギルドってあれか? ゲームとかにある、村人からの依頼やモンスターの討伐クエストを受けて、達成したら報酬をもらうって言うあのギルド?
「そのギルドって、どこにあるんですか?」
「えっと、ギルドは──」
「はー! 食ったし行くか! カナちゃん、ここ置いとくぞ!」
カナさんにギルドの場所を訊いたタイミングで、一人の男が声を上げる。
その身には防具と武器が携えられている。恐らく今カナさんが言っていた冒険者の一人だろう。
四十歳後半くらいの彼は、袖なしのジャッケットのようなもの、しかも服の真ん中は切れていて十センチくらい離れている。そして丈が膝までの短パン。
「あ、うん! ……そうだ! ねえ、ちょっと待って!」
「ん?」
その彼をカナさんが呼び止める。
「この子をギルドに連れてってあげてくれない?」
「ああ、別に構わないぜ」
「ありがとう! じゃ、後はよろしく」
快諾してくれた冒険者のおっさんに感謝を述べて、カナさんは食器を持ってそそくさと受け付けの裏へ行く。やっぱりあっちがキッチンなのだろう。
「さて小僧、行くぞ」
「え……あ、はい」
おっさんは剣を持って店の扉を開けながら、俺に来るように促してくる。
しかし小僧と言われ慣れていなかったので反応するのに時間がかかった。
カランカラン!
小僧って……
てか、俺まだ朝食食べてないし。パンケーキも久々だから食べたかったな……
「ごめんなさい、カナさん! 今行くみたいなので、行きます! 俺の分は後で食べるんで取って置いてください!」
キッチンに向かってそう告げて、おっさんを追う。
______________
「おおぉ‼︎ ここがギルドか!」
ギルドは町中の中心にあるらしくて、甘味からだいたい一キロ半くらい歩いた所にあった。
ビルと見間違う高さ。だいたい高さ四十メートル、縦横は二十メートル程かな?
スカイツリーに似た建造物で三角柱型だ。細い四つの柱というか脚? がある。
脚から脚までの間に半径八メートルくらいの半円形の穴がある。ブリッジの様に空いている。
外装である脚元を潜れば、二メートルくらい行った所に縦横大きめの長方形の門に半扉がついている。
ザ・ギルドの入り口。酒場と一緒になっていることが多いから、臭いとかを外へ逃すためとかだったかな?
その周りを沢山の人が出入りしている。
「ほら行くぞ。小僧」
「小僧は止めてください」
おっさんがギルドへ入って行ったので慌てて俺もギルドへ入る。
おおぉ‼︎ 中も結構人がいる。朝だと言うのにあっちを見ても、こっちを見ても人しかいない。
その中には獣人も結構いる。
ほぼ全員が武具を装備しているし、肉体も立派だ。そんな多くの冒険者の中には朝っぱらだというのに酒を飲んでいる人もいる。
ただその席があるのは端の方なので、こっちに絡まれることはないだろう。
「ほら小僧! あそこで申請して来い!」
辺りを見回していた俺におっさんが列の出来ている場所を指差す。
列の先を見る限り受付カウンターがある。
「だから小僧は止めてって!」
「俺はこの後クエストを受けてくから。帰りは一人でも平気だろ?」
何度目かになる小僧呼びの訂正がまたも無視される。
もう良いや。
「ああ。ありがとう、助かっ、助かりました」
訂正を諦め、おっさんに礼を言う。
そして言われた通りに列の方へ向かい、並ぶ。
……そういえば流れで並んだけど、申請ってもしかして冒険者登録ってことか?
冒険者について聞いて、気づいたら冒険者登録しようとしている。
……うん。気にしないでおこう。
出来るのならしてみたいって気持ちもある。というかしたい!
そういう運命だったということで受け入れよう。
少し待てば列は進み、やがて俺の番となる。カウンターの中では女性が座っており、窓口のような対面式となっている。
全てのカウンターには女性が座っている様だが、男性職員がいない訳ではないらしい。奥で違う仕ことをしている。
そして俺の並んだカウンターには二十後半、いや三十くらいかな? の女性が微笑みながら会釈をする。
「ようこそ冒険者ギルドへ。本日はどの様なご用件でしょうか?」
接客慣れした流暢な挨拶。そして人懐っこい笑顔。
「あの、ギルドに申請したいんですけど?」
「かしこまりました。では、こちらの書類にステータス番号を書いてください」
そう言い、カウンターの向こうにいる女性が紙とペンを差し出して来た。
ステータス番号?
「あのステータス番号って?」
「はい? ……っ! 失礼しました。ステータス番号とは、ステータスの名前の下にある番号のことです」
分からないので聞いたが、驚かれてしまった。
しかし流石はプロ。すぐに取り繕って回答してくれる。
「えっと……すいません。まずどうやってステータスを開くんですか?」
「はいっ⁈ あ、申し訳ございません。えーっとですね…………頭の中でステータスと言葉に集中していただければ、開くはずですが?」
そんなプロも二度目の崩落。驚愕の表情を浮かべるも、さっきより早く取り繕われる。
そして少しの間考え込んだ後にやり方を教えてくれる。
申し訳ないと思いつつ、言われた通りにしてみるか。
「(………ステータス!)」
呪文を唱える様にして強く唱える。
すると目の前に半透明のプレートが現れる。
おお!
___________
ステータス
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
名前:桐崎 東
ステータス番号:57764
性別:男
Lv.1
攻撃:250
防御:450
体力:1600/1600
魔力:1250/1350
「固有能力」
魔眼Lv.3
能力:対象の情報がレベルに応じて把握できる
千里眼Lv.1
能力:眼で遠くの景色を見ることができる
Lv.1:100メートルまで調整可能
言語解析
能力:あらゆる言葉が日本語に変換された状態で知れる
言語伝達
能力:自身の言葉を相手に伝える
______________
おお! なんか……凄い!
現実ではあり得ない光景を前にギルドを見た時以上に興奮し、歓喜する。
映写機によって空中に映されている様な感じでプレートは現れた。
ええっと、ステータス番号は……あ、あった!
「代筆をお願いしても良いですか?」
「かしこまりました。それでは番号をどうぞ」
「57764です」
「……64。これでギルド申請は終了です。何か質問はございますか?」
早い! 紙一枚に数字だけ。逆にそれで大丈夫なのかと不安になるけど、異世界だからそういうものなのだろうか?
質問、か……いくつかあるな。
「ギルドカードとかってないんですか?」
「……それでしたら三年前に廃止になり、今ではステータスから自身のギルドランクを確認出来るようになっております」
表情は変わらなかったけど、間があったな。さっき同様に「はい?」って思われたのかな。
そうなると廃止になったのは周知ってことかな?
「でもそれだと身分証明とかはどうするんですか?」
小説だとよくあるのは冒険者カードが身分証の代わりに使われる。
「その場合は小銀貨一枚で申請をしていただければ、ギルドからの身分証が発行されます。ただ今ですと、発行に三日は必要になります」
ああ、そういうシステムなのね。
そうなると廃止になった理由が気になるけど、さすがにこれ以上訊いて変に思われたくないから、また別の機会にしよう。
「ではその申請もお願いします」
「かしこまりました。先程番号は伺いましたので、申請はこちらで行います。申請料として小銀貨一枚です」
料金を提示されたので革袋から小銀貨を一枚取り出してお姉さんに渡す。
代筆をお願いしたから書類を書かなくて良いのは楽だな。
「はい……それでは三日後以降にギルドまでお受け取りにいらして下さい」
料金を受け取ったお姉さんは、別の紙に冒険者登録と同じ様にステータス番号を書く。
「他にご質問はありますか?」
作業を終えたお姉さんは、再度質問の有無を問うてくる。
「依頼やクエストってどこで受けれるんですか?」
「それでしたら基本はあちらの掲示板に貼られている依頼書からです」
お姉さんが手の平で場所を指してくれる。
そちらに視線を向けると何人かの人が壁一面にデカデカと掲げられている掲示板の前に集まっている。
その掲示板には数枚の紙が貼られている。
そんな依頼書を前に冒険者達が内容を吟味しているらしく、その中にはさっき俺をギルドに案内してくれたおっさんの姿があった。
「しかしあちらは中堅の冒険者が受ける内容がほとんどで、その中でも難易度が高めのクエストばかりですので、初心者ではお受け出来ません。それ以外をお受けになる方はこちらの受付にいらっしゃいます」
なるほど。そういう仕組みなのか。
それにしてもあのおっさん、意外と優秀な冒険者だったんだな。意外だ。
「何かお受けしますか?」
「あ、いえ今回は遠慮します。ギルドではクエストの他に何が出来るんですか?」
「ギルドは世界各地に存在し、その全てで硬貨を預けることや道具を預けることが出来ます。
また、他国での硬貨はギルドで交換することが可能です。そして預けた硬貨はステータス番号さえあれば、ギルドの営業時間内であればいつでもどの国のギルドからでも引き出すことが可能です」
「おお!」
銀行みたいなこともやっているのか。
「また、クエストの条件以外で手に入った物資はギルドで売ることが出来ますが、持ち込まれた物資の状態によってお値段が変わりますので、お気をつけてください」
「ほぉ」
「それと魔獣討伐のクエストの他にも探索や偵察、鉱物や薬草などの採取、住民の依頼などもこちらで受付が可能です。始めたての方は依頼の後半の物がオススメです」
「なるほど」
お姉さんは慣れた感じで説明してくれる。
おすすめされたが個人的には魔獣を見てみたいな。
「それとこれはギルドとは関係ありませんが、誰でも自由に挑戦することのできる古の塔、通称ダンジョンがございます」
「ダンジョン?」
続け様に告げられたお姉さんの言葉に興味が引かれる。
ダンジョン。ゲームとかではギルドと同じくらい出てくるワードなはず。
モンスターが大量に出てきて、ボスを討伐すれば宝物が手に入るっていうやつ......で、合ってるよな?
そこまで詳しい訳じゃないから断言出来ない。
「ダンジョンではレベルを上げたりする方や、素材調達をする方などが挑戦されています。しかし、このダンジョンは高難易度であり初心者の方は絶対に近づかないようにしてください。
加えてダンジョン含め冒険者としての活動は全て自己責任ですので、活動中に死んでしまってもギルドからは一切の賠償責任を負いませんので、お気をつけください」
「は、はい。分かりました」
怖いこと言うな……
でもそのダンジョンには行ってみる価値があるな。ゲームとかでレベル上げをしていくのは楽しいし、どんな物かも気になる。
もちろん危険だと判断したら即離脱する。
「分かりました。ありがとうございました」
「また何かありましたら、どうぞお越しくださいませ」
「はい」
一通りの説明を受け、ギルドについて大方知ることが出来た。
今日はギルドに来れて良かった。
終始丁寧に相手をしてくれたお姉さんにお礼を言って、初だった冒険者ギルドを後にする。