質問、そして頸鉄鎖
「まずは色々と確認させてもらいたい。こっちは今聞かされた罪状の内容しか知らない」
「.....問題ありませんが、意図的に判決までを引き延ばしているとこちらが判断した場合は、即刻中止とします」
「分かった」
ま、ダメだよな。サヘルがボロを出すまで質問攻めをしようと考えていたけど、仕方ない。
もちろんそのスタンスは保つつもりだが、悟られずに短くやるしかない。
それとまだ分からないが、裁判長及び法官が貴族の味方をする可能性もある。
地位や金のある相手だからこそ、そういう手で来ることは容易に想像出来る。しかし必ずしもその手を取るとは限らないので、あくまで可能性だ。
それも探れそうならやるが、分かっても警戒くらいしか対処のしようがない。
「ではまず、そこにいるのが今回被害を受けた使者のヘーネルというので間違いないか?」
貴族が座る椅子の横に肩身を縮こませて座っている男性。体格や身長は恐らく俺と同じくらいだろう。
ただ、どうもサヘルの隣にいるせいか細く見える。
「左様。この者には、港で私の仕事をしてもらっておったのだ」
意外にも質問に答えたのはサヘルだった。
「次に、その頸鉄鎖についてだ。その仕事の途中で盗まれたそうだが、その頸鉄鎖の絵なんかはないのか?」
「こちらが盗まれた頸鉄鎖です」
今度は法官が答えてくれた。
法官がこちらに見えるようにして見せてくれたのは、三日月形の白い石。それの真ん中に小さな宝石が付いている。
その三日月の両先端に細い鎖が取り付けられている。
確かに高そうではある。
それを『魔眼』で見てみるが、やはり時間が経っているためかリリーの霧の跡は見えない。
まあ、今回の場合は見えないに越したことはないのだが。
問題なのは、その頸鉄鎖にはへーネルの霧も見えないという所だろう。
サヘルや法官、他にもいくつか見えるがへーネルの霧だけ見えない。
これがリリーと同じ時間経過によってもう見えなくてなっているのか、それとも....
しかしこれを実証説明することは叶わないので、放置するしかない。
「それをリリーが盗んだ、と言うならその時のことを本人から詳細に訊きたい」
これが一番気になっている。
リリーから事前に聞いている話との相違が今回の鍵となる。
すでに二つほど可笑しな点はあるが、それは後々はっきりさせれば良い。
「分かりました。お話しさせていただきます」
へーネルが席から移動し、裁判官とリリーの前辺りに来る。
そこで彼はあの時何をされたのかを説明し始めた。




