使用回数制限、そして加工
小僧の方に目を向けると、表情を歪ませてこの先をどうするべきか思案しておる。
それと同時に茶毛や私を睨んでもいる。
グアッハッハッハッ!いい気味だ!
魔道具で勝てる気になっていた所を、むしろ不利になった気分は、どうだぁ?
「どうやらその魔道具が使用出来るのは、あと一回の様ですね」
「「「「「「っ⁉︎」」」」」」
すると法生司長がさらに驚きの発言をする。
これはまさかのまさか、使用回数制限の魔道具だったか!
普通の魔道具には使用回数に制限はない。
例えばアルタイル王国で大会の際に使われた土を操る魔道具。
また、例外としてボアアガロンのボスが使っていた魔具も制限はない。
対して、五輪核ゴーレムが持つ核や今回の真蒼偽紅の球。
一応東がエルフの里で使ったグラルドルフの角も該当するが、こちらも例外に近い。
それらには制限がある。
使っていけば、時期に効力を失う。それが使用回数制限がある魔道具だ。
核や真蒼偽紅の球はその『純度』で判断される。
例えば核でも治癒核は、特にその純度が大切である。
純度が高ければ高いほど、その効力は強い。
高ければ、切断された手足をくっつけることが出来る。逆に低ければ、かすり傷か切り傷くらいしか癒せない。
効能は依然として治癒だが、その効果には雲泥の差が出来る。
そしてその使用制限が生まれる違いとして、加工されているかの有無である。
加工された魔道具には、それを持続させることが可能になるように造られる。
では五輪核や真蒼偽紅の球も同じように加工を施せば、上記の魔道具と同様に使用回数の制限がなくなるのか?
答えは、否である。
正確には、確かにそうすれば回数制限はなくなる。
しかし現在の技術では、その加工が出来ないのだ。
元々その加工の際には、固有能力を残したまま、それを半永久的に持続出来るように加工しなくてはならない。
しかし現在加工出来ている魔道具と違い、加工出来ていない魔道具はどれも複雑な構造であり、固有能力を維持させながら加工を施せすことが技術不足により無理なのだ。
無理に加工すれば、貴重な能力を失いかねないのだから。
故にやむを得ず、入手時のまま使用されている。
「(未熟な鍛治士が魔獣の能力を引き出せるのは稀であり、それを的確に引き出せる鍛治士達が今の魔道具の加工に勤しんでいる。もちろんそれ専門の者もいれば、単に良い防具を作るという目的の者もいる)」
そんな鍛冶士達に加工されずにいるため、そう使うには使用回数制限という面倒な仕様が出てくる訳だ。
ちなみに国が有している加工がされている看破の魔道具は一つしかなく、本当に有しているのは魔道具の国とまで呼ばれている国『カシオピア王国』だ。
そこから同盟国にのみ、これの貸し出しを許している。
しかし使用する際の料金は、この国でも余裕でデカい屋敷が二、三個建てられて、さらに全てに使用人を百人くらいはつけられる。
もちろん全員に使用人にはもったいない程の家具もつけてだ。
防犯観念も高いので、盗むに盗めん。
そもそも近年になってようやくその様な魔道具が出来上がったというのだ。
盗めばすぐにバレる。
そんな危ない橋を渡る気はない。




