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異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します  作者: りゅうや
第17章 リリーの真偽
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乱入者達、そして意思

 

 東が毒針を放った者の方を睨む、その刹那。

 ブオォ、ブオォォォオー!

 腹の底とまではいかない音量だが、その低く確かに耳に届く音色が騒ついていた街中の一画に響き渡る。

 その音のした方へと皆の視線が集まる。

 周りの連中と衣装が違い、ややボロめの衣服を着ている小柄な一人の男が、小さな法螺(ほら)貝を持っていた。

 明らかに下民エリアの装いである彼に対し、怪訝や不快の表情を浮かべる周りの野次馬達。

 そんな彼らの耳に此方へと近づいて来る足音が聴こえる。

 次第に大きくなる足音らは一つや二つではない。数十以上の足音が四方(・・)から聞こえる。


「な、なんだ⁈ この足音!」


 一人の男が焦りの声で叫んだのをまるで合図にしたかのように鎧に身を包み、武器を構えた騎士達が現れる。

 赤黒色のフルプレートアーマーは街中では違う意味で目立つ。

 そんな彼らは堂々と旗を掲げている。

 騎士達よりは明るい赤ではあるが、やや暗めの生地の端は金で縁取られている。そして旗の中央には、弓矢を構えた男が馬に跨っている絵が描かれている。


「あれはエーデン侯爵(こうしゃく)の旗だ!」


 その旗について知っている者の一人が驚きと共に叫ぶ。

 下民エリアの者ならばともかく、上民エリアの者ならばほぼ全ての者がその紋様を知っている。

 エーデン侯爵。王国内最大の領地である“クシャル領地”を所有しており、およそ領民数は総人口の一割強。

 傾斜などはあれど、ほとんど平坦であるクシャル領地の食料生産量は国全体の四割を占めている。

 また、国王からの信頼も厚く、絶対王政のアンタレス王国で領民に多額の税を課す事が許されている。

 そんな侯爵の騎士達が法廷目がけて集まって来ている。

 只事ではない状況に困惑しつつも、その様子を眺めている事しか出来ずにいた。

 そうしている彼らの中で、ただ一番騎士に近かっただけの市民一人がなんの躊躇もなく騎士に斬りつけられる。


「「「「「「「「「「⁉︎」」」」」」」」」」」

「道を開けよ! 逆らえば、貴様らも反逆者として刑を執行する!」


 その光景に驚いている市民達に向かって、斬りつけた騎士がそう命じる。

 目元まで覆われているメットアーマーのせいで表情が分からない分、その低く勇ましい声がより恐怖感を煽る。

 彼の言葉によって目の前で何が起きたかを理解し、凍りついて動けなくなっていた野次馬達は悲鳴を上げながら一目散に法廷の周りから離れる。

 四方から集まって来ている彼らの剣が届かない場所を通って行かなくてはいけないため、ルートの道幅は狭い。

 故に少数しか通れないそのルートを野次馬達は我先にと押し合い、進行を邪魔しつつ駆ける。

 悲鳴が乱れる野次馬達を放って、元凶である騎士は法廷の周りに集結する。

 そして二人の騎士が門の方へと歩み寄る。


「公判の最中に許可なく立ち入る事は、誰であろうと禁止されています! お引き取──うおっ⁉︎」


 片方の騎士が先頭をきって法廷へと入ろうとしたが、その前に門番が止める。

 しかし帰る様に伝えている門番に向かって、その騎士は先程の騎士の様に剣を振るう。

 その一撃は、門番が装備していた槍によって辛うじて防がれる。攻撃の意思が先程示されていたため、警戒していた彼は反応し防ぐ事が叶った。



『公爵と侯爵』、どちらも日本では同じ発音ですが、階級が一つ異なります。

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