仲間?、そして不始末
「.......」
しかし騙されていたのだと気がついたからと言って、今から何か出来る訳でもないのだ。
ましてやこの状況で他のことに気を取られている訳にもいかない。
ここはひとまず落ち着きを取り戻す。
.....さてと。今の話からして、最初の方に抱いていた疑問は解けた。
リリーが連れて行かれる際に上げられた罪状は同じだが、物が違った。
そこを突く予定だったが、消された訳か....
とりあえず打てそうな時に打っておくとするか。
「それじゃあ、質問の変更だ。さっきの物が盗まれた時の流れは分かったが、聞く限りでは取り返せていないようだが、その証拠品はいつ手に入れたんだ?」
「其奴の仲間の一人が、裏市場にて売却しようとしていた所を抑え、証拠品として提示した」
法官が答えるかと思ったらサヘルが答えた。
所々でこいつが答えるけど、何かあるのか...?
「その仲間ってのは?ここにはいないのか?」
「死んだよ。一昨日の夜」
皆が息を呑む。重い空気が全体に広がる。
「正しくは、殺された、だがね」
「....殺された、とはどういうことだ?捕まえていなかったのか?」
「白々しい事を。貴様が殺したのではないか?不始末を隠蔽するために」
彼は、飄々とした態度から一変して少々怒気を孕んだ言葉を投げる。
「全く。人を人と見ず、不始末を起こせば無かった事にするために殺し、知らぬフリをする。人を物の様に扱う貴様等には、反吐が出るわ」
淡々としかしどこかセリフ臭く言う彼は、最後に薄っすらと笑みを浮かべた。
そして彼が訴えを終えると共に、静かだった周りがざわつき始めた。
「普通の人間を奴隷と同じ扱いなんて...」
「失敗しただけで殺されるのかよ....」
「仲間を、人をなんだと思ってやがるんだ!」
「それでもここに連れられてきているのは、さっすが法官だぜ」
各々が好き勝手なことを言い、それに同調するようにして周りがさらに騒がしくなる。
「はぁ...それで?その闇市場にいたっていう人は、どこで何時頃殺されたんだ?」
「......」
そんな周りを気にせずに気になったことだけを訊いてみたのだが、その発言が気に喰わなかったのか「まだシラを切るのか!」と叫ぶ人が現れた。
しかしそんなことはどうでも良いので無視だ。
「場所は留置所の牢の中。時刻は不明、死体が見つかったのが翌朝の朝餉の時。近くで見張りをしていた者も殺されておった」
法官に問うたのだが、またしてもサヘルが答える。
そのことも気になるが、今は勝手に出来上がっている架空の人物についてだ。
一昨日ならこちらにいないと証明しようにもゲートを使っての移動なためそれは叶わない。
殺害を不可能にするには、サヘルが取った手同様移動速度を上げる能力を使っての最短移動が必要となる。
ただ例えそれを行なったとしても観ていた者がいなければ、結局意味はない。




