仕組み、そして魔道具
「おらあぁっ!」
「っ⁉︎」
彼が威勢よく叫ぶが、その瞬間彼がしたのは俺の攻撃を受け止めただけだ。
別に押し返して来るでもなく防いだ、ただそれだけだ。
そのことに少し驚きと疑問を抱いていたが、彼が何をしたかったのかをそのすぐ後に理解させられた。
小刀が引けないのである。
この場面、あの時のキリと一緒。彼女の言っていた流せないってのは、こういうことだったのか。
どういう訳なのかは分からないが、彼のロングソードの時にだけ動きが封じられてしまう。
「この!」
「おっと」
俺の動きで判断したのか、それとも単に攻めにきたのかは不明だが、キリが逆袈裟懸け斬りで仕かける。
しかし男もそれに気がついており、右の剣で上がる前に押さえ込まれた。
偶然だが、これはありがたい。彼の剣の動きを止められた今しか彼の剣について知る機会はない。
まず『魔眼』でロングソードに何か仕かけがないかを調べる。
!幻術?
「ほら、よ!」
「っつ、ぶな」
ロングソードに意識を集中させたその僅かな隙を見逃さずに彼は、上半身だけを反らせてキリの剣をギリギリで避け、その姿勢から左を軸に腰も捻って大きく振りかぶりながら切りかかってきた。
それを寸前の所でなんとか回避する。
一度距離を取るか。
そう思い後退するが、やはり彼は追って来ようと身構えた。
しかしその前にキリから邪魔が入り、そちらの対処を余儀なくされた。
幻術は剣からと示されている。
となるとあの剣を破壊しない限りは、残念ながら幻術は解けない。これでは剣の動きを止められてしまう仕かけが判明出来ない。
もう一つの避けた攻撃が当たるってのは、試しに一撃喰らってみておおよその見当はついている。キリも少しばかりだが何か気がつき始めているようだ。
彼女の動きを見る限りその可能性がある。
その仕組みは至って単純。彼は攻撃の際に骨を外し、リーチを伸ばしているのだ。
本来そんなことをすれば攻撃の威力は半減してしまうが、突きの場合はリーチが伸びるだけで刺すことが出来る。
ましてや彼がそれをやるのは細身の剣。さぞ刺し易いことだろう。
これが避けた攻撃が当たるの真相な訳なのだが、止められる方が分からないと一番辛い。
リーチが伸びると分かっているなら、避ける際に多めに引けば良い。しかし剣では、交わし合うためそうもいかない。
......いや、交わし合い続ける必要をなくせば解決するか?
しかしそれをするための手持ちがない。
「ぼぉーっとしてんじゃねえ!」
策を考えているとキリから逃れた男が、こちらに詰め寄って斬りかかって来る。




