決着、そしてもう片方へ
「ふぅー....終わった」
能力を使い始めてから、およそ十分ほどでケリが着いた。
初めのうちは加減が上手く出来ずこっちの動きも悪くなってしまったが、それも慣れれば少しは減った。
そのお陰かゆっくりだがこちらが優勢になっていき、ようやく彼に触れることが出来た。
触れた瞬間彼はくぐもった声を漏らし、膝から崩れ、倒れた。
「キリ、サナとニーナと途中から分かれたみたいだけど、何をしに行ったんだ?」
「人質になっている人を救出しに行ってもらったの。でも分かれた直後に彼らに見つかったの。幸い二人と分かれた後だったから大半は私の方へ来たわ」
「なら急いで、二人の所へ行こう」
「ええ!」
俺とキリはサナたちの元へ向かうため、先ほどの分かれ道から先を『千里眼』を使い奥を探る。
するとその二百メートルほど離れた場所にデカい檻が順に横並びで続く廊下。その檻の中には老若男女問わず十何人かずつで牢獄されている。
しかし男といっても小さな子どもと老人だけで、若い人はいない。あの淫魔の仕業か?
そんな彼らは、檻の前で絶賛戦闘中の双子の狐の獣人と例の服を着た男たちとの成り行きを怯えながらも期待の眼差しで観ている。
あちらの方も苦戦しているのか、互いに怪我を負っている。
その場へとゲートを繋ぐ。
「いい加減、くたばりやがれ!」
「それはこっちのセリフよ!」
身長はサナよりやや低いがかなり筋肉のある、赤の爆発ヘアの男がバトルアックスを右上から斜めに振り下ろすのを身を引いて回避するサナ。
しかし刃が空を切ると、グッとそれを持ち上げ連続で切りかかって行く。
その合間を縫って彼女もフェイント混じりのステップから拳や蹴りを振るうが、それを首を傾げたりバトルアックスから手を離してガードしたりする。
「こっちも見ようよ!」
「っ!」
そう攻防を繰り返しバトルアックスを担いだ男の脇の下からもう一人、同じ服を着た二メートルはある棒を彼女の腹部目がけて突き出してきた。
それを辛うじて避け、バックステップで離れる。
面白い攻撃方法だな。背が前のバトルアックスを持った男より低く、横もそこまで出ていない。
だから前の男でその背後の男の動きを確認し難くなっているのだろう。
それでも前の男の動きに合わせて動かなくてはならないので、かなりの動体視力と反射神経だ。並大抵の人間では、そうそう上手く合わせられないはずだ。
「ほらほら!仲間がやられそうだ、ぜ!」
「そ、そんな嘘になんか、騙されません!」
そんな三人からそれなりに離れた場所で、ニーナに向かって行く緑の髪の毛が波の様に反っている男を黄銅色をした二十センチほどの槍を投げ距離を取っている。
男の方は何も持っていないが、サナと同じタイプなのだろうか?
「キリはニーナの方を頼む」
「(コク)」
もはや彼女の返事を待たずに、俺はサナの方へと走っていた。




