奴隷、そして失敗
店外へ出てから人気の少ない方へ路肩を沿って歩きつつ、念話を繋ぐ。
『少し訊きたい事があるんだけど』
『......あの少女かい?それとも今の話かい?』
もう知っていることは無視だ。むしろ知っていることを前提にしているのだから。
人気のない所でゲートを開く。
『奴隷についてだ』
『ふむ......条件次第では、お金を上げなくもないよ?』
『そこは気にしてないよっ!』
真面目な声音になったと思ったら、これだよ!ちゃんと金は持っている。ベガの貨幣の方が多いけど。
裏路地からギルドへと向かい、受け付けへ足を運ぶ。
そうではなく──
『ベガでは奴隷の売買は禁止されているんだろ?確か所持もダメだったはず』
『くふふ、そうだね。この国では何方も御法度だね。アズマ君の国で言う所の銃刀法と同じと考えてくれて構わない』
『それで考えると他国で奴隷を売買したり、所持していても大丈夫ってことで良いのか?』
『問題ないよ。ただし持ち込んだのがバレたら、分かるね?』
『ああ。気をつける』
とりあえず必要だと思える分だけ両替えをする。
『......それと奴隷についてまた後で色々と聞きたいことがある』
『ふむ。まあ、楽しみに待っているよ。終わるまで』
『そうだな。リリーの件が終わったくらいに行かせてもらう』
再びゲートで戻る。そして皆のいる店の前まで歩く。
....さっきから人をあまり見かけないな。ここは店もちらほらあるのに。
そんなことを思いながら念話を切る。
「すまん、待たせ───ん」
謝りつつ店に入ると、重いたい雰囲気が皆を包んでいる。
「悪いね、坊っちゃん。こっちも商人の端くれなんでね、口が達者なんだよ」
「ごめん....なさい.....アズマ、さん......」
振り返ったニーナの目には涙が溜まっている。
この状況で真っ先に思いついたのは『虐め』という単語。さっきまでの流れでそんなことあるとは思えないのに。
「.....」
「.....」
思わず店主を睨みつけるが、彼女も臆せずこちらを睨んで来る。
自然と手が宝物庫へと向かう。
しかしそこで俺の肩に手が置かれ、そちらに顔を向ければその手を伸ばしているのはキリだった。
「落ち着いて。それは絶対にダメよ」
彼女は真剣な顔で諭してくれる。
「.....そうだったな。ありがとう」
宝物庫から手を退け、ニーナの元へ歩み寄る。
「辛かったな。ごめん」
「ごめん....なさい.....」
ニーナのことは皆に任せ、俺は女店主へと向き直る。
「待たせて悪かった。さて、話の続きを」
「ふん、その話はなしさ」
「.....なし...とは随分と急で。一体なぜそんなことに──」
「白々しい。そこの嬢ちゃんが口を滑らせてくれて、よーやく腑に落ちたよ。ずっと店から出た事のないフェーネを初めて見る坊やが欲しがるなんて。ましてや奴隷と知らずに....嫌だね!うちを面倒事に巻き込まないでおくれ!」
「.....理由を知っているなら話が早くて助かる。協力してもらいたい」
「今、しないって言っただろ!聞いてなかったのかい!」
「聞いてたさ」
「それでも、か?」
「......」
「はあぁぁぁああぁぁあぁぁぁ.....」
沈黙で肯定を表すと、彼女は大きくため息を吐いて席にどかっと座る。




