劣勢、そして茶毛の答え
なので今回の法官側が彼女だと分かり次第、穴だらけではあるが流れ通りになる様に即席で整えた。
本来副総監法官がこんな公判に出てくる事自体おかしな話なのだ。
「!」
まさか......まさかあの小僧が裏から手を回し.....いや、自国の貴族である私ですら法官に干渉するのは無理に等しい。
であるなら、他国の一市民でしかない小僧如きに干渉し、ましてや副総監法官を出張らせる事など不可能。
だぁから落ち着け!そんなくだらん考えが起こる様では、いくら相手が小僧でも足元を掬われかねん。
「その通──」
「何をバカな事を!ずっと持っていたからこそ、被告が持っていたのだ!」
証人は嘘を吐かせる訳にはいかん。それは被告や原告であるへーネルとてそうだ。
しかし私だけは別だ。
今回の訴訟で問題の重さを増させる存在である私は、明らかな虚偽でなければ少なからず吐ける。
それだけ重要ではないのだ。
追求されれば、知らぬ存ぜぬで通せば良い。
「原告側は、証言者のみ発言を許可します。静粛に」
「ふ....ふざけるなっ‼︎貴様、一体どういうつもりだ⁈」
先ほどからこの男は何を考えているのだ?貴様は此方側であるだろうに、何故私の邪魔をしようとしている?
何故あの小僧らが優位になる様に動いている?
「.....どういうつもりも何も、貴公が仰られたのです。被告弁護人の発言が子供の駄々であると。ですので、被告弁護人の異議の確認を行なっているに過ぎません」
だから、それをやろうする意味が分からんのだ!さっさと終えてしまえば良いものを、何故引き延ばそうとしているのだ!
そんな事をして彼奴が有利になってしまってからでは遅いのだぞ。
「それで、さっきなんて言いかけたんだ?」
法生司長が認可したのを良い事に小僧が再び茶毛に問う。
くそ!打つ手なしだ。
「えっと......」
よし、良いぞ!先ほどの私の言葉で素直に答えて良いものなのか迷っている。
そのまま黙秘を続けて欲しい所だが、あのどうしようもない法生司長が促せば答えなくてはならない。
その前に騎士を使ってこの場を乱すか?いや、流石にこの状況でそんな事をすれば認めているのと変わらん。
あー!副総監法官に味方のはずの法生司長の愚行、全くなんなのだ一体!あの小僧が関わるとロクな事にならん!
「証言人、質疑の返答を」
危惧していた展開へとなった。法生司長が茶毛への問いの返答を促された。
「............ち、違います」
「!」
茶毛は恐る恐ると声が掠れながらも答えた。
「私は最初から被告がペンダントを持っていた所を見ました!」
彼女の中で何かが吹っ切れたかのように、声を荒げて宣言する。嘘を。
あの女、やりおった。




