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新居、そして雇用


 さて、王様から報酬として家をもらったは良いのだが、


「ここまで大きいとは」

「本当にね」


 俺たちは今我が家となった豪邸の前で家の大きさがあまりにも大きかったので呆然と立ち尽くしている。王城と比べたらそりゃあ小さいけど、それでも豪邸には変わりない大きさだ。

 とりあえず自分の家の前でずっと立ち尽くしているのも何なので、王様からもらった家の扉の鍵を宝物庫から取り出して扉を開けた。中に入ってみるとこれまた大きい。


「これってどうやって掃除するつもりなの?」

「うーん、お手伝いさんとかを雇うしかないかな?」

「私たちが行ける時にでもお手伝いしに来ましょうか?」

「...え?」

「す、すいませんっ。め、迷惑でしたよね」


 あれ?突然変なことを言われたから思わず聞き返しちゃったけど、どうも変な意味で取られてしまったようだ。


「いや手伝いにって、5人でここに住むつもりだったんだけど?」

「「「「...え?」」」」


 女性陣全員が驚いた顔で俺の方を振り返った。何?


「えっと東、5人ってもしかして私たちもここで一緒に暮らして良いってこと?」

「当たり前だろ?」

「「「「.....」」」」


 俺の答えに全員が黙ってしまった。何か変なこと言ったかな?するとニーナが恐る恐る口を開いた。


「で、でも仲間でしかない私たちが、い、一緒に暮らすと言うのは...す、好きな人同士が暮らすのなら分かりますが」

「?好きな人同士って俺は全員好きだけど?」

「い、いえそう言うことではなく、そ、その...こ、恋人とかの方で、です」

「?まあ恋人同士じゃないけど、俺が全員好きなら問題ないのか?」

「いや、そうじゃなくて!」


サナが何かを言おうとして黙った。


「それにさ別に仲間で暮らしても良くないか?王様だって恋人と住めって言ってる訳じゃないし、何よりみんなで暮らした方が楽しいじゃん」


女性陣は呆然としていた。


「別に無理矢理住めとは言わないさ。この家は5人で依頼を達成したからもらえた訳だからさ。みんなにも使う権利はあるさ」

「「「「....」」」」


 女性陣はただただ呆然としいた。しかしそんな彼女らの想いが知らぬ間に重なっていた。『東らしい』っと。


「アズマ、本当に私たちもここに住んで良いの?」

「出、て行けと、か言わないよ、ね?」

「大丈夫、住むのは君らが決めれば良いし、出て行けなんて言わない」


 俺の答えに全員が一斉に笑顔になった。


 ______________


 全員がこの家に住むことになったので、みんなで家の中を見て回ることにした。それで最後に各自自分たちが住みたい部屋を決めておく。引っ越しは家を掃除してからとなった。



「それにしても本当に広いわね。ここまでで一体何部屋あったのか忘れちゃったわ」

「そうだな、ここまで広いとやっぱり俺ら5人じゃ管理出来そうにないのがなー」


 王様に頼んでみようかな?多分何とかしてくれると思うし。

 ゴンゴン


「すみません、キリサキ様はいらっしゃいますか⁈」


 これからのことを考えていると下の方から扉を叩きながら誰かが俺を呼んでいるのが聞こえてきた。


「誰だろう?」


 俺は来るはずのない訪問者に疑問と警戒を抱きながらゲートを入り口の扉の前に開いて全員で扉の前まで行く。

 扉を開けてみると、そこには執事服に蝶ネクタイ、白髪で八の字に白髭を生やした50代後半くらいの男性が立っていた。


「どちら様ですか?」

(わたくし)、本日より桐崎 東様方の執事を務めさせていただく“ポール”と申します。よろしくお願いいたします」


 そう言ってポールと名乗った男性は俺たちに深々と礼をした。


「えっと、何かの間違いでわ?俺らは執事は雇っていないんですが?」

「グラ・アルベルト国王様より配属されました」


 王様、手回し早っ ︎いやありがたいけどさ、教えてくれても良いだろ?念話もあるんだし。


「ご主人様、私は雇っていただくことは?」

「ああ、はい。よろしくお願いします」

「ありがとうございます」


 そう言うとポールさんはまたしても深々と頭を下げた。ご主人様ってなんか落ち着かないな。


「でもポールさん1人じゃ、掃除とかは全部は無理だよなー。どうしよう、やっぱりお手伝いさんを雇おうかな」

「でしたら旦那様、私に何人か宛がございますので、1度会っていただいてもよろしいですか?」

「それじゃあ、お願い」

「かしこまりました。少々お時間をいただきます」

「どうぞ」


 ポールさんはまた礼をすると扉を開けてどこかへ行ってしまった。これで何とかなりそうで助かった。

 

 ポールさんが出て行き取り残された俺たちは、多分ほぼ全部の部屋を見たと思うので各自住みたい部屋を決めてもらう。


「私は2階の角が良いわ」

「私は1階の庭に面した部屋に住みたいなー」

「わ、私は書斎の隣が良いです」

「私、はアズマと一緒、がいい」

「ユキナ ︎な、なら私もアズマの部屋に」

「むぅー、これはアズマの妻とし、ての勤め」

「「「妻 ︎」」」


 なんだか俺を置いて女性陣だけでどんどん話しが進んでいく。孤独感というか疎外感というか、何とも微妙な気持ちである。


「つ、妻って、ア、アズマさんはユキナさんとそ、その...けけっ、結婚を?」

「いや、してないよっ」

「いずれ、はそうな、る」

「「「「なっ ︎」」」」


 ニーナに必死に弁護しようとしたにも関わらずユキナの更なる追い討ちにユキナ以外の全員が固まる。さっきまでモフモフの尻尾をピンッと立てていたニーナも今はさらにピンッと立っている。こうなるのは驚いている時だったかな?

 って、今はそんなことを考えている場合じゃない。


「と、とりあえず部屋はそれぞれちゃんと、ユキナも自分の部屋はちゃんと決めておいてくれ」

「うぅー」


 不満そうなユキナは放っておいて話しを続ける。


「そろそろ昼も近い頃だし、甘味に戻ってご飯にしよう、な?」

「え、ええアズマがそうしたいのなら私は別に」

「私もアズマさんの意見に、さ、賛成です」

「私も」

「...」

「よしそれじゃあ、すぐにでも」


 俺は慌ててながらゲートを開く。


 ______________


 そして俺たちが引っ越す日がやってきた。お世話になった甘味のカナさん、武器屋のガールのおっさん、キリが店のメニューをほとんど食べて迷惑をかけた喫茶店イーストのナナミさんなどに挨拶をして回った。ナナミさんなんて俺が教えたショートケーキを作って渡してくれた。

 挨拶を終えてゲートで自分の家まで飛んでみると、ポールさんが玄関からこちらへ向かって来ており、急に現れた俺たちに少し驚いた顔を見せたが、すぐに表情を戻して1礼した。


「おはようございます、旦那様、お嬢様方」

「おはよう、ポールさん」

「おはようございます」

「おはようございます」

「お、おはようございます」

「おはよ、う」

「早速ではございますが旦那様、雇用したい人材がいるのですが、会っていただけますでしょうか?」

「良いけど、どこにいるの?」

「ただ今連れて参りますので、少々お時間を」

「ああお願い」


 俺がそう言うとポールさんは足早に門の方へと去って行った。なんかこれこの間も見た気がするけど、あの時は何しに行ったんだ?


「さてと、待っている間に引っ越しちゃいますか」

「そうね」

「やるかー」

「は、はい」

「うん」


 全員がそう言うと俺たちは家の中へ入る。そう言えばポールさんにはまだ鍵を渡していなかったから、さっきは多分空いていなかったから引き返そうとしたのだろう。後で渡しておかないと。

 各自の自分が住みたい部屋と行きそこで各自の部屋へと通じるゲートを開いたまま次の部屋へと移ってはもう1つゲートを開くを繰り返す。

 俺も自分の部屋にゲートを開いて甘味にある荷物を運ぶ。と言っても、俺は自分の私物などはあまり持っていなかったので2、3回往復するだけで終わってしまった。他の人の手伝いに行ったのだが、見られたら恥ずかしい物がある、量が少ないから大丈夫だ、などと言われて追い返された。

 仕方がないので俺だけリビングへ行き、古びた椅子に座りながら宝物庫に入れていた果実を(しぼ)って作った果実水を飲んで待つことにした。

 数分してキリたちも引っ越しが終わり、リビングへと集まって来た。みんなが少しボロけた椅子に座るのをためらっていたので、この間暇潰しにガールのおっさんと一緒に作った木製の椅子を人数分宝物庫から出すと、みんな笑顔になって座った。後で買いに行かないとな。ちなみに俺が古ぼけた椅子に座っているのは、もう椅子がないからだ。あの時もう少し作っておけば良かったと今さら後悔している。


「この後王都で色々生活品とかを買おうと思っているから、みんなで何が欲しいか意見を出し合いたいんだけど?」

「それは良いけど、アズマ1人で行く気なの?」

「そこはみんなに任せる。俺は自分の買い物をしてから生活品なんかを買いに行く気だから、それぞれで欲しい物があるなら、一緒に行こう」


 そう言いながら宝物庫から紙とペンを取り出す。そこにみんなで意見を出し合って生活品を書いていく。

 

 だいたい意見を出し終えたところで玄関の扉が開いたので俺たちは玄関へと向かう。そこにはポールさんとその後ろには男性3人、女性6人が立っていた。


「旦那様、こちらが先ほど話した者たちでございます。雇っていただけませんでしょうか?」

「ポールさんが連れて来たのなら大丈夫だと思うし、こちらこそよろしくお願いします」


 俺がよろしくと言うと全員が礼をした。そして俺から見て1番左にいた30代前半くらいのメイド服を着た人が礼をして慣れた感じで話し始めた。


「初めまして旦那様、お嬢様方、ポール様よりこちらに派遣されることになりました、マリアと申します。メイド長を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします」


 言い終えるとマリアさんはもう一度礼をした。マリアさんは真面目そうなタイプでカリスマ性が高そうだ。

 次にその隣の20代後半くらいのメイド服を着た人が一礼する。


「初めまして〜、旦那様、お嬢様方。私、ポール様よりこちらに派遣されたぁ、ルーシィと申します〜。よろしくお願いいたします〜」


 そう言ってルーシィさんも礼をした。ルーシィはほんわかとしていて優しそうでる。しかしどこか気の抜けていそうな感じもする。

 こんな感じで次々と挨拶をされていった。

 ルーシィさんの隣のルーシィさんと同じ歳くらいのメイド服を着ているクレシーさん。彼女はとにかく元気である。声も大きくハキハキしていた。

 その隣がマリアさんより少し若いくらいの、メイドのスピカさん。スピカさんは表情にあまり変化がないのでどんな性格なのかが分からない。失礼だが無愛想なのである。

 その隣は...うん、ちょっと待って、あなたいくつ?どう見ても10代前半何ですが?と言いたくなったのをぐっと堪えた。彼女はセシリアさん、さっきも言った通り10代前半の子どもにしか見えない。他のメイドたちに視線を向けてみたが誰1人としてセシリアがここにいることを疑問に思っている者はいなかった。

 そしてセシリアの隣が50代後半くらいの私服の上にエプロンを着ている女性、ローレアさん。ローレアさんはその隣の同じ歳くらいの男性、ガゼルさん。2人は夫婦とのことだ。どちらも優しそうである。ローレアさんは、調理師でガゼルさんは庭師だそうだ。

 ガゼルさんの隣の男性はブルースさん。真面目そうな感じがするがちょっと気が弱そうな感じである。

 ブルースさんの隣の男性はロベルトさん。ロベルトさんは体格ががっちりしており背もかなり高い。190以上はあるんじゃないだろうか?額には横に古傷の跡が残っていた。その傷の長さは15センチくらいで額の端から端まで伸びている。ブルースさんとロベルトさんは門での警備など。


「ブルースとロベルトは王都にそれぞれ自宅がございますので通いとなります。他の7名と私はここに住まわせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

「空いているところを適当に使ってくれて構わないけど、どうせならローレアさんとガゼルさんは庭の奥にある一軒家に住んでもらったらどうだ?夫婦なんだしさ」

「旦那様がよろしければ。ローレア、ガゼルもそれでよろしいですか?」

「ええ、光栄なことですもの」

「旦那様、ありがとうございます」


 ローレアさんとガゼルさんが深々と礼をする。やっぱりこれはすぐには慣れそうにないな。


「それでは各自、速やかに自室を決め荷物を移し、すぐに仕事に取り掛かかりなさい」

「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」


 ポールさんの指示で全員が自室を決めてすぐに仕事へと移っていく。


「それでは私も失礼いたします」


 ポールさんはそう言うと1礼して回れ右をしてスッスッと去って行く。その動きはとても50代とは思えない軽やかな動きである。


「良い人たちが来てくれて助かったわね」

「そうだな」


 買い物は明日行くとして、今日はのんびりしていようかな。

 そんなことを思っていると玄関の扉が開いたので全員の視線がそっちへと向いた。そこにはローレアさんが立っていた。


「旦那様、申し訳ございませんが今晩の料理の食材もないようなので買いに行くのですが、何かご希望の料理はございますか?」

「あー、食材は明日俺が買いに行くから、今日はこれで何か作ってくれる?」


 俺はそう言って宝物庫からダンジョンで倒した数多の魔獣の肉とソウチュウバナの葉やウッドマンの実を取り出して、並べていく。突然出てきた肉などに驚いた顔を隠せないローレアさんに説明して落ち着いてもらう。


「それではこちらで、調理させていただきます。ありがとうございます、旦那様」


 ローレアさんは食材を抱えて調理室へと向かって歩いて行く。食材もたくさんいるな。主にうちにはいっぱい食べる人がいるからでもある。



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